BRAF遺伝子変異の存在は切除後大腸がん肝転移患者における無病生存率(DFS)、全生存率(OS)のリスク因子である医学誌『JAMA Surgery』より


  • [公開日]2018.05.31
  • [最終更新日]2019.11.18
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BRAF V600E遺伝子変異を有する患者は有しない患者よりも死亡のリスクを176%増加、再発のリスクを104%増加した
・BRAF遺伝子陽性/KRAS遺伝子陰性患者はBRAF遺伝子陰性/KRAS遺伝子陰性患者に比べて、女性、65歳以上、右側腫瘍部位、異時性肝転移の患者比率が高い
BRAF遺伝子変異の存在が無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)に与える影響はKRAS遺伝子以上である

2018年5月16日、医学誌『JAMA Surgery』にて切除後大腸がん肝転移患者におけるBRAF遺伝子変異の有無が無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)に影響を与えるかどうかについて検証したコーホート研究の結果がJohns Hopkins University School of Medicine・Georgios Antonios Margonis氏らにより好評された。

本試験は、切除後大腸がん肝転移患者(N=853人)に対してBRAF V600E遺伝子、KRAS遺伝子のステータスを後ろ向きに解析し、BRAF V600E遺伝子変異を有する患者と有しない患者での無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)の違いについて検証したコーホート研究である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は60.2歳。性別は男性59.8%(N=510人)、女性40.2%(N=343人)。BRAF遺伝子、KRAS遺伝子ステータスはBRAF遺伝子陽性/KRAS遺伝子陰性5.1%(N=43人)、BRAF遺伝子陰性/KRAS遺伝子陰性56.5%(N=480人)、BRAF遺伝子陰性/KRAS遺伝子陽性38.4%(N=326人)。

以上の背景を有する切除後大腸がん肝転移患者におけるBRAF V600E遺伝子変異の有無による無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)の結果は下記の通りである。

BRAF V600E遺伝子変異を有する患者はBRAF V600E遺伝子変異を有しない患者よりも死亡のリスク176%増加(ハザード比2.76,95% 信頼区間:1.74-4.37,P < .001)、再発のリスク104%増加(ハザード比2.04,95% 信頼区間:1.30-3.20,P=002)を示した。なお、BRAF V600E遺伝子変異が無病生存率(DFS rate)、全生存率(OS rate)に与える影響は、KRAS遺伝子変異以上であることも判っている。

またBRAF遺伝子陽性/KRAS遺伝子陰性患者はBRAF遺伝子陰性/KRAS遺伝子陰性患者に比べて、性別は女性比率が多く(62.8%対35.2%)、年齢は65歳以上が多く(51.2%対36.9%)、腫瘍部位は右側が多く(62.8%対17.4%)、異時性肝転移が多かった(64.3%対46.8%)。

以上の後ろ向きコーホート試験の結果よりGeorgios Antonios Margonis氏らは以下のように結論を述べている。”BRAF V600E遺伝子変異の存在は切除後の大腸がん肝転移患者における生存率、再発率のリスク因子になり得ます。また、BRAF V600E遺伝子変異はKRAS遺伝子変異以上に生存率、再発率を決定する因子になり得ます。”

Association of BRAF Mutations With Survival and Recurrence in Surgically Treated Patients With Metastatic Colorectal Liver Cancer(JAMA Surg. Published online May 16, 2018. doi:10.1001/jamasurg.2018.0996)

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