脳転移のある未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)非小細胞肺がんに対する次世代ALK阻害薬ブリガチニブ、頭蓋内病変客観的奏効率(iORR)と頭蓋内病変無増悪生存期間(iPFS)を改善する医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.05.29
  • [最終更新日]2018.05.29
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・10mm以上の脳転移病変を有する患者における頭蓋内病変客観的奏効率(iORR)は1日1回ブリガチニブ90mg~240mg投与群53%、1日1回ブリガチニブ90mg投与群46%、1日1回ブリガチニブ180mg投与群67%を示した
放射線治療歴のない脳転移のある患者または放射線治療後に病勢進行した患者における頭蓋内病変客観的奏効率(iORR)は1日1回ブリガチニブ90mg~240mg投与群67%、1日1回ブリガチニブ90mg投与群42%、1日1回ブリガチニブ180mg投与群73%を示した
ベースライン時に脳転移病変を有する患者における頭蓋内病変無増悪生存期間(iPFS中央値は1日1回ブリガチニブ90mg~240mg投与群14.6ヶ月、1日1回ブリガチニブ90mg投与群15.6ヶ月、1日1回ブリガチニブ180mg投与群18.4ヶ月を示した

2018年5月16日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて脳転移のある未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)の非小細胞肺がん患者に対する次世代ALK阻害薬ブリガチニブの有効性を2つの臨床試験である第I/II相試験(NCT01449461)、第II相ALTA試験(NCT02094573)に登録された患者を対象に探索的解析を実施した結果がUniversity of Colorado Cancer Center・D. Ross Camidge氏らにより公表された。

本解析は、2つの臨床試験に登録されたブリガチニブによる治療を受けた全患者のうち脳転移を有する患者(N=203人,第I/II相試験より50人,ALTA試験アームAより80人,ALTA試験アームBより73人)における、頭蓋内病変客観的奏効率(iORR)、頭蓋内病変無増悪生存期間(iPFS)を検証した結果である。なお、第I/II相試験におけるブリガチニブの用量は1日1回90mg~240mg、ALTA試験におけるブリガチニブの用量はアームAで1日1回90mg、アームBで1日1回180mgである。

本試験に登録された患者背景は第I/II相試験、ALTA試験アームA、アームBそれぞれの下記の通りである。年齢中央値は53歳(30-73歳)、49歳(18-82歳)、55歳(20-81歳)。性別は女性48%(N=24人)、58%(N=46人)、63%(N=46人)。人種は白人84%(N=42人)、59%(N=47人)、71%(N=52人)、アジア人12%(N=6人)、40%(N=32人)、26%(N=19人)、その他4%(N=1人)、1%(N=1人)、3%(N=2人)。

ECOG Performance Statusはスコア0が30%(N=15人)、33%(N=26人)、40%(N=29人)、スコア1が68%(N=34人)、60%(N=48人)、51%(N=37人)、スコア2が2%(N=1人)、8%(N=6人)、10%(N=7人)。喫煙歴はあり24%(N=12人)、34%(N=27人)、37%(N=27人)、なし76%(N=38人)、65%(N=52人)、63%(N=46人)。肺がんの種類は腺がん94%(N=47人)、96%(N=77人)、97%(N=71人)。

クリゾチニブ(商品名ザーコリ;以下ザーコリ)治療歴のある患者割合は92%(N=46人)、100%(N=80人)、100%(N=73人)。ザーコリの治療期間中央値は14.3ヶ月、12.5ヶ月、13.6ヶ月。ザーコリの奏効率は完全奏効(CR)または部分奏効(PR)48%(N=24人)、68%(N=54人)、71%(N=52人)、病勢安定SD)26%(N=13人)、25%(N=20人)、16%(N=12人)、病勢進行(PD)0%、6%(N=5人)、3%(N=2人)。

脳転移に対する放射線治療歴のある患者割合は54%(N=27人)、60%(N=48人)、59%(N=43人)。放射線療法の種類は全脳照射0%、41%(N=33人)、40%(N=29人)、その他0%、19%(N=15人)、19%(N=14人)。

以上の背景を有する患者におけるブリガチニブ治療期間中央値21.8ヶ月(第I/II相試験)、9.3ヶ月(ALTA試験アームA)、10.5ヶ月(ALTA試験アームB)時点における結果は下記の通りである。10mm以上の脳転移病変を有する患者における頭蓋内病変客観的奏効率(iORR)は第I/II相試験で53%(95%信頼区間:27-79%,N=8/15人)、ALTA試験アームAで46%(95%信頼区間:27-67%,N=12/26人)、ALTA試験アームBで67%(95%信頼区間:41-87%,N=12/18人)。

また、放射線治療歴のない脳転移のある患者または放射線治療後に病勢進行した患者における頭蓋内病変客観的奏効率(iORR)は第I/II相試験で67%(95%信頼区間:30-93%,N=6/9人)、ALTA試験アームAで42%(95%信頼区間:20-67%,N=8/19人)、ALTA試験アームBで73%(95%信頼区間:45-92%,N=11/15人)を示した。

そして、ベースライン時に脳転移病変を有する患者における頭蓋内病変無増悪生存期間(iPFS)中央値は第I/II相試験で14.6ヶ月(95%信頼区間:12.7-36.8ヶ月)、ALTA試験アームAで15.6ヶ月(95%信頼区間:9.0-18.3ヶ月)、ALTA試験アームBで18.4ヶ月(95%信頼区間:12.8ヶ月-未到達)を示した。

以上の探索的解析の結果よりD. Ross Camidge氏らは以下のように結論を述べている。”ザーコリ治療歴後に脳転移のある未分化リンパ腫キナーゼ遺伝子転座陽性(ALK陽性)の非小細胞肺がんに対するブリガチニブは頭蓋内病変客観的奏効率(iORR)、頭蓋内病変無増悪生存期間(iPFS)を改善します。特に、1日1回ブリガチニブ180mgの治療を受けた患者さんにおける頭蓋内病変無増悪生存期間(iPFS)の延長効果は高いです。”

Exploratory Analysis of Brigatinib Activity in Patients With Anaplastic Lymphoma Kinase-Positive Non–Small-Cell Lung Cancer and Brain Metastases in Two Clinical Trials(DOI: 10.1200/JCO.2017.77.5841 Journal of Clinical Oncology – published online before print May 16, 2018)

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