この記事の3つのポイント
・BET阻害薬であるBirabresibはNUT正中線がん(NMC)患者を含む固形がん患者に対して良好な安全性プロファイルを示した
・Birabresibの主な治療関連有害事象(TRAE)は下痢、吐き気、食欲減退、嘔吐、無力症、味覚異常、疲労などである
・NUT正中線がん(NMC)患者に対するBirabresibの奏効率(RR)は部分奏効(PR)33%、病勢安定SD)33%、病勢進行(PD)22%を示した

2018年5月7日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて進行性固形がん患者に対するBET阻害薬であるBirabresib(MK-8628/OTX015)単剤療法の安全性、有効性を検証した第I相試験(NCT02259114)の結果がPeter MacCallum Cancer Centre・Jeremy Lewin氏らにより公表された。

本試験は、進行性固形がん患者(N=46人)に対して1日1回Birabresib 80mgより開始し100mgまで投与する群(コーホートA,N=24人)、21日を1サイクルとして1日1回Birabresib 100mgより開始し160mgまで7日間(14日間休薬)投与する群(コーホートB,N=22人)に分け、主要評価項目としてBirabresibによる治療開始21日以内に発症した用量制限毒性DLT)、第II相試験推奨用量(RPIID)を検証した多施設共同単群非盲検下非無作為化の第I相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。固形がんの種類はNUT正中線がん(NMC)22%(N=10人)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)57%(N=26人)、非小細胞肺がん22%(N=10人)。年齢中央値は60歳(20-79歳)。性別は男性85%(N=39人)、女性15%(N=7人)。EGOG Performance Statusはスコア0が41%(N=19人)、スコア1が57%(N=26人)、スコア2が2%(N=1人)。抗がん剤療法の前治療歴は有り87%(N=40人)、無し6%(N=6人)。前治療歴のレジメン数は1-2レジメン65%(N=26人)、3-4レジメン25%(N=10人)、5レジメン以上10%(N=4人)。

以上の背景を有する患者に対してBirabresibを投与した本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である用量制限毒性(DLT)はコーホートA群ではBirabresib 80mg投与時に21%(N=4人)の患者で発症し、その内訳はグレード3または4の血小板減少症(N=3人)、グレード3のトランスアミナーゼ(ALT)上昇(N=1人)。Birabresib 100mg投与時に67%(N=2人)の患者で発症し、その内訳はグレード4の血小板減少症(N=1人)、グレード2の食欲不振と吐き気(N=1人)。なお、コーホートB群ではBirabresib 100mg、120mg、160mg投与時のいずれにおいても用量制限毒性(DLT)は発症しなかった。以上の用量制限毒性(DLT)の結果より、第II相試験推奨用量(RPIID)は1日1回Birabresib 80mgとして決定された。

また、Birabresibを投与した全ての患者群における治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は83%(N=38人)、グレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)は35%(N=16人)、重篤な有害事象(SAE)は22%(N=10人)、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止は11%(N=5人)の患者で確認された。

全グレードの治療関連有害事象(TRAE)の内訳は下痢37%(N=17人)、吐き気37%(N=17人)、食欲減退30%(N=14人)、嘔吐26%(N=12人)、無力症17%(N=8人)、味覚異常13%(N=6人)、疲労11%(N=5人)などである。

一方の有効性は46人中42人の患者で全奏効率(ORR)の評価可能が可能であり、その内訳は部分奏効(PR)7%(N=3人)、病勢安定(SD)59%(N=25人)、病勢進行(PD)31%(N=13人)を示した。また、固形がん種別の全奏効率(ORR)はNUT正中線がん(NMC)では部分奏効(PR)33%(N=3人)、病勢安定(SD)33%(N=3人)、病勢進行(PD)22%(N=2人)、去勢抵抗性前立腺がん(CRPC)では病勢安定(SD)63%(N=15人)、病勢進行(PD)37%(N=9人)、非小細胞肺がんでは病勢安定(SD)70%(N=7人)、病勢進行(PD)20%(N=2人)であった。

なお、部分奏効(PR)を達成した患者はNUT正中線がん(NMC)患者のみであり、その患者に対してはコーホートA群のBirabresib 80mgが投与されていた。また、病勢安定(SD)を3.8ヶ月、6.0ヶ月継続した患者は非小細胞肺がん患者であり、その患者に対してはBirabresib 100mg、160mgが投与されていた。

以上の第I相試験の結果よりJeremy Lewin氏らは以下のように結論を述べている。”我々の知る限り、本試験は進行性固形がん患者に対してBET阻害薬を投与した初の臨床試験です。Birabresibの安全性プロファイルは良好であり、NUT正中線がん(NMC)患者さんに対して臨床的意義のある抗腫瘍効果を示しました。”

Phase Ib Trial With Birabresib, a Small-Molecule Inhibitor of Bromodomain and Extraterminal Proteins, in Patients With Selected Advanced Solid Tumors(DOI: 10.1200/JCO.2018.78.2292 Journal of Clinical Oncology – published online before print May 7, 2018)

※正中線がんとは
分子的特徴
NUT正中線がんは非常にまれな侵攻性の悪性疾患であり、遺伝的にはNUT遺伝子の再構成により定義される。大多数(75%)の症例では、染色体15q14上のNUT遺伝子と染色体19p13上のBRD4遺伝子が融合し、BRD-NUT融合蛋白をコードするキメラ遺伝子を形成する。残りの症例では、NUTが染色体9q34上のBRD3または染色体8p11上のNSD3と融合している [1] ;これらの腫瘍はNUT変異体と呼ばれる。 [2]

参考文献
1. French CA, Rahman S, Walsh EM, et al.: NSD3-NUT fusion oncoprotein in NUT midline carcinoma: implications for a novel oncogenic mechanism. Cancer Discov 4 (8): 928-41, 2014.[PUBMED Abstract]
2. French CA: NUT midline carcinoma. Cancer Genet Cytogenet 203 (1): 16-20, 2010.[PUBMED Abstract]

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