複数治療歴のあるHER2陰性転移性乳がん患者に対するCXCR4アンタゴニストBalixafortide+ハラヴェン併用療法、客観的奏効率(ORR)63%を示す医学誌『The Lancet Oncology』より


  • [公開日]2018.05.10
  • [最終更新日]2018.05.10
この記事の3つのポイント
・前臨床試験においてCXCR4アンタゴニストは他の抗がん剤などの抗腫瘍効果を高めることが示されている
・複数治療歴のあるHER2陰性転移性乳がん患者に対してBalixafortide+ハラヴェン併用療法は客観的奏効率ORR)63%を示した
・Balixafortide+ハラヴェン併用療法の主な治療関連有害事象(TRAE)は疲労、好中球減少症インフュージョンリアクション、脱毛、便秘、吐き気である

2018年4月26日、医学誌『The Lancet Oncology』にて腫瘍細胞にCXCR4の発現が亢進している前治療歴1から3レジメンのあるHER2陰性転移性乳がん患者に対するCXCR4アンタゴニストであるBalixafortide+エリブリン(商品名ハラヴェン;以下ハラヴェン)併用療法の安全性有効性を検証した第I相試験(NCT01837095)の結果がInstitut Català d’Oncologia L’Hospitalet-Barcelona・Sonia Pernas氏らにより公表された。なお、本試験は著者らの知る限り転移性乳がん患者に対してCXCR4アンタゴニストの有用性を検証した初の臨床試験であると述べている。

本試験はHER2陰性転移性乳がん患者に対してPART1では28日を1サイクルとしてBalixafortide(0.5mg/kg,1mg/kg)+ハラヴェン(1.1mg/m2,1.4mg/m2)併用療法を投与する群(N=9人)、PART2では21日を1サイクルとしてBalixafortide(1mg/kg,2mg/kg,3mg/kg,3.5mg/kg,4mg/kg,4.5mg/kg,5.5mg/kg)+ハラヴェン1.4mg/m2併用療法を投与する群(N=25人)に分けて、主要評価項目として用量制限毒性DLT)、有害事象(AE)発症率、最大耐用量(MTD)、副次評価項目としてPR(部分奏効)以上を達成した患者割合として定義された客観的奏効率(ORR)などを検証した国際多施設共同単群の用量漸増第I相試験である。なお、拡大コーホートではPART2の患者(N=22人)に3人の患者を追加している。

本試験に登録された拡大コーホートの患者背景は下記の通りである。年齢中央値は59歳(50-62歳)。人種は黒人4%(N=1人)、白人96%(N=24人)。ECOG Performance Statusはスコア0が40%(N=10人)、スコア1が60%(N=15人)。CXCR4の発現率は低い群72%(N=18人)、中間群12%(N=3人)、高い群16%(N=4人)。ホルモン受容体陽性率はER陽性PR陽性48%(N=12人)、ER陽性PR陰性32%(N=8人)、ER陰性PR陽性4%(N=1人)、トリプルネガティブ12%(N=3人)、不明4%(N=1人)。

転移部位は骨64%(N=16人)、肝臓68%(N=17人)、リンパ節20%(N=5人)、肺44%(N=11人)。化学療法の前治療歴は1レジメン4%(N=1人)、2レジメン28%(N=7人)、3レジメン48%(N=12人)、4レジメン20%(N=5人)。前治療歴の化学療法の種類はタキサン系96%(N=24人)、アントラサイクリン系80%(N=20人)、カペシタビン(商品名ゼローダ)60%(N=15人)。ホルモン療法の前治療歴は1レジメン28%(N=7人)、2レジメン12%(N=3人)、3レジメン20%(N=5人)、4レジメン20%(N=5人)、5レジメン16%(N=4人)。

以上の背景を有する患者に対してBalixafortide+ハラヴェン併用療法を投与した結果は下記の通りである。主要評価項目である用量制限毒性(DLT)、最大耐用量(MTD)は確認されず、Balixafortide+ハラヴェン併用療法の最適用量は21日を1サイクルとして1日目から3日目、8日目から10日目にBalixafortide5.5mg/kg+2日目、9日目にハラヴェン1.4mg/m2併用療法であることが示された。

腫瘍縮小効果の評価可能であった患者(N=54人)における副次評価項目である客観的奏効率(ORR)は30%(95%信頼区間:18%-44%,N=16人)を示し、その内訳は全ての患者で部分奏効(PR)を示した。なお、拡大コーホートにおける客観的奏効率(ORR)は63%(95%信頼区間:41%-81%,N=15人)を示し、奏効持続期間(DOR)中央値は134日(95-156日)を示した。

一方の安全性として、全患者における最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。疲労79%(N=44/56人)、好中球減少症57%(N=32人)、インフュージョンリアクション48%(N=27人)、脱毛46%(N=26人)、便秘46%(N=26人)、吐き気45%(N=25人)。

また、重篤な治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者は38%(N=21/56人)で、その内訳は下記の通りである。発熱好中球減少症9%(N=5人)、好中球減少4%(N=2人)、便秘4%(N=2人)、肺炎4%(N=2人)、尿路感染症5%(N=3人)。

以上の第I相試験の結果よりSonia Pernas氏らは以下のように結論を述べている。”Balixafortide+ハラヴェン併用療法の忍容性はBalixafortide単剤療法、ハラヴェン単剤療法それぞれと同等であり、客観的奏効率(ORR)においては過去に第II相試験(9%-12%)、第III相試験(17%)で報告されたハラヴェン単剤療法よりも優れておりました。以上の第I相試験の結果より、複数治療歴のあるHER2陰性転移性乳がん患者に対するBalixafortide+ハラヴェン併用療法は有望な治療選択肢になり得る可能性が示唆されました。”

Balixafortide plus eribulin in HER2-negative metastatic breast cancer: a phase 1, single-arm, dose-escalation trial(The Lancet Oncology, DOI: https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30147-5)

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