アロマターゼ阻害薬抵抗性ホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後転移性乳がんに対するフェソロデックス+アフィニトール併用療法、無増悪生存期間(PFS)を統計学有意に延長する医学誌『Journal of Clinical Oncology』より


  • [公開日]2018.05.02
  • [最終更新日]2018.05.02
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アロマターゼ阻害薬に対して抵抗性を示したホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後転移性乳がんに対するフェソロデックス+アフィニトール併用療法は無増悪生存期間PFS)を10.3ヶ月統計学に延長した
・フェソロデックス+アフィニトール併用療法は客観的奏効率ORR)18.2%を示した
・フェソロデックス+アフィニトール併用療法は臨床的有用性(CBR)63.6%を示した

2018年4月24日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてアロマターゼ阻害薬に抵抗性を示したホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後転移性乳がん患者に対する抗エストロゲン薬であるフルベストラント(商品名フェソロデックス;以下フェソロデックス)+mTOR阻害薬であるエベロリムス(商品名アフィニトール;以下アフィニトール)併用療法の有効性安全性を検証した第II相試験(NCT01797120)の結果Montefiore Medical Center・Noah Kornblum氏らにより公表された。

本試験は、アロマターゼ阻害薬に抵抗性を示したホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後転移性乳がん患者(N=131人)に対して28日を1サイクルとして1日目、15日目フェソロデックス500mg(2サイクル目以降は1日目のみ)+1日1回アフィニトール10mg併用療法を投与する群(N=66人)、または1日目、15日目フェソロデックス500mg(2サイクル目以降は1日目のみ)+プラセボ併用療法を投与する群(N=65人)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として主治医判断による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として部分奏効(PR)または完全奏効(CR)を達成した患者割合として定義された客観的奏効率(ORR)、客観的奏効率(ORR)または病勢安定SD)を少なくとも24週間達成した患者割合として定義された臨床的有用性(CBR)、全生存期間OS)などを比較検証した二重盲検下プラセボ比較の第II相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はアフィニトール群64歳(39-92歳)、プラセボ群59歳(35-85歳)。人種はアフィニトール群で白人85%(N=56人)、黒人12%(N=8人)、その他3%(N=2人)、プラセボ群で白人75%(N=49人)、黒人17%(N=11人)、その他8%(N=5人)。ECOG Performance Statusはアフィニトール群でスコア0が61%(N=40人)、スコア1が39%(N=26人)、プラセボ群でスコア0が58%(N=38人)、スコア1が42%(N=27人)。

転移部位はアフィニトール群で骨67%(N=44人)、肺42%(N=28人)、肝臓27%(N=18人)、リンパ節41%(N=27人)、プラセボ群で骨71%(N=46人)、肺35%(N=23人)、肝臓26%(N=17人)、リンパ節43%(N=28人)。前治療歴はアフィニトール群で化学療法17%(N=11人)、フェソロデックス9%(N=6人)、CDK4/6阻害薬0%、プラセボ群で化学療法18%(N=12人)、フェソロデックス8%(N=5人)、CDK4/6阻害薬3%(N=2人)。両群間で年齢中央値、ECOG Performance Statusスコア、前治療歴において患者背景に大きな違いはなかった。

以上の背景を有する患者に対する結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はアフィニトール群10.3ヶ月(95%信頼区間:7.6-13.8ヶ月)に対してプラセボ群5.1ヶ月(95%信頼区間:3.0-8.0ヶ月)、アフィニトール群で病勢進行または死亡のリスクが統計学的有意に39%減少した(ハザードリスク:0.61,95%信頼区間:0.40-0.92,P=0,02)。

副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はアフィニトール群18.2%(95%信頼区間:9.8%-29.6%,N=12人)に対してプラセボ群12.3%(95%信頼区間:5.5%-22.8%,N=8人)、両群間で統計学有意な差は確認されなかった(P =0.47)。

臨床的有用性(CBR)はアフィニトール群63.6%(95%信頼区間:50.9%-75.1%,N=42人)に対してプラセボ群41.5%(95%信頼区間:29.4%-54.4%,N=27人)、アフィニトール群で統計学有意に高率であった(P =0.01)。

フォローアップ期間中央値19.3ヶ月(0-36.3ヶ月)時点における全生存期間(OS)中央値はアフィニトール群28.3ヶ月(95%信頼区間:19.5-29.6ヶ月)に対してプラセボ群31.4ヶ月(95%信頼区間:21.8ヶ月-未到達)、両群間で統計学有意な差は確認されなかった(ハザードリスク:1.31,95%信頼区間:0.72-2.38,P=0,37)。

一方の安全性として、プラセボ群よりもアフィニトール群で少なくとも5%以上の患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。口腔粘膜炎(53%対12%)、皮膚障害(38%対5%)、貧血(31%対6%)、下痢(23%対8%)、高血糖(19%対5%)、高トリグリセリド血症(17%対3%)、肺炎(17%対0%)、呼吸困難(16%対3%)、低ナトリウム血症(6%対0%)、トランスアミナーゼ上昇(5%対2%)。

また、プラセボ群よりもアフィニトール群で少なくとも5%以上の患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。口腔粘膜炎(11%対0%)、倦怠感(6%対5%)、肺炎(6%対0%)。なお、プラセボ群の患者1人でグレード4のAST上昇を発症した。

以上の第II相試験の結果よりNoah Kornblum氏らは以下のように結論を述べている。”アロマターゼ阻害薬に抵抗性を示したホルモン受容体陽性HER2陰性閉経後転移性乳がん患者さんに対するてアフィニトールはフェソロデックスの有効性を高めることが証明されました。”

Randomized Phase II Trial of Fulvestrant Plus Everolimus or Placebo in Postmenopausal Women With Hormone Receptor–Positive, Human Epidermal Growth Factor Receptor 2–Negative Metastatic Breast Cancer Resistant to Aromatase Inhibitor Therapy: Results of PrE0102(DOI: 10.1200/JCO.2017.76.9331 Journal of Clinical Oncology – published online before print April 17, 2018)

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