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HER2陰性早期局所進行性乳がん患者に対する術前化学療法としてのアブラキサン、パクリタキセルに対する病理学的完全奏効率(pCR)において統計学的有意な差はなし

[公開日] 2018.04.16[最終更新日] 2018.04.16

2018年1月11日、医学誌『JAMA Oncology』にてHER2陰性早期局所進行性乳がん患者に対する術前化学療法としてアントラサイクリン系抗がん剤レジメン治療前にナブパクリタキセル(商品名アブラキサン;以下アブラキサン)単剤療法、またはパクリタキセル単剤療法を投与し、その有効性を検証した第III相のETNA試験(NCT01822314)の結果がSan Raffaele Scientific Institute・Luca Gianni氏らにより公表された。 ETNA試験とは、HER2陰性早期局所進行性乳がん患者に対して4週を1サイクルとして1週目、2週目、3週目に1日1回アブラキサン125mg/m2を投与し4週目を休薬し4サイクル投与する群(N=346人)、または4週を1サイクルとして1週目、2週目、3週目に1日1回パクリタキセル90mg/m2を投与し4週目を休薬し4サイクル投与する群(N=349人)に無作為に振り分け、主要評価項目である原発巣および腋窩リンパ節の浸潤癌消失(ypT0/is ypN0)として定義される病理学的完全奏効率(pCR)、副次評価項目として忍容性、安全性を検証した多施設共同オープンラベルの第III相試験である。なお、両群共にアブラキサンまたはパクリタキセル投与後の4サイクル後にアントラサイクリン系抗がん剤レジメンであるAC療法(アドリアマイシン+シクロホスファミド)、またはEC療法(エピルビシン+シクロホスファミド)、 またはFEC療法(フルオロウラシル+エピルビシン+シクロホスファミド)4サイクル投与している。 本試験に登録されている患者背景は下記の通りである。病期ステージは切除可能症例はアブラキサン群76%(N=264人)に対してパクリタキセル群75%(N=261人)、局所進行症例は24%(N=82人)に対して25%(N=88人)。がんの大きさと浸潤 (T因子)はT1が1%未満(N=1人)に対して1%未満(N=2人)。T2が75%(N=258人)に対して70%(N=245人)。T3が16%(N=56人)に対して22%(N=76人)。T4が9%(N=31人)に対して7%(N=26人)。リンパ節転移(N因子)はN0が52%(N=181人)に対して48%(N=167人)。N1が40%(N=138人)に対して44%(N=153人)。N2が8%(N=27人)に対して8%(N=29人)。N3が2%(N=8人)に対して2%(N=6人)。 乳がんサブタイプ分類としてトリプルネガティブは32%(N=109人)に対して32%(N=110人)。Luminal-B(high)は54%(N=188人)に対して54%(N=189人)。Luminal-B(intermediate)は14%(N=49人)に対して14%(N=50人)。 以上の背景を有する患者に対して術前化学療法としてアブラキサン、またはパクリタキセル単剤療法を投与した結果、主要評価項目である病理学的完全奏効率(pCR)は下記の通りである。アブラキサン群22.5%(95%信頼区間:14.7-23.1%)に対してパクリタキセル群18.6%(95%信頼区間:18.2-27.3%)、パクリタキセル単剤療法群に比べてアブラキサン単剤療法で統計学的有意な改善は確認されなかった(オッズ比:0.77,95%信頼区間:0.52-1.13,P =0.19)。 なお、乳がんサブタイプ別、病期別、年齢別の病理学的完全奏効率(pCR)は下記の通りである。Luminal-B症例ではアブラキサン群13.9%に対してパクリタキセル群10.0%(オッズ比:0.69,95%信頼区間:0.39-1.21)、トリプルネガティブ症例ではアブラキサン群41.3%に対してパクリタキセル群37.7%(オッズ比:0.85,95%信頼区間:0.49-1.45)。早期乳がん症例ではアブラキサン群23.1%に対してパクリタキセル群20.7%(オッズ比:0.87,95%信頼区間:0.57-1.31)、局所進行性乳がん症例ではアブラキサン群20.7%に対してパクリタキセル群12.5%(オッズ比:0.55,95%信頼区間:0.24-1.25)。50歳以下症例ではアブラキサン群22.0%に対してパクリタキセル群20.7%(オッズ比:0.90,95%信頼区間:0.53-1.51)、51歳以上アブラキサン群23.1%に対してパクリタキセル群16.1%(オッズ比:0.63,95%信頼区間:0.35-1.14)。 一方の安全性として、少なくとも1回の治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者はアブラキサン単剤療法群95.5%、パクリタキセル群94.9%であった。また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はそれぞれ22.3%、17.3%を示した。なお、特にパクリタキセル単剤療法群に比べてアブラキサン単剤療法群で発症率の高かったグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は末梢神経障害(53.7%:62.9%)、好中球減少症(36.4%:41.8%)でそれぞれ統計学的有意な差が確認されている。 以上のETNA試験の結果よりLuca Gianni氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陰性早期局所進行性乳がん患者に対する術前化学療法としてのアブラキサン単剤療法はパクリタキセル単剤療法に比べて統計学的有意な病理学的完全奏効率(pCR)を示しませんでした。また、多変量解析の結果、治療結果に影響を与える予後因子としては乳がんサブタイプであり、Luminal-B症例対トリプルネガティブ症例のオッズ比は4.85(95%信頼区間3.28-7.18)でした。” Comparing Neoadjuvant Nab-paclitaxel vs Paclitaxel Both Followed by Anthracycline Regimens in Women With ERBB2/HER2-Negative Breast Cancer—The Evaluating Treatment With Neoadjuvant Abraxane (ETNA) Trial A Randomized Phase 3 Clinical Trial(JAMA Oncol. 2018;4(3):302-308. doi:10.1001/jamaoncol.2017.4612)
ニュース 乳がん ナブパクリタキセル

山田創

製薬会社、オンコロジーメディアの運営を経て、フリーのメディカルライターへ転身。Twitterアカウント「@So_Yamada_」

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