HER2陽性転移性乳がん高齢者患者に対するハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミドのメトロノーム化学療法、6ヶ月無増悪生存率(PFS)73.4%を示す医学誌『The Lancet Oncology』より


  • [公開日]2018.04.13
  • [最終更新日]2018.04.13

2018年2月9日、医学誌『The Lancet Oncology』にてHER2陽性転移性乳がん高齢者患者に対するトラスツズマブ(商品名ハーセプチン;以下ハーセプチン)+ペルツズマブ(商品名パージェタ;以下パージェタ)±シクロホスファミドのメトロノーム化学療法有効性安全性を検証した第II相のEORTC 75111-10114試験(NCT01597414)の結果がUniversity Hospitals Leuven・Hans Wildiers氏らより公表された。

EORTC 75111-10114試験とは、HER2陽性転移性の70歳以上または60歳以上で全身状態(PS)の悪い乳がん患者(N=80人)に対して3週間に1回ハーセプチン6mg/kg(初回は8mg/kg)+3週間に1回パージェタ420mg(初回は840mg/kg)併用療法を病勢進行または治療継続が困難になる有害事象(AE)発症まで投与する群(N=39人)、または3週間に1回ハーセプチン6mg/kg(初回は8mg/kg)+3週間に1回パージェタ420mg(初回は840mg/kg)+1日1回シクロホスファミド50mg併用療法を病勢進行または治療継続が困難になる有害事象(AE)発症まで投与する群(N=41人)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として治験医師の判断により6ヶ月無増悪生存率PFS)、副次評価項目として1年全生存率(OS)、1年乳がん特異的生存率(BCSS)、部分奏効(PR)+完全奏効(CR)の割合として定義された腫瘍縮小効果を比較検証した多施設共同オープンラベルの第II相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はハーセプチン+パージェタ併用療法群76.2歳(61.4-91.4歳)、ハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法群77.3歳(67.7-89.6歳)。ホルモン受容体陽性率はER陰性PgR陰性患者31%(N=12人)に対して32%(N=13人)。ER陽性PgR陽性患者69%(N=27人)に対して68%(N=28人)。

前治療歴は術後化学療法または抗HER抗体薬療法の治療歴のない患者74%(N=29人)に対して88%(N=35人)。治療歴が1レジメン以上ある患者26%(N=29人)に対して13%(N=5人)。手術歴のにない患者44%(N=17人)に対して54%(N=22人)。Palliative surgeryの手術歴のある患者3%(N=1人)に対して5%(N=2人)。Curative-intent surgeryの手術歴のある患者54%(N=21人)に対して42%(N=17人)。

上記背景を有する患者に対してハーセプチン+パージェタ±シクロホスファミド併用療法を投与したフォローアップ期間中央値20.7ヶ月時点における主要評価項目である6ヶ月無増悪生存率(PFS)の結果は下記の通りである。ハーセプチン+パージェタ併用療法群46.2%(95%信頼区間:30.2-60.7%)に対してハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法73.4%(95%信頼区間:56.6-84.6%)、シクロホスファミドを併用することで病勢進行または死亡のリスクが35%減少(ハザードリスク比0.65,95%信頼区間:0.37-1.12,P=0.12)を示した。両群間における統計学的有意な差は確認されなかったが、両群間において本試験のプロトコルで閾値として要求されていた10%を超える27.2%の差を示した。

副次評価項目である1年全生存率(OS)の結果は下記の通りである。ハーセプチン+パージェタ併用療法群67.3%(95%信頼区間:49.4-80.0%)に対してハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法83.8%(95%信頼区間:67.3-92.4%)、シクロホスファミドを併用することで死亡のリスクが8%減少(ハザードリスク比0.92,95%信頼区間:0.44-1.91,P=0.83)を示した。

1年乳がん特異的生存率(BCSS)の結果は下記の通りである。ハーセプチン+パージェタ併用療法群23.4%(95%信頼区間:8.0-38.7%)に対してハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法16.5%(95%信頼区間:4.3-28.7%)、シクロホスファミドを併用することで乳がんによる死亡のリスクが10%増加(ハザードリスク比1.10,95%信頼区間:0.47-2.58,P=0.83)を示した。

また、腫瘍縮小効果の結果は下記の通りである。ハーセプチン+パージェタ併用療法群44%(N=16/36人)に対してハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法53%(N=19/36人)。なお、完全奏効(CR)を達成した患者の割合はそれぞれ3%(N=1人)、3%(N=1人)を示した。

一方の安全性として、少なくともグレード3から5の有害事象(AE)を発症した患者の割合は下記の通りである。ハーセプチン+パージェタ併用療法群54%(N=21/39人)、ハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法群56%(N=23/41人)であった。最も頻繁に発症が確認されたグレード3または4の有害事象(AE)は高血圧がハーセプチン+パージェタ併用療法群15%(N=6人)に対してハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法群12%(N=5人)、下痢10%(N=4人)に対して12%(N=5人)、呼吸困難5%(N=2人)に対して10%(N=4人)、疲労8%(N=3人)に対して5%(N=2人)、痛み5%(N=2人)に対して5%(N=2人)、そして血栓塞栓イベントは0%に対して10%(N=4人)であった。

なお、治療中の死亡はハーセプチン+パージェタ併用療法群で4人確認されており、その原因は心停止、腹膜炎、呼吸不全、原因不明。ハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法群で1人確認されており、その原因は心不全である。

以上のEORTC 75111-10114試験の結果よりHans Wildiers氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陽性転移性の70歳以上または60歳以上で全身状態(PS)の悪い乳がん患者さんに対してハーセプチン+パージェタ併用療法にシクロホスファミドのメトロノーム化学療法を追加することで、ハーセプチン+パージェタ併用療法よりも無増悪生存期間(PFS)中央値を7ヶ月延長させることを示しました。また、許容できる安全性プロファイルを示しています。以上の結果より、ハーセプチン+パージェタ+シクロホスファミド併用療法は、抗HER2抗体薬療法後に進行した患者さんに対してタキサン抗がん剤の投与を検討する機会を減少、遅らせる可能性を示しました。”

Pertuzumab and trastuzumab with or without metronomic chemotherapy for older patients with HER2-positive metastatic breast cancer (EORTC 75111-10114): an open-label, randomised, phase 2 trial from the Elderly Task Force/Breast Cancer Group(The Lancet Oncology, DOI: https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30083-4)

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