リツキサンベースの治療後に病勢進行した濾胞性リンパ腫を含む低悪性度非ホジキンリンパ腫患者に対するオビヌツズマブ+トレアキシン併用療法、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を統計学的有意に延長する医学誌『Journal of Clinical Oncology (JCO)』より


  • [公開日]2018.04.12
  • [最終更新日]2019.12.19
この記事の3つのポイント
・濾胞性リンパ腫を含む低悪性度非ホジキンリンパ腫患者に対する初回治療の成績は良好であるが、初回治療に対して難治性を示した患者はその後の治療に対しても抵抗性を示しやすい
オビヌツズマブ+トレアキシン併用療法はトレアキシン単独療法よりも無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)を統計学的有意に延長する
・オビヌツズマブ+トレアキシン併用療法の主な治療関連有害事象(TRAE)はインフュージョンリアクション、吐き気、倦怠感である

2018年3月27日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてリツキシマブ(商品名リツキサン;以下リツキサン)療法後に病勢進行した濾胞性リンパ腫(FL)を含む低悪性度(インドレント)非ホジキンリンパ腫(NHL)患者に対する抗CD20モノクローナル抗体であるオビヌツズマブ+ベンダムスチン(商品名トレアキシン;以下トレアキシン)導入療法後のオビヌツズマブメンテナンス療法有効性を検証した第III相のGADOLIN試験(NCT01059630)の結果がLombardi Comprehensive Cancer Center・Bruce D. Cheson氏らにより公表された。

GADOLIN試験とは、リツキサン療法後に病勢進行した濾胞性リンパ腫を含む低悪性度非ホジキンリンパ腫患者(N=413人)に対して28日を1サイクルとして1日、8日、15日目にオビヌツズマブ1000mg(2サイクル目以降は1日目に投与)+1日目、2日目にトレアキシン90mg/m2導入療法を6サイクル投与し、その後2週間に1回の投与間隔でオビヌツズマブ1000mgメンテナンス療法を最大で2年間投与する群(N=204)、または28日を1サイクルとして1日目、2日目にトレアキシン90mg/m2導入療法を6サイクル投与する群(N=209)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として独立評価委員会(IRC)判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として治験医師判定による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性などを比較検証した国際多施設共同の第III相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。なお、両群間における患者背景に偏りはなかった。年齢中央値はオビヌツズマブ+トレアキシン群63歳(34-87歳)、トレアキシン群63歳(21-87歳)。性別はオビヌツズマブ+トレアキシン群で男性56.9%(N=116人)、トレアキシン群で男性58.4%(N=122人)。

前治療歴レジメン数はオビヌツズマブ+トレアキシン群で1レジメン49.5%(N=101人)、2レジメン30.9%(N=63人)、3レジメン13.7%(N=28人)、4レジメン3.9%(N=8人)、5レジメン以上2.0%(N=4人)、トレアキシン群で1レジメン41.1%(N=86人)、2レジメン36.4%(N=76人)、3レジメン14.4%(N=30人)、4レジメン6.7%(N=14人)、5レジメン以上1.4%(N=3人)。

病勢進行を経験したリツキサンのレジメン内容はオビヌツズマブ+トレアキシン群でリツキサン+化学療法81.4%(N=166人)、リツキサン単独療法18.6%(N=38人)、トレアキシン群でリツキサン+化学療法77.0%(N=161人)、リツキサン単独療法23.0%(N=48人)。

以上の背景を有する患者に対して本試験のフォローアップ期間中央値31.8ヶ月時点、オビヌツズマブ+トレアキシン群で56.4%(N=115人)、トレアキシン群で69.9%(N=146人)の患者で無増悪生存イベントが発生した時点における無増悪生存期間(PFS)の結果は下記の通りである。

副次評価項目である治験医師判定による無増悪生存期間(PFS)中央値はオビヌツズマブ+トレアキシン群25.8ヶ月(95%信頼区間:19.5-41.1ヶ月)に対してトレアキシン群14.1ヶ月(95%信頼区間:12.6-16.0ヶ月)、オビヌツズマブ+トレアキシン群で病勢進行または死亡のリスクが43%統計学的有意に減少した(ハザードリスク比:0.57,95%信頼区間:0.44-0.73,P<0.001)。

また、濾胞性リンパ腫(FL)患者(オビヌツズマブ+トレアキシン群:N=164人,トレアキシン群:N=171人)における治験医師判定による無増悪生存期間(PFS)中央値はオビヌツズマブ+トレアキシン群25.3ヶ月(95%信頼区間:17.4-36.0ヶ月)に対してトレアキシン群14.0ヶ月(95%信頼区間:11.3-15.3ヶ月)、オビヌツズマブ+トレアキシン群で病勢進行または死亡のリスクが48%統計学的有意に減少した(ハザードリスク比:0.52,95%信頼区間:0.39-0.86,P<0.001)。

その他副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はオビヌツズマブ+トレアキシン群未到達(95%信頼区間:未到達)に対してトレアキシン群未到達(95%信頼区間:48.2ヶ月-未到達)、オビヌツズマブ+トレアキシン群で死亡のリスクが33%統計学的有意に減少した(ハザードリスク比:0.67,95%信頼区間:0.47-0.96,P=0.0269)。

また、濾胞性リンパ腫(FL)患者(オビヌツズマブ+トレアキシン群:N=164人,トレアキシン群:N=171人)における全生存期期間(OS)中央値はオビヌツズマブ+トレアキシン群未到達(95%信頼区間:未到達)に対してトレアキシン群53.9ヶ月(95%信頼区間:40.9ヶ月-未到達)、オビヌツズマブ+トレアキシン群で死亡のリスクが42%統計学的有意に減少した(ハザードリスク比:0.58,95%信頼区間:0.39-0.86,P=0.0061)。

一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者はオビヌツズマブ+トレアキシン群99.0%(N=202人)に対してトレアキシン群98.5%(N=200人)。最も一般的に確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は両群ともインフュージョンリアクション、吐き気、倦怠感であった。

また、グレード3から5の治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者はオビヌツズマブ+トレアキシン群72.5%(N=148人)に対してトレアキシン群65.5%(N=133人)。最も一般的に確認されたグレード3から5の治療関連有害事象(TRAE)は両群とも好中球減少症、インフュージョンリアクションであった。

重篤な有害事象(SAE)を発症した患者はオビヌツズマブ+トレアキシン群43.6%(N=89人)に対してトレアキシン群36.9%(N=75人)。治療関連有害事象(TRAE)のために治療中止になった患者はオビヌツズマブ+トレアキシン群20.1%(N=41人)に対してトレアキシン群17.2%(N=35人)。

以上のGADOLIN試験の結果よりBruce D. Cheson氏らは以下のように結論を述べている。”濾胞性リンパ腫を含む低悪性度非ホジキンリンパ腫患者さんに対するオビヌツズマブ+トレアキシン併用療法は、トレアキシン単独療法よりも無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を延長させる臨床的効果を示しました。また、安全性は両群間において大きな違いはありませんでした。”

Overall Survival Benefit in Patients With Rituximab-Refractory Indolent Non-Hodgkin Lymphoma Who Received Obinutuzumab Plus Bendamustine Induction and Obinutuzumab Maintenance in the GADOLIN Study(DOI: 10.1200/JCO.2017.76.3656 Journal of Clinical Oncology – published online before print March 27, 2018)

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