マントル細胞リンパ腫患者に対するイムブルビカ+ベネトクラクス併用療法、完全奏効率(CR)42%を示す医学誌『The New England Journal of Medicine』より


  • [公開日]2018.04.04
  • [最終更新日]2019.12.19
この記事の3つのポイント
・マントル細胞リンパ腫患者に対するイムブルビカ単剤療法の治療開始16週時点における完全奏効率(CR)は9%
・マントル細胞リンパ腫患者に対するBTK阻害薬イムブルビカ+BCL2阻害薬ベネトクラクス併用療法の治療開始16週時点における完全奏効率(CR)は42%
・マントル細胞リンパ腫の治療としてBTKとBCL2 の2つを標的化する臨床的意義は高い

2018年3月29日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてマントル細胞リンパ腫患者に対するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるイブルチニブ(商品名イムブルビカ;以下イムブルビカ)+BCL2阻害薬であるベネトクラクス(ABT-199)併用療法の有効性を検証した第II相試験(NCT02471391)の結果がPeter MacCallum Cancer Centre・Constantine S. Tam氏らにより公表された。

本試験は、マントル細胞リンパ腫患者(N=24人)に対してまず1日1回イムブルビカ560mgを単剤で投与し、その4週間後に1日ベネトクラクス400mgまで毎週漸増し、進行または忍容できない治療関連有害事象(TRAE)が認められるまで継続投与し、主要評価項目として治療開始16週時点におけるCT評価した完全奏効(CR)達成率、副次評価項目としてフローサイトメトリー、ASO-PCRにより測定した微小残存病変MRD)消失率、無増悪生存期間PFS)、全生存期間OS)を検証したシングルアームの第II相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は68歳(47-81歳)。性別は男性88%(N=21人)、女性12%(N=3人)。ECOG Performance Statusスコアは0が38%(N=9人)、1が42%(N=10人)、2が21%(N=5人)。

前治療歴のある患者は96%(N=23人)、ない患者は4%(N=1人)。治療歴のある患者における治療レジメン数中央値は2レジメン(1-6)。前治療の内訳はリツキシマブ(商品名リツキサン)100%(N=23人)、アントラサイクリン91%(N=21人)、シタラビン48%(N=11人)、自己造血幹細胞移植(ASCT)30%(N=7人)、ベンダムスチン(商品名トレアキシン)17%(N=4人)。

骨髄病変のある患者は試験開始時で54%(N=13人)、試験開始より4週間後に骨髄病変のあった患者29%(N=7人)、骨髄病変のなかった患者17%(N=4人)。予後予測分類スコアは低リスク4%(N=1人)、中リスク21%(N=5人)、高リスク75%(N=18人)。遺伝子TP53ステータスはTP53変異陽性欠失あり17%(N=4人)、TP53変異陽性欠失なし29%(N=7人)、TP53変異陰性欠失あり1%(N=4人)。

上記背景を有する患者に対してイムブルビカ+ベネトクラクス併用療法を投与した結果、主要評価項目である完全奏効率(CR)は42%(95%信頼区間:22%-63%)を示した。なお、本成績は過去にイムブルビカ単剤療法を受けた歴史的対照における治療開始16週時点での完全奏効率(CR)9%よりも統計学的有意に高率であった(P<0.001)。

なお、完全奏効率(CR)以外の内訳は治療開始16週時点での部分奏効(PR)を達成した患者17%(N=4人)、病勢安定SD)17%(N=4人)、病勢進行(PD)12%(N=3人)、評価不能4%(N=1人)であった。

副次評価項目であるフローサイトメトリー、ASO-PCRにより測定した微小残存病変(MRD)の消失が確認された患者割合はフローサイトメトリーで67%(N=16人)、ASO-PCR では38%(N=9人)を示した。

無増悪生存期間(PFS)は未到達であり、12ヶ月無増悪生存率(PFS)75%(95%信頼区間:60-94%)、18ヶ月無増悪生存率(PFS)57%(95%信頼区間:40-82%)。全生存期間(OS)は12ヶ月全生存率(OS)79%(95%信頼区間:64-97%)、18ヶ月全生存率(OS)74%(95%信頼区間:57-95%)を示した。

一方の安全性として、グレードの問わない治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者は100%(N=24人)、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者は71%(N=17人)であり、その内訳はそれぞれ下記の通りである。

グレードの問わない治療関連有害事象(TRAE)の内訳は下痢83%(N=20人)、倦怠感75%(N=18人)、吐き気または嘔吐71%(N=17人)など。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)の内訳は好中球減少症33%(N=8人)、血小板減少症17%(N=4人)、貧血12%(N=3人)、下痢12%(N=3人)などである。

なお、治療開始中6人の患者で死亡が確認されており、その内4人は病勢進行、2人はその他の原因による死亡であった。その他の原因の内、1人目はイムブルビカ治療開始6週間後の悪性耳炎、2人目は完全奏効(CR)を維持中に心不全により死亡した。なお、心不全により死亡した患者はアントラサイクリン系抗がん剤により心筋症歴を有していた。

以上の第II相試験の結果よりConstantine S. Tam氏らは以下のように結論を述べている。”ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬イムブルビカ+BCL2阻害薬ベネトクラクス併用療法は現在の治療に効果を示さない患者に対して完全奏効率(CR)42%を示しました。 マントル細胞リンパ腫の治療としてBTKとBCL2 の2つを標的化する臨床意義が本試験により証明されました。”

Ibrutinib plus Venetoclax for the Treatment of Mantle-Cell Lymphoma(N Engl J Med 2018; 378:1211-1223 DOI: 10.1056/NEJMoa1715519)

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