NTRK融合遺伝子変異を有する小児固形がん患者に対するラロトレクチニブの第I/II相試験の結果医学誌『Lancet Oncology』より


  • [公開日]2018.04.02
  • [最終更新日]2018.04.03
この記事の3つのポイント
・トロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害薬であるラロトレクチニブはNTRK融合遺伝子変異を有する固形がん患者のみで抗腫瘍効果を示した
・ラロトレクチニブの推奨用量は乳児、幼児など年齢に関係なく1日2回ラロトレクチニブ100mg/m2である
・ラロトレクチニブのグレード3の主な治療関連有害事象(TRAE)はアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)上昇、好中球減少、吐き気である

2018年3月29日、医学誌『Lancet Oncology』にてNTRK融合遺伝子変異を有する小児固形がん患者に対するトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害薬であるラロトレクチニブ(larotrectinib)単剤療法安全性を検証した第I/II相試験(NCT02637687)の結果がUniversity of Texas Southwestern Medical Center・Theodore W Laetsch氏らにより公表された。

本試験は、生後1ヶ月より21歳までの局所進行性または転移性固形がん患者(N=24人)に対して1日2回ラロトレクチニブ100mgを投与する群(コーホート1)、1日2回ラロトレクチニブ150mgを投与する群(コーホート2)、1日2回ラロトレクチニブ100mg/m2を投与する群(コーホート3)の3群に振り分け、第I相段階における主要評価項目として用量制限毒性DLT)を含む安全性を検証した多施設共同オープンラベルの第I/II相試験である。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は4.5歳(1ヶ月-18歳)、その内訳は1ヶ月以上2歳未満29%(N=7人)、2歳以上12歳未満42%(N=10人)、12歳以上18歳未満29%(N=7人)。性別は男性50%(N=12人)、女性50%(N=12人)。Karnofsky Performance Statusは50-60%が4%(N=1人)、70-80%が33%(N=8人)、90-100%が63%(N=15人)。

原発腫瘍の種類は線維肉腫33%(N=8人)、それ以外の肉腫29%(N=7人)、甲状腺乳頭がん8%(N=2人)、その他29%(N=7人)。疾患診断時のがん進行状態は局所または切除不能46%(N=11人)、転移性33%(N=8人)、その他21%(N=5人)。前治療歴は全身療法71%(N=17人)、手術71%(N=17人)、放射線療法33%(N=8人)。前治療歴数は0が29%(N=7人)、1が29%(N=7人)、2以上が42%(N=10人)。NTRK融合遺伝子タイプはNTRK1が38%(N=9人)、NTRK2が4%(N=1人)、NTRK3が29%(N=7人)、変異なし13%(N=3人)、不明17%(N=4人)。

上記背景を有する患者に対する主要評価項目である安全性の結果は下記の通りである。主要評価項目である用量制限毒性(DLT)はコーホート3のNTRK融合遺伝子変異なし神経芽細胞腫患者1人で、グレード3のアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇を発症した。なお、本患者以外で用量制限毒性(DLT)、治療関連有害事象(TRAE)のために投与中止になった患者は1人もいなかった。以上の結果より、第II相推奨用量はコーホート3の用量である1日2回ラロトレクチニブ100mg/m2になった。

第II相推奨用量であるコーホート3(N=9人)における治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。グレード1または2の治療関連有害事象(TRAE)は少なくとも89%(N=8人)の患者で発症し、その内訳はアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)上昇44%(N=4人)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇22%(N=2人)、白血球減少22%(N=2人)、好中球減少22%(N=2人)、嘔吐22%(N=2人)、吐き気22%(N=2人)、貧血22%(N=2人)、便秘22%(N=2人)などである。

グレード3の治療関連有害事象(TRAE)は少なくとも22%(N=2人)の患者で発症し、その内訳はアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)上昇11%(N=1人)、好中球減少11%(N=1人)、吐き気11%(N=1人)である。

その他評価項目である客観的奏効率ORR)は本試験に登録された24人の患者の内22人で測定可能であり、その結果は下記の通りである。22人の患者の内14人の患者(64%,95%信頼区間:41-83%)で客観的奏効率(ORR)を示した。

なお、奏効を示した14人の患者の内NTRK融合遺伝子変異を有する患者は14人(93%,95%信頼区間:68–100%)、客観的奏効率(ORR)の内訳は完全奏効(CR)4人、部分奏効(PR)10人であり、NTRK融合遺伝子変異を有する患者のみで客観的奏効率(ORR)を達成した。

以上の第I/II相試験の結果よりTheodore W Laetsch氏らは下記のように結論を述べている。”NTRK融合遺伝子変異を有する小児固形がん患者に対するトロポミオシン受容体キナーゼ(TRK)阻害薬であるラロトレクチニブは忍容性があり、抗腫瘍効果も良好でした。そして、乳児、幼児など年齢に関係なく第II相推奨用量は1日2回ラロトレクチニブ100mg/m2として本試験により決定しました。

Larotrectinib for paediatric solid tumours harbouring NTRK gene fusions: phase 1 results from a multicentre, open-label, phase 1/2 study(Lancet Oncology, DOI: https://doi.org/10.1016/S1470-2045(18)30119-0)

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