早期胃がん患者に対するヘリコバクター・ピロリ除菌、異時性胃がんの発生リスクを統計学的有意に低下する医学誌『The New England Journal of Medicine』より


  • [公開日]2018.03.30
  • [最終更新日]2018.03.30

2018年3月22日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて早期胃がんまたは内視鏡的切除後の高異型度腺腫患者に対する異時性胃癌予防としてのヘリコバクター・ピロリ除菌の有効性を検証した第III相試験(NCT02407119)の結果がNational Cancer Center・Il Ju Choi氏らより公表された。

本試験は、早期胃がんまたは内視鏡的切除後の高異型度腺腫患者(N=396人)に対して1日2回オメプラゾール20mg又は1日2回ラベプラゾール10mg+1日2回クラリスロマイシン500mg+1日2回アモキシシリン1000mgを7日間連続して服用するヘリコバクター・ピロリ除菌群(N=194人)、又はプラセボを服用するヘリコバクター・ピロリ非除菌群(N=202人)に1:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目であるフォローアップ期間1年以降後の内視鏡検査により異時性胃がんの発生率、フォローアップ期間3年時点での胃体部小彎における粘膜萎縮のベースライン時からの変化を比較検証した前向き二重盲検プラセボ対照の第III相試験である。

本試験の患者背景は下記の通りである。年齢中央値はヘリコバクター・ピロリ除菌群59.7歳、プラセボ群59.9歳。性別はヘリコバクター・ピロリ除菌群で男性72.7%(N=141人)、プラセボ群で男性77.7%(N=157人)。胃がんの家族歴割合はヘリコバクター・ピロリ除菌群で有りが19.6%(N=38人)、プラセボ群で有りが19.3%(N=39人)。アルコール歴はヘリコバクター・ピロリ除菌群で有りが55.2%(N=107人)、プラセボ群で有りが63.4%(N=128人)。喫煙歴はヘリコバクター・ピロリ除菌群で有りが41.2%(N=80人)、プラセボ群で有りが37.6%(N=76人)。

腫瘍径はヘリコバクター・ピロリ除菌群1.7cm、プラセボ群1.6cm。腫瘍深達度はヘリコバクター・ピロリ除菌群で粘膜89.7%(N=174人)、粘膜下層10.3%(N=20人)、プラセボ群で粘膜93.6%(N=189人)、粘膜下層6.4%(N=13人)。以上のように両群間の患者背景に大きな違いはなかった。

上記背景を有する患者に対するフォローアップ期間中央値5.9年時点における主要評価項目の結果は下記の通りである。異時性胃がんの発生率はヘリコバクター・ピロリ除菌群7.2%(N=12人)、プラセボ群13.4%(N=27人)、ヘリコバクター・ピロリ除菌群で異時性胃がんの発生リスクは50%(ハザード比:0.50,95%信頼区間:0.26~0.94,P=0.03)統計学的有意に減少することを示した。

また、生検により組織学的解析を行ったサブグループ(N=327人)におけるフォローアップ期間中央値3.0年時点における胃体部小彎における粘膜萎縮のベースライン時からの改善割合はヘリコバクター・ピロリ除菌群48.4%に対してプラセボ群15.0%、ヘリコバクター・ピロリ除菌群で統計学的有意な改善が確認された(P<0.001)。

一方の安全性として、味覚変化、下痢、目眩などの中等度の治療関連有害事象(TRAE)の発症率はヘリコバクター・ピロリ除菌群42.0%に対してプラセボ群10.2%、ヘリコバクター・ピロリ除菌群で統計学的有意な発症率が確認された(P<0.001)。なお、重篤な有害事象(SAE)を発症した患者は確認されておらず、追跡期間中に胃腸症状を治療するために処方された薬剤の使用率は両群間に大きな違いはなかった。

以上の第III相試験の結果よりIl Ju Choi氏らは以下のように結論を述べている。”早期胃がん患者さんに対するヘリコバクター・ピロリ除菌治療は、プラセボに比べて異時性胃がんの発生リスクは低下し、胃体部小彎における粘膜萎縮のベースライン時からの改善は良好であることを示しました。”

Helicobacter pylori Therapy for the Prevention of Metachronous Gastric Cancer()

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