2018年2月22日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてPIK3CA遺伝子ステータスが早期乳がん患者の予後に与える影響についてを検証したプール解析の結果がBreast International Group・Dimitrios Zardavas氏らより公表された。

本試験は、PIK3CA遺伝子ステータスが収集されている19の臨床試験より10,319人の早期乳がん患者を対象に、PIK3CA遺伝子変異型患者とPIK3CA遺伝子野生型患者に分け、主要評価項目として無浸潤疾患生存期間(IDFS)、副次評価項目として遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間OS)などを検証した試験である。

本試験に登録された患者のPIK3CA遺伝子ステータスは下記の通りである。本試験に登録された患者全体の内32%(N=3281人)の患者がPIK3CA遺伝子変異型であり、変異が生じてる部位の割合としてはKinase domain 52%(N=1705人)、Helical domain 39%(N=1263人)。また、PIK3CA遺伝子変異型の患者背景の特徴は高齢者、エストロゲン受容体(ER)陽性、腫瘍が小さいなどの特徴を有していた。

PIK3CA遺伝子ステータス別の患者背景は下記の通りである。年齢中央値は野生型58.4歳、変異型61.0歳。年齢50歳以下の患者割合は野生型75.1%(N=1174人)に対して変異型24.9%(N=594人)、年齢51歳以上の患者割合は野生型66.1%(N=5222人)に対して変異型33.9%(N=2675人)。閉経状態は閉経前期は野生型76.5%(N=1174人)に対して変異型23.5%(N=361人)、閉経周辺期は野生型76.5%(N=1174人)に対して変異型23.5%(N=361人)、閉経後期は野生型65.0%(N=4230人)に対して変異型35.0%(N=2282人)。

乳がんサブタイプはHER2陰性エストロゲン受容体(ER)陰性患者の割合は野生型82.5%(N=790人)に対して変異型17.5%(N=167人)、HER2陰性エストロゲン受容体(ER)陽性患者の割は野生型63.5%(N=4313人)、変異型36.5%(N=2475人)、HER2陽性エストロゲン受容体(ER)陰性患者の割合は野生型77.7%(N=1540人)に対して変異型22.3%(N=441人)。

原発腫瘍サイズ(T因子)は、T0の患者割合は野生型16.7%(N=1人)に対して変異型83.3%(N=5人)、T1の患者割合は野生型65.4%(N=2861人)に対して変異型34.6%(N=1511人)、T2の患者割合は野生型69.8%(N=3510人)に対して変異型30.2%(N1516人)、T3の患者割合は野生型74.3%(N=423人)に対して変異型25.7%(N=146人)、T4の患者割合は野生型63.0%(N=92人)に対して変異型37.0%(N=54人)。

以上の背景を有するPIK3CA遺伝子ステータス別の無浸潤疾患生存期間(IDFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)の結果は下記の通りである。以下、単変量解析、多変量解析別により結果を記載する。なお、多変量解析では年齢、原発腫瘍サイズ(T因子)、リンパ節転移N因子)、乳がんサブタイプなどの患者背景因子を調整している。

単変量解析による主要評価項目である無浸潤疾患生存期間(IDFS)はPIK3CA遺伝子野生型よりも変異型で統計学的有意に延長した(ハザードリスク比0.77,95%信頼区間:0.71-0.84,P<0.001)。また、副次評価項目である遠隔無病生存期間(DDFS)もPIK3CA遺伝子野生型よりも変異型で統計学的有意に延長(ハザードリスク比0.79,95%信頼区間:0.72-0.86,P<0.001)、全生存期間(OS)もPIK3CA遺伝子野生型よりも変異型で統計学的有意に延長(ハザードリスク比0.90,95%信頼区間:0.82-0.99,P=0.027)。

多変量解析による主要評価項目である無浸潤疾患生存期間(IDFS)はPIK3CA遺伝子野生型よりも変異型で統計学的有意に延長した(ハザードリスク比0.88,95%信頼区間:0.78-1.00,P=0.043)。しかし、副次評価項目である遠隔無病生存期間(DDFS)はPIK3CA遺伝子野生型に対して変異型で統計学的な有意な延長はせず(ハザードリスク比0.88,95%信頼区間:0.77-1.00,P=0.054)、全生存期間(OS)もPIK3CA遺伝子野生型に対して変異型で統計学的有意な延長はしなかった(ハザードリスク比0.98,95%信頼区間:0.86-1.12,P=0.799)。

また、単変量解析により乳がん診断後の期間別の無浸潤疾患生存期間(IDFS)についても検証しており、診断後0-5年、5-10年、10年以上別の無浸潤疾患生存期間(IDFS)はそれぞれ下記の通りである。診断後0-5年の無浸潤疾患生存期間(IDFS)はPIK3CA遺伝子野生型よりも変異型で統計学的有意に延長(ハザードリスク比0.73,95%信頼区間:0.66-0.81,P<0.001)、診断後5-10年の無浸潤疾患生存期間(IDFS)はPIK3CA遺伝子野生型よりも変異型で統計学的有意に延長(ハザードリスク比0.82,95%信頼区間:0.68-0.99,P=0.039)、診断後10年以上の無浸潤疾患生存期間(IDFS)はPIK3CA遺伝子野生型に対して変異型で統計学的な有意な延長はしなかった(ハザードリスク比1.15,95%信頼区間:0.84-1.58,P=0.380)。

診断後の期間以外の患者背景別の因子として、PIK3CA遺伝子変異型患者の乳がんサブタイプ別、PIK3CA遺伝子変異の生じている部位別、年齢別の無浸潤疾患生存期間(IDFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)も検証しており、それぞれの結果は下記の通りである。

PIK3CA遺伝子変異型患者の乳がんサブタイプ別ではHER2陽性エストロゲン受容体(ER)陰性患者と全生存期間(OS)の相関性のみが確認され、それ以外のサブタイプでの無浸潤疾患生存期間(IDFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)の相関性は確認されなかった(IDFS:P=0.16,DDFS:P=0.39)。なお、PIK3CA遺伝子変異HER2陽性エストロゲン受容体(ER)陰性患者の全生存期間(OS)は統計学的有意に悪化することが示されている(P=0.04)。

PIK3CA遺伝子変異型患者のPIK3CA遺伝子変異の生じている部位別では、Kinase domain、Helical domain別の無浸潤疾患生存期間(IDFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)の相関性は何も確認されなかった(IDFS:P=0.74,DDFS:P=0.92,OS:P=0.65)。

PIK3CA遺伝子変異型患者の乳がん診断時の年齢別(50歳以下または51歳以上で区分)では、無浸潤疾患生存期間(IDFS)、全生存期間(OS)の相関性が確認され(IDFS:P=0.032,OS:P<0.001)、遠隔無病生存期間(DDFS)の相関性は確認されなかった(DDFS:P=0.20)。なお、乳がん診断時の年齢50歳以下のPIK3CA遺伝子変異型患者は生存率が良好であることを示した。

以上の結果よりDimitrios Zardavas氏らは以下のように結論を述べている。”PIK3CA遺伝子変異型の早期乳がん患者は、無浸潤疾患生存期間(IDFS)、遠隔無病生存期間(DDFS)、全生存期間(OS)が良好であることがプール試験の結果より証明されました。しかし、PIK3CA遺伝子ステータス以外の予後因子の背景を調整することで、PIK3CA遺伝子変異が早期乳がん患者の予後に与える影響は弱まります。”

Tumor PIK3CA Genotype and Prognosis in Early-Stage Breast Cancer: A Pooled Analysis of Individual Patient Data(DOI: 10.1200/JCO.2017.74.8301 Journal of Clinical Oncology – published online before print February 22, 2018)

×

この記事に利益相反はありません。

人気記事

がんの臨床試験(治験)をお探しの方へ

がん情報サイト「オンコロ」ではがんの臨床試験(治験)情報を掲載しています。

掲載中の臨床試験(治験)情報はこちら » 臨床試験(治験)とは »

オンコロリサーチ

患者さんやそのご家族のがんに関わるあらゆる声を調査(リサーチ)するための調査を実施しております。

実施中の調査一覧はこちら »

無料メルマガ配信中

メルマガ独自のコラム、臨床試験情報、最新情報を毎週配信しています。ぜひご登録ください。

メルマガ登録はこちら »