再発難治性B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)に対するCD19キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子治療、全生存期間(OS)12.9ヶ月を示す医学誌『The New England Journal of Medicine』より


  • [公開日]2018.03.16
  • [最終更新日]2018.03.16

2018年2月1日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて再発難治性B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)患者に対するがん化したB細胞の表面に発現しているタンパク質であるCD19という分子を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を用いた遺伝子治療の有効性安全性を検証した長期フォローアップ結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Jae H. Park氏らより公表された。

本試験は、前治療に対して再発または難治性を示したB細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)患者(N=53人)に対してCD19 28z-キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子治療を実施し、主要評価項目として安全性、副次評価項目として有効性を検証したシングルアームオープンラベルの第I相試験である。

なお、本試験に参加した患者の前治療は2レジメン40%(N=21人)、3レジメン25%(N=13人)、4レジメン以上36%(N=19人)であり、D19 28z-キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子治療をが実施された患者の治療ラインは3次治療以降が68%(N=36人)を占めていた。

以上の背景を有する患者に対してCD19 28z-キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子治療を実施した結果、下記の通りである。副次評価項目である有効性は83%(95%信頼区間:70-92)の患者(N=44人)で完全奏効(CR)を達成し、かつ完全奏効(CR)を達成した患者した中で微小残存病変MRD)陰性率は67%(95%信頼区間:52-80)を示した。

そして、フォローアップ期間中央値29ヶ月(1-65)時点における無イベント生存期間(EFS)中央値は6.1ヶ月(95%信頼区間:5.0-11.5)、全生存期間OS)中央値は12.9ヶ月(95%信頼区間:8.7-23.4)を示し、微小残存病変(MRD)陰性を示した患者は微小残存病変(MRD)陽性または奏効を示さなかった患者に比べて無イベント生存期間(EFS)、全生存期間(OS)を統計学的有意に延長させていた。

また、骨髄浸潤を認めない(骨髄芽球比率が5%未満)患者における無イベント生存期間(EFS)中央値は10.6ヶ月(95%信頼区間:5.9-未到達)、全生存期間(OS)中央値は20.1ヶ月(95%信頼区間:8.7-未到達)であった。そして、骨髄浸潤を認める(骨髄芽球比率が5%以上または節外病変有り)患者の場合、骨髄浸潤を認めない(骨髄芽球比率が5%未満)患者に比べてサイトカイン放出症候群CRS)、神経障害の発症率が高かった。

一方、主要評価項目である安全性はキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子治療特有の有害事象(AE)であるサイトカイン放出症候群(CRS)、神経障害が確認された。全グレードのサイトカイン放出症候群(CRS)は85%(95%信頼区間:72-93)の患者(N=43人)で確認され、その内グレード3以上は26%(95%信頼区間:15-40)の患者(N=14人)で確認された。

なお、サイトカイン放出症候群(CRS)はトシリズマブ(商品名アクテムラ)、グルココルチコイドなどの対処療法により管理可能であった。ただし、1人の患者は治療5日後の重度サイトカイン放出症候群(CRS)、臓器障害のために死亡している。

グレード2の神経障害は2%(N=1人)、グレード3は36%(N=19人)、グレード4は6%(N=3人)の患者で確認され、グレード5は確認されなかった。

以上の第I相試験の結果より、Jae H. Park氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性B細胞急性リンパ芽球性白血病患者(N=53人)に対してCD19 28z-キメラ抗原受容体(CAR)遺伝子治療を実施することで、全ての患者群における全生存期間(OS)中央値は12.9ヶ月、骨髄浸潤を認めない(骨髄芽球比率が5%未満)患者では20.1ヶ月と長期的な有効性が本試験により証明されました。”

Long-Term Follow-up of CD19 CAR Therapy in Acute Lymphoblastic Leukemia(N Engl J Med 2018; 378:449-459 DOI: 10.1056/NEJMoa1709919)

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