2017年11月20日、医学誌『Cancer』にてがんと診断された患者における心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症率に関する長期探索的試験の結果がNational University of MalaysiaのCaryn Nei Hsien氏らの研究により報告された。

本試験は、がんと診断された患者(N=469人)の中から診断後1ヶ月以内に重篤な精神的ストレスを発症した患者に対しては診断後6ヶ月後、4年後の頻度で外傷後ストレス診断尺度(SCID)を用いて再検査、重篤な精神的ストレスを発症しなかった患者に対しては4年後に外傷後ストレス診断尺度(SCID)を用いて再検査を実施し、がん患者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症の経過、予測因子を検証した前向き試験である。

本試験の結果、がんと診断された患者の診断後6ヶ月時点における心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症率は21.7%(N=44/203人)、診断後4年時点における心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症率は6.1%(N=15/245人)であった。

また、他のがん種に比べて乳がんである場合、診断後6ヶ月時点における心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症率は3.68倍高いことが判った。なお、診断後4年時点における心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症率においては他のがん種と乳がんの間に差異はなかった。

以上の試験結果より、がん患者における心的外傷後ストレス障害(PTSD)発症率は時間の経過と共に減少するが、約3分の1の患者では診断直後よりも診断4年経過時点の方が悪化することが証明された。そして、がん患者の心的外傷後ストレス障害(PTSD)を軽減させるためには、心理的ストレスの障害度合いに応じた早期介入の重要性が必要であることが本試験により示唆された。

本試験の結果を受けて、本研究論文のファーストオーサーであるNational University of MalaysiaのCaryn Nei Hsien氏は以下のように述べている。”多くの患者さんはがんの闘病生活を乗り越えるためには楽観的、前向きな気持ちを持ち続ける精神が大切であると考えています。そのような患者さんにとって、精神的な助けを自分以外の誰かに求めるようになった時、彼彼女らの精神的な弱さを認めたことを意味します。しかし、このような助けを求めることはなにも間違ってはいません。むしろ、他者に対して精神的な助けを求める行為は心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状の一種である鬱、不安などを軽減させる方法であると彼彼女らが気づくことが大切です。”

がんの治療を終えた患者さんにとって、その後の生活は常に再発の恐怖を感じた生活になり得るであろう。そのような環境下でも安寧な生活を続けるために、がん体験の過去を思い出すきっかけとなり得る主治医・その他医師との面会、病院への再来院などをする行為を拒む可能性がある。

しかし、そのような行為は心的外傷後ストレス障害(PTSD)をはじめとした病気の発見を遅らせ、治療介入の遅れにより症状を悪化させる危険性がある。以上のことからも、がん患者に対する心理的側面からの定期的な観察、治療介入の必要性は高いと言えるだろう。

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