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がん関連血栓症予防薬として血液凝固系Xa阻害薬リクシアナやイグザレルトの可能性

[公開日] 2017.12.18[最終更新日] 2017.12.18

目次

静脈血栓塞栓症は、がん及びその治療において、頻度の高い合併症であり、その治療は簡単ではない。現在がんがん関連静脈血栓塞栓症の標準治療は低分子ヘパリンだが、近年登場したDOAC(直接経口抗凝固薬)の役割は明らかになっていない。治療関連有害事象としての出血が少ない抗凝固薬として、心血管系疾患では急速に普及しているDOACが、がん関連静脈血栓において低分子ヘパリンに代わることができるのだろうか。

ASHで発表された抗凝固薬リクシアナのがん血栓症に対するHokusai-VTE CANCER試験の結果

2017年12月13日の第一三共株式会社のニュースリリースによれば、抗凝固剤エドキサバン(商品名リクシアナ錠)による、がん合併静脈血栓塞栓症(VTE)患者を対象としたHokusai-VTE CANCER試験の結果において、リクシアナが標準治療薬である低分子量ヘパリンのダルテパリン(国内未承認)に対して有効性および安全性に係わる主要評価項目において非劣性を達成した。 この結果は、米国アトランタで開催された第59回米国血液学会(ASH)年次総会のlate breaking sessionで発表されると共に、New England Journal of Medicineにオンライン掲載されている。 Hokusai-VTE CANCERは、欧米を中心とする海外13ヵ国において、がんを合併したVTE患者1,050名を対象に、1日1回経口投与のリクシアナまたは1日1回皮下注射のダルテパリンを12ヵ月間投与し、両剤の有効性(VTEの再発)および安全性(重大な出血)を比較した試験。 主要評価項目(VTEの再発および重大な出血の複合発現率)において、リクシアナ群は12.8%(522名中67名)、ダルテパリン群は13.5%(524名中71名)、リスク差(エドキサバン群の発現率-ダルテパリン群の発現率)は-0.7%となり、リクシアナのダルテパリンに対する非劣性が検証された。リスク差(-0.7%)の内訳は、VTEの再発のリスク差は-3.4%、重大な出血のリスク差は2.9%であった。特に重篤度の高い重大な出血(重篤度カテゴリー3~4)の発現数はリクシアナ群で12名、ダルテパリン群で12名であった。 VTEは、がん患者において2番目に多い死亡原因となっている。現在、がんを合併したVTE患者の欧米における治療ガイドラインは、標準治療として低分子量ヘパリン(皮下注射)の6ヵ月以上の投与を推奨しているが、服薬アドヒアランス上の未充足ニーズがある。

類薬イグザレルトの予防効果と安全性も発表

ASHでは、同類薬剤のリバーロキサバン(商品名イグザレルト)のがん合併静脈血栓塞栓症の予防検証試験(Select-D)の結果も発表。治療後6ヵ月間のVTEの発現率はイグザレルトを受けた患者の4%、ダルテパリンを受けた患者の11%であった。しかしながら、イグザレルトを投与された患者203人中11人に重大な出血が認められ、および臨床的に関連する出血事象(25人)と顕著な増加があった(ダルテパリンでは、203名中前者6人、後者6人)。 ※リクシアナの試験ではVTE発現および重大な出血複合発現率を評価、イグザレルトはVER発現と重大な出血は別々に評している点に注意 Edoxaban for the Treatment of Cancer-Associated Venous Thromboembolism(N Engl J Med..2017. Dec 12) Anticoagulation Therapy in Selected Cancer Patients at Risk of Recurrence of Venous Thromboembolism: Results of the Select-D Pilot Trial(ASH2017, Abstract 625)
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医療ライター 加藤 テイジ

薬学部卒、製薬会社勤務ののち医薬系広告代理店を経て、現在は医療者向け情報メディアの企画・編集の担当者として勤務。薬剤師、医学英語検定取得

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