BRCA遺伝子変異を有する進行性乳がんに対するPARP阻害剤タラゾパリブ、無増悪生存期間(PFS)を有意に延長する第40回サンアントニオ乳癌学会議(SABCS2017)より


  • [公開日]2017.12.15
  • [最終更新日]2017.12.15

2017年12月5から9日までアメリカ合衆国・サンアントニオ州で開催されている第40回サンアントニオ乳癌学会議(SABCS2017)にて、生殖細胞系BRCA遺伝子変異陽性を有するHER2陰性乳がん患者に対するポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤であるタラゾパリブ単剤療法有効性を検証した第III相のEMBRACA試験(NCT01945775)の結果が公表された。

EMBRACA試験とは、生殖細胞系BRCA1/2遺伝子変異陽性を有する進行性乳がん患者(N=431人)に対してタラゾパリブ単剤療法を投与する群(N=287人)、主治医の選択した治療法(カペシタビン、エリブリン、ゲムシタビン、ビノレルビンのいずれか)を投与する群(N=144人)に2:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)を比較検証した国際多施設共同のオープンラベルの第III相試験である。

本試験の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はタラゾパリブ単剤療法群8.6ヶ月に対して主治医の選択した治療法群5.6ヶ月、タラゾパリブ単剤療法群で病勢進行または死亡のリスク(PFS)が46%(ハザード比:0.542、P < .0001)統計学的有意に減少することが証明された。

また、副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はタラゾパリブ単剤療法群62.6%に対して主治医の選択した治療法群27.2%、奏効率もタラゾパリブ単剤療法群で統計学的有意に良好な結果であった(ハザード比:4.99、P < .0001)。なお、タラゾパリブ単剤療法群において12人の患者が完全奏効(CR)を達成していた。

その他副次評価項目である全生存期間(OS)中央値は、両群ともに未到達であった。しかし、主治医の選択した治療法群よりもタラゾパリブ単剤療法群で改善傾向が見られ、死亡のリスク(OS)が24%減少することが証明された。

一方の安全性としては、グレード3から4の有害事象(AE)はグレード3から4の血液およびリンパ系有害事象(AE)はタラゾパリブ単剤療法群55%、主治医の選択した治療法群39%で発症した。また、グレード3から4の胃腸障害や皮膚および皮下組織障害系の有害事象(AE)発症率は主治医の選択した治療法群に比べてタラゾパリブ単剤療法群で少なかった。グレード3から4の重篤な有害事象(AE)としては、タラゾパリブ単剤療法群26%、主治医の選択した治療法群25%で確認された。また、死亡に至った有害事象(AE)発症率はそれぞれ2.1%、3.2%であった。

以上のEMBRACA試験の結果を受けて、テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター・乳がん診療部門の教授であるJennifer Litton氏は以下のように述べている。"第III相の大規模試験であるEMBRACA試験において主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を達成したことを喜ばしく思います。トリプルネガティブ乳がんHR陽性乳がんなどのサブタイプに関係なくタラゾパリブは治療効果を示しました。本試験により主治医の選択した標準治療に比べて1日1回の経口投与可能なタラゾパリブが無増悪生存期間(PFS)をはじめ有効性が優れることが証明されましたので、生殖細胞系BRCA遺伝子変異陽性を有する進行性乳がん患者さんに対して新しい治療選択肢を届けられることになるでしょう。本試験のデータ解析がさらに進み、全生存期間(OS)の結果が早期に出ることを我々は楽しみにしております。"

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