抗PD-1/PD-L1抗体薬とはがん細胞を攻撃するT細胞の働きにブレーキをかけている蛋白質であるPD-1とPD-L1の結合を阻止し、PD-L1により抑えられていたT細胞の働きを活性化することで抗腫瘍効果を出すメカニズムの薬である。

2017年11月15日現在、世界で発売されている抗PD-1/PD-L1抗体薬はニボルマブ(商品名オプジーボ;以下オプジーボ)、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)、アテゾリズマブ(商品名テセントリク)、アベルマブ(商品名バベンチオ)、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)の5剤あり、第III相試験が進行中である抗PD-1/PD-L1抗体薬はREGN-2810、PDR001、INCSHR-1210の3剤あり、第II相試験が進行中である抗PD-1/PD-L1抗体薬は9剤もある。

このように抗PD-1/PD-L1抗体薬は今後も複数の薬剤が開発されているが、臨床での注目は抗PD-1/PD-L1抗体薬そのものよりも抗PD-1/PD-L1抗体薬と併用する薬は何か?である。

がん免疫学会(SITC)役員の1人であるSamir Khleif氏によると、現在進行中の抗PD-1/PD-L1抗体薬関連の臨床試験は1502本あるがその内1105本が抗PD-1/PD-L1抗体薬と他の作用機序の薬を併用したコンビネーション試験である。

そこで本記事では、2017年11月8日から11月12日よりアメリカ合衆国・メリーランド州で開催されている第32回癌免疫治療学会(SITC)にて発表されたオプジーボに関する最新のコンビネーション試験を2つ紹介する。

抗PD-1抗体薬オプジーボ+IDO1酵素阻害薬BMS-986205の併用療法

インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)は、制御性T細胞の発生を促進させ、エフェクターT細胞の活性化を阻害することで抗腫瘍免疫応答を調節する主要な免疫抑制酵素である。経口IDO1酵素阻害薬であるBMS-986205はIDO1酵素を阻害することで効果的な抗腫瘍免疫応答を回復させ、抗腫瘍効果を発揮する。

2017年11月8日から11月12日よりアメリカ合衆国・メリーランド州で開催されている第32回癌免疫治療学会(SITC)にて、複数の前治療歴のある進行性膀胱がん、子宮頸がん患者などに対するオプジーボ+IDO1酵素阻害薬であるBMS-986205併用療法を投与し、主要評価項目である抗腫瘍効果を検証した第I/IIa試験の結果が公表された。

本試験の結果、進行性膀胱がん患者(N=25人)に対するオプジーボ+BMS-986205併用療法の客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)はそれぞれ32%、44%であった。そして、進行性子宮頸がん患者(N=22人)に対するオプジーボ+BMS-986205併用療法の客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)はそれぞれ14%、64%であった。

また、本試験では抗PD-1/PD-L1抗体薬の効果予測因子であるPD-L1発現率別の客観的奏効率(ORR)を検証しており、PD-L1発現率1%以上進行性膀胱がん患者(N=13人)の客観的奏効率(ORR)は46%、PD-L1発現率1%以上進行性子宮頸がん患者(N=12人)の客観的奏効率(ORR)は25%であった。一方、PD-L1発現率1%未満の進行性膀胱がん患者(N=9人)の客観的奏効率(ORR)は22%、PD-L1発現率1%未満の進行性子宮頸がん患者(N=7人)の客観的奏効率(ORR)は0%であった。

以上のオプジーボ+BMS-986205併用療法の有効性の結果を受けて、治験医師であるシカゴ大学医学部准教授・Jason Luke氏は以下のように述べている。”本試験により抗PD-1抗体薬オプジーボ+IDO1酵素阻害薬BMS-986205の奏効が確認され、両剤を併用する意義の理解が進みました。さらに、本併用療法におけるキヌレニンの減少と腫瘍におけるCD8陽性T細胞の増加は他の進行性がんに対しても有効であることを示唆しています。”

抗PD-1抗体薬オプジーボ+CD122バイアスアゴニストNKTR-214の併用療法

CD122バイアスアゴニスト(サイトカイン)であるNKTR-214は内因性の腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)として知られているがんを攻撃するT細胞、NK細胞を刺激し、増殖させるようように設計されている。NKTR-214がCD8⁺ エフェクターT細胞、NK細胞の免疫細胞表面に存在するCD122特異的受容体に結合することでがんを死滅させる免疫細胞が働くことで抗腫瘍免疫応答を発揮させる。

2017年11月8日から11月12日よりアメリカ合衆国・メリーランド州で開催されている第32回癌免疫治療学会(SITC)にて、進行性悪性黒色腫(メラノーマ)患者、腎細胞がん(RCC)、そして非小細胞肺がん(NSCLC)に対する一次治療または二次治療としてオプジーボ+NKTR-214併用療法を投与し、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)、有害事象(AE)発症率、容量制限毒性(DLT)を検証した第I/II相のPIVOT-02試験(NCT02983045)の結果が公表された。

本試験に登録された患者の内訳としては悪性黒色腫(メラノーマ)患者11人、腎細胞がん(RCC)患者22人、非小細胞肺がん(NSCLC)患者5人の合計38人であった。患者背景としては、年齢中央値61歳、男性78.9%、1度の前治療歴のある患者が3分の2を占めており、ECOG Performance(PS)0の患者が65.8%であった。

上記背景の患者に対して2週間または3週間に1回の投与間隔でオプジーボとして240mgまたは360mg+ 2週間または3週間に1回の投与間隔で NKTR-214として0.003mg/kgまたは0.006mg/kg併用療法を投与した結果、主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は46%から75%であり、第II相試験推奨用量は3週間に1回の投与間隔でオプジーボ360mg+NKTR-214として0.006mg/kgに決定された。また、がん種別の客観的奏効率(ORR)は下記の通りである。

前治療歴のない悪性黒色腫(メラノーマ)患者(N=11人)における客観的奏効率(ORR)は完全奏効(CR)患者1人を含む64%であった。前治療歴のない腎細胞がん(RCC)患者(N=13人)、1度の前治療歴のある腎細胞がん(RCC)患者(N=7人)における客観的奏効率(ORR)はそれぞれ46%、14%であった。非小細胞肺がん(NSCLC)患者(N=4人)における客観的奏効率(ORR)は75%であった。

一方の安全性として、グレード1または2の最も一般的な治療関連有害事象(AE)としては疲労68%、インフルエンザ様症状60%、皮膚障害52%、掻痒32%、頭痛32%、下痢32%、関節痛24%、食欲減退12%が確認された。

以上のオプジーボ+NKTR-214併用療法の有効性、安全性の結果を受けて、本試験の治験責任医師であるテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンター・Adi Diab氏は以下のように述べている。”オプジーボ+NKTR-214の併用は免疫活性化を別の機序で促進させる新しい組み合わせです。また、忍容性もあり、NKTR-214を追加することでオプジーボなど抗PD-1抗体薬などに特徴的な免疫関連副作用も増加しません。”


この記事に利益相反はありません。

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