再発または難治性『胸腺腫』または『胸腺がん』に対してキイトルーダが有効な可能性第18回世界肺癌学会議


  • [公開日]2017.10.24
  • [最終更新日]2017.11.13[タグの追加] 2017/11/13

2017年10月15日から18日まで横浜で開催されていた第18回世界肺癌会議(WVLC)にて、再発または難治性胸腺上皮性腫瘍(TET)患者に対するペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法有効性安全性を検証した第II相試験(NCT02607631)の結果が発表された。胸腺上皮性腫瘍は、胸腺腫、胸腺がんおよび胸腺神経内分泌腫瘍に分類されるが、今回の試験対象は胸腺腫または胸腺がんとなっている。

本試験は、少なくとも1つ以上のプラチナ系抗がん剤レジメンの化学療法後に増悪した再発または難治性胸腺上皮性腫瘍患者33人(胸腺がん26人、胸腺腫7人)に対してキイトルーダ200mgを3週間に1回の間隔で投与し、主要評価項目であるRECIST1.1に基づく客観的奏効率(ORR)、副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)、CTCAE v4.0に基づく治療関連有害事象などを検証した第II相試験である。なお、過去1年以内に全身療法の必要な自己免疫疾患を有する患者、もしくは重篤な自己免疫疾患の既往歴のある患者は本試験より除外されている。

本試験のフォローアップ期間中央値11.8ヶ月(1.6-14.9ヶ月)、投与サイクル中央値8サイクル(1-22サイクル)時点における主要評価項目である客観的奏効率(ORR) は24.2%であった。奏効率の内訳としては部分奏効(PR)が24.2%(N=8人)、安定(SD)が51.5%(N=17人)、病勢進行(PD)が24.2%(N=8人)であった。副次評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値は胸腺がん、胸腺腫ともに6.1ヶ月であった。

一方安全性はというと、最も一般的な有害事象としては呼吸困難33.3%(N=11人)、胸壁痛30.3%(N=10人)、食欲不振21.2%(N=7人)、疲労21.2%(N=7人)であった。また、免疫関連副作用 (irAE)を含むグレード3以上の治療関連有害事象としては肝炎12.1%(N=4人)、心筋炎9.1%(N=3人)、重症筋無力症3.0%(N=1人)、抗好中球細胞質抗体関連急速進行性糸球体腎炎3.0%(N=1人)、大腸炎3.0%(N=1人)、亜急性ミオクローヌス3.0%(N=1人)などが発症した。

その他、免疫関連副作用 (irAE)のために24.2%(N=8人,胸腺がん3人,胸腺腫5人)の患者が治験中止になったが、副作用を発症した87.5%の患者(N=7人)はコルチコイド大量療法、もしくはその他の支持療法により症状が管理できる状態であった。

バイオマーカー解析可能な腫瘍標本を有する患者54.5%(N=18人)の内、部分奏効(PR)を達成した4人全ての患者は、奏効を示さなかった患者に比較して50%以上もしくはそれ以上のPD-L1免疫染色スコアを有し、そしてPD-L1 RNA発現率が有意に高いことがわかった(p=0.0471)。

以上の試験結果より、再発または難治性胸腺上皮性腫瘍(TET)患者に対するキイトルーダ単剤療法の有効性が確認された。また、本試験では胸腺腫患者における免疫関連副作用 (irAE)がやや多く見られたが、その副作用を早期に発見し、管理することが胸腺上皮性腫瘍(TET)患者に対するキイトルーダの長期投与実現のために不可欠であることも証明された。

現在、プラチナ系抗がん剤レジメンの化学療法後に増悪した胸腺上皮性腫瘍(TET)患者に対する標準治療は存在しない。そのため、本試験でキイトルーダ単剤療法が再発難治性胸腺上皮性腫瘍(TET)の標準治療になり得ることが証明された意義は非常に大きいであろう。

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