2017年9月8日から12日までスペイン・マドリードで開催されている欧州臨床腫瘍学会(ESMO)にて、BRAF遺伝子変異を有するステージⅢ悪性黒色腫患者に対してBRAF阻害薬であるダブラフェニブ(商品名タフィンラー;以下タフィンラー)+MEK阻害薬であるトラメチニブ(商品名メキニスト;以下メキニスト)併用するアジュバント療法の有効性を検証した第Ⅲ相のCOMBI-AD試験(NCT01682083)の結果がドイツ・キール大学・皮膚科教授のAxel Hauschild氏より発表された。

本試験は、BRAF遺伝子変異を有するステージⅢ悪性黒色腫患者(N=870人)に対してタフィンラー+メキニスト併用療法群、またはプラセボ療法群に1:1に振り分け、主要評価項目である無再発生存期間(RFS)、副次評価項目である全生存期間(OS)、無遠隔転移生存期間(DMFS)、無再発生存(FFR)を検証した第Ⅲ相の無作為化二重盲検比較試験の結果である。

登録された患者背景としては870人の患者すべてがBRAF遺伝子変異を有しており、その内訳としてはBRAF V600E変異91%、V600K変異9%であった。また、その他背景としては組織学的に完全切除が確認されている、リンパ節転移を有するなどである。このような患者に対してタフィンラー150mgを1日2回、メキニス2mgを1日1回、またはタフィンラー+メキニスト併用療法群に準じた投与スケジュールのプラセボを12ヶ月間投与した。

本発表時点での試験フォローアップ期間中央値は2.8年、その結果は主要評価項目である再発または死亡のリスク(RFS)がプラセボ療法群に対してタフィンラー+メキニスト併用療法群で53%(ハザード比0.47、95%信頼区間:0.39–0.58)減少した。また、無再発生存リスク(RFS)と同様に副次評価項目である死亡リスク(OS)を43%、無遠隔転移死亡リスク(DMFS)を53%、無再発生存(FFR)リスクを53%減少した。

以上の有効性に関する結果に対して、Axel Hauschild氏はこのような見解を出している。”ステージⅢ悪性黒色腫患者に対するアジュバント療法としてのタフィンラー+メキニスト併用療法は最高の臨床結果を示した。プラセボ群に比較してこの併用療法は主要評価項目である無再発生存期間(RFS)を2倍も延長し、全生存期間(OS)も素晴らしい結果である。”

最後に本試験の安全性であるが、タフィンラー+メキニスト併用療法群で発症した有害事象は全体で41%、グレード3/4の有害事象は41%の患者で発症した。一方、プラセボ療法群ではそれぞれ88%、14%であった。また、薬物関連の有害事象により治療の継続が困難となった患者はタフィンラー+メキニスト併用療法群26%、プラセボ療法群3%であった。

以上の安全性に関する結果に対して、Axel Hauschild氏はこのような見解を出している。”タフィンラー+メキニスト併用療法の継続が困難となった患者数はステージⅣに比べてステージⅢ悪性黒色腫患者で少し多かった。この理由としては、ステージⅢ悪性黒色腫患者に対するタフィンラー+メキニスト併用療法を受けた患者の90%で病勢進行が見られず、試験の計画通り1年間の治療を完遂できたためであると考えられる。つまり、治療期間が長ければ長いほど、有害事象の発症率は高まるのである。有害事象の発症率こそ増加したものの、今回の試験で確認された有害事象は既出のものであり、概してステージⅢ悪性黒色腫患者に対するアジュバント療法としてのタフィンラー+メキニスト併用療法は忍容性がある。”

以上の有効性、安全性の結果より、BRAF遺伝子変異を有するステージⅢ悪性黒色腫患者に対するアジュバント療法としてのタフィンラー+メキニスト併用療法が新しい治療選択肢となり得ることが証明された。なお、本発表は『Best of ESMO 2017』に選ばれるほど注目度の高い演題であり、演者のAxel Hauschild氏以外にもESMO Melanoma Faculty CoordinatorのOlivier Michielin氏がこのようなコメントを述べているので、最後に紹介する。

”我々は何十年にも渡り、悪性黒色腫患者に対するアジュバント療法の開発に取り組んできました。例えば、先に開発されたインターフェロン療法は有効性が僅かながら毒性が非常に高いため、アジュバント療法として普及しませんでした。転機が訪れたのは、2016年の欧州臨床腫瘍学会(ESMO)。プラセボに比較したイピリムマブ(商品名ヤーボイ;以下ヤーボイ)の無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の優越性を証明した発表は革新的でした。しかし、インターフェロン療法と同様にヤーボイの毒性はかなり高いものでした。このように悪性黒色腫患者に対するアジュバント療法は免疫療法を中心に開発が進められてきたので、今回発表されたCOMBI-AD試験の結果は悪性黒色腫患者の半数を占めると考えられているBRAF遺伝子変異を有する患者の新しい治療選択肢となるでしょう。また、免疫治療薬と分子標的治療薬では生じる副作用のプロファイルが異なりますので、治療を選択をする時の一つの要因となるでしょう。”


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