2017年8月17日、AstraZeneca社とメルク・アンド・カンパニーは米国食品医薬品局(FDA)よりオラパリブ(商品名リンパルザ)の効能が新たに認められたことを自社プレスリリースで公表した。

認められた効能は「プラチナ製剤ベースの化学療法に対して完全奏効(CR)またはPR(部分奏効)を達成している再発卵巣上皮がん、卵管がん、原発性腹膜がんに対するメンテナンス療法」である。なお、本効能でオラパリブ(リンパルザ)を投与する際、BRCA遺伝変異の有無を考慮することなく投与できる。

本効能が承認された根拠は、2つの臨床試験の結果に基づいている。1つ目の臨床試験は、プラチナ製剤ベースの化学療法に対して完全奏効(CR)またはPR(部分奏効)達成後のBRCA遺伝変異陽性の卵巣がん、卵管がん、原発性腹膜がん患者295人に対してオラパリブ(リンパルザ)単剤を投与する群、またはプラセボ単剤を投与する群に分け、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を比較検証した第III相試験(SOLO-2;NCT00753545)である。

本試験の結果、プラセボ単剤群に比べてオラパリブ(リンパルザ)単剤群は病勢進行または死亡リスク(無増悪生存期間:PFS)を70%(ハザード比0.30、95%信頼区間:0.22-0.41、p<0.0001)減少した。また、無増悪生存期間(PFS)中央値は、プラセボ単剤群5.5ヶ月に対してオラパリブ(リンパルザ)単剤群19.1ヶ月と有意に延長した。

2つ目の試験は、プラチナ製剤ベースの化学療法に対して感受性が確認された卵巣がん、卵管がん患者265人にに対してオラパリブ(リンパルザ)単剤を投与する群、またはプラセボ単剤を投与する群に分け、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を比較検証した第II相試験(Study 19;NCT00753545)である。

本試験の結果、プラセボ単剤群に比べてオラパリブ(リンパルザ)単剤群は病勢進行または死亡リスク(無増悪生存期間:PFS)を65%(ハザード比0.35、95%信頼区間:0.25-0.49、p<0.0001)減少した。また、無増悪生存期間(PFS)中央値は、プラセボ単剤群4.8ヶ月に対してオラパリブ(リンパルザ)単剤群8.4ヶ月と有意に延長した。

また、オラパリブ(リンパルザ)の安全性については、両試験で20%以上の患者で発症が見られた主な副作用とグレード3/4の主な副作用を下記表に示している。

両試験で共通して発症した副作用は貧血、悪心、嘔吐、下痢、疲労、食欲減退、頭痛であった。副作用の発症により1つ目の臨床試験(SOLO-2)では25%の患者でオラパリブ(リンパルザ)の減量、2つ目の臨床試験(Study 19)では15%の患者でオラパリブ(リンパルザ)の減量が実施されたことから、臨床でも副作用に応じて用量調整が必要であると筆者は考える。

以上2つの臨床試験の有効性と安全性が評価され、オラパリブ(リンパルザ)は再発卵巣上皮がん、卵管がん、原発性腹膜がんに対するメンテナンス療法として米国食品医薬品局(FDA)よりその効能が認められた。

これまで、卵巣がんでの維持化学療法の有用性は化学療法、ホルモン剤など複数の治療法でランダム化比較試験(RCT)が実施されたが、全生存期間(OS)の延長に寄与した報告はない。もちろん、オラパリブ(商品名リンパルザ)も対照群に対して全生存期間(OS)を統計学的有意に延長することを証明したわけではない。

しかし、この度オラパリブ(商品名リンパルザ)が取得した効能は、1日8回服用が必要なカプセル剤でなく1日2回の服用で十分なタブレット剤に対して認められた。有効性、安全性だけでなく利便性も兼ね備えたオラパリブ(リンパルザ)だけに、メンテナンス療法での有用性を確立し、卵巣がんの治療成績向上に貢献することを筆者は期待する。


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