悪性黒色腫と頭頸部がん ニボルマブのがん免疫療法に力を貸すIDO1阻害薬Epacadostatの有用性 ASCO2017


  • [公開日]2017.08.14
  • [最終更新日]2017.11.30[タグの追加] 2017/11/13

がん免疫療法の併用パートナーとしてインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)阻害薬の有用性を示すデータが少しずつ積み上がってきている。特定の進行固形がん、およびリンパ腫患者を対象として、IDO1阻害薬epacadostat(INCB024360)を免疫チェックポイント阻害薬の一つであるニボルマブ(商品名オプジーボ)に併用投与した際の有効性安全性を評価するECHOプログラムで臨床試験が進められており、その中で、第1/2相単群試験(ECHO-204、NCT02327078)では悪性黒色腫と頭頸部扁平上皮がん患者で持続的奏効が得られ、本プログラムをさらに進める根拠に重みがついた。2017年6月2日から5日開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO)で中間解析結果が発表された。

ニボルマブ2週ごとの静注に1日2回の内服で実現する併用療法

ECHO-204は、悪性黒色腫や頭頸部扁平上皮がん、非小細胞肺がん、大腸がん、卵巣がん、非ホジキンリンパ腫やホジキンリンパ腫などの患者を対象とする第1相の用量漸増試験、および第1相で決定したEpacadostatの推奨用量でニボルマブと併用投与する第2相試験からなり、第2相試験ではニボルマブ240mgを2週ごとに静注し、Epacadostat は100mg、または300mgを1日2回経口投与した。

悪性黒色腫の奏効率63%、頭頸部扁平上皮がんの奏効率23%

悪性黒色腫患者の解析対象40例中、完全奏効(CR)が2例、部分奏効(PR)が23例に認められ、奏効率は63%(25/40例)、奏効持続期間の最長は41週を超え、解析時点で100%(25/25例)の奏効が持続していた。病勢安定SD)の10例を含めた病勢コントロール率DCR)は88%(35/40例)であった。

Epacadostatの用量別奏効率は、100mg併用群が100%(6/6例がPR)、300mg併用群が56%(19/34例、うちCRが2例、PRが17例)、用量別DCRはそれぞれ100%(6/6例)、85%(29/34例)であった。

頭頸部扁平上皮がんの解析対象31例中、完全奏効(CR)が1例、部分奏効(PR)が6例に認められ、奏効率は23%(7/31例)、奏効持続期間の最長は32週を超え、解析時点で100%(8/8例)の奏効が持続していた。病勢安定の12例を含めた病勢コントロール率(DCR)は61%(19/31例)であった。

Epacadostatの用量別奏効率は、100mg併用群が14%(1/7例がPR)、300mg併用群が25%(6/24例、うちCRが1例、PRが5例)、用量別DCRはそれぞれ29%(2/7例)、71%(17/24例)であった。

なお、ニボルマブとEpacadostat の併用療法で難治性卵巣がん、または大腸がんの患者集団での有効性は認められなかった。

本併用療法で用量制限毒性はなし、安全性解析対象は他のがん種も含め計266例

ECHO-204の第1相用量漸増試験では、Epacadostatの用量を順次増量してニボルマブと併用投与した36例において用量制限毒性DLT)は認められなかった。第2相試験の登録230例のうち、Epacadostatの100mg1日2回併用群には69例、300mg1日2回併用群には161例が登録され、最も発現率が高かった治療関連有害事象は発疹(Epacadostat100mg併用群35%、300mg併用群32%)であった。そのうちグレード3からグレード4で最も発現率が高かった事象も発疹(各10%、15%)であった。治療関連死は報告されておらず、治療中止理由となった治療関連有害事象の発現率はEpacadostatの100mg併用群が6%、300mg併用群が12%であった。

ニボルマブ以外の免疫チェックポイント阻害薬との併用療法でも奏効率改善

経口投与可能な選択的IDO1阻害薬であるepacadostatは、悪性黒色腫患者を対象とする単群試験で免疫チェックポイント阻害薬との併用療法の概念実証(Proof-of-Concept)が示されており、ニボルマブと同様、プログラム細胞死受容体1(PD-1)標的抗体ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)、および細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)標的抗体のイピリムマブ(商品名ヤーボイ)との併用療法でも、これら免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の試験での奏効率より上昇した。

IDO1阻害はキヌレニンが維持する免疫抑制環境に打撃

がん細胞は、自身の生存を守るための環境適応の際、トリプトファンをはじめグルタミン、セリン、グリシンといったアミノ酸の消費を促進し、アミノ酸の代謝物を利用して細胞間連絡を図り、免疫抑制環境を整えている。同時に、宿主に備わる免疫チェックポイントの仕組みを悪用して抗腫瘍免疫の回避も可能にしている。インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ1(IDO1)は、必須アミノ酸のトリプトファンをキヌレニンに代謝する酸素添加酵素で、がん細胞ではIDO1の活性亢進によりトリプトファンが過度に消費されると考えられ、結果、代謝産物として増加するキヌレニンが免疫抑制環境の維持に貢献している。

こうしたことから、トリプトファンからキヌレニンを生成させる律速酵素であるIDO1を阻害する戦略は、キヌレニンの生成量を減らし、がんを取り巻く免疫抑制環境に打撃を与えることを意味する。その上で、免疫チェックポイント分子のPD-1 やCTLA4を介した免疫抑制反応を無効化する薬剤が働きやすくなれば、IDO阻害薬とオプジーボなど免疫チェックポイント阻害薬の併用療法は、理論的には確実なベネフィットをもたらすと考えられている。

Epacadostat plus nivolumab in patients with advanced solid tumors: Preliminary phase I/II results of ECHO-204. (ASCO 2017 Abstract No.3003)

Clinical Trial Data for Combination of Epacadostat and Opdivo® (nivolumab) Demonstrate Durable Clinical Responses in Patients with Melanoma and Head and Neck Cancer (Bristol-Myers Squibb Press Release, JUNE 5, 2017)

記事:川又 総江

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