急性骨髄性白血病の新薬エナシデニブ、FDA(米国)が承認


  • [公開日]2017.08.07
  • [最終更新日]2017.08.07

2017年8月1日、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)遺伝子変異を有する再発難治性急性骨髄性白血病(RRAML)の適応でエナシデニブ(商品名Idhifa)を米国食品医薬品局(FDA)が承認した。

エナシデニブ(商品名Idhifa)を承認する根拠となったのは、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)遺伝子変異を有する再発難治性急性骨髄性白血病(RRAML)患者199人に対してエナシデニブ(商品名Idhifa)を投与した第I/II相試験(NCT01915498)の結果である。

この臨床試験では、エナシデニブ(商品名Idhifa)投与により19.3%(95%信頼区間[CI]:13.8-25.9%;)の患者で完全奏効(CR)が得られた。また、完全奏効(CR)の期間中央値は8.2ヶ月であった。

急性骨髄性白血病(AML)の治療目標は根治であり、標準的な化学療法を受けた患者の約70%で完全奏効(CR)が達成される。そのため、本試験のエナシデニブ(商品名Idhifa)の治療成績はそこまで高くないようにも見える。

しかし、本試験の対象患者がイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)遺伝子変異を有すること以外にも、年齢中央値が68歳(19-100歳)、前治療歴中央値は2レジメン(1-6)、さらに前治療に不耐を示した患者が42%いた。このような治療成績が得られにくい患者を対象としていた点を考慮すると、急性骨髄性白血病(AML)の治療薬としてエナシデニブ(商品名Idhifa)の臨床的意義は非常に高いと筆者は考える。

なぜなら、急性骨髄性白血病(AML)の再発難治性症例に対しては化学療法のみでの完全奏効(CR)は期待ができないため、標準治療としては同種造血幹細胞移植が実施されるが、高齢者をはじめ移植適応のない患者も一定数存在するからである。

このような再発難治性急性骨髄性白血病(RRAML)患者に対してエナシデニブ(商品名Idhifa)単剤療法という新しい治療選択肢ができたことは、急性骨髄性白血病(AML)の治療成績向上に貢献するであろう。

なお、エナシデニブ(商品名Idhifa)の安全性ついてであるが、グレードを問わず発症した主な副作用は高ビリルビン血症、下痢、疲労、食欲不振、嘔吐、呼吸困難であった。また、グレード3以上の副作用としては高ビリルビン血症、血小板減少症、貧血であった。

上記副作用以外にもAPL(急性前骨髄球性白血病)の初期治療である全トランスレチノイン酸(ATRA)による分化誘導療法でお馴染みの分化症候群が、エナシデニブ(商品名Idhifa)でも発症する可能性はある。そのため、腫瘍量が多く、発熱、呼吸不全を呈する症例には注意が必要である。

以上の臨床試験の結果を受け、メモリアル・スローンケタリングがんセンター白血病部門所属のMartin Tallman氏は”イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)遺伝子変異は骨髄細胞の正常な成熟を阻害するので、この機序を標的とする治療法はイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病(AML)患者にとっては有望であり、それ以外の患者にも主治医がエナシデニブ(商品名Idhifa)を治療選択肢として選べるようにすることが我々の目標である”と述べているように、急性骨髄性白血病(AML)治療薬としてのエナシデニブ(商品名Idhifa)に対する期待は非常に高い。

この度エナシデニブ(商品名Idhifa)が承認された根拠は第I/II相試験(NCT01915498)に基づくものであるが、第III相試験であるIDHintif試験(NCT02577406)が現在進行中である。本試験ではイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)遺伝子変異を有する再発難治性急性骨髄性白血病(RRAML)患者280人を対象に、エナシデニブ(商品名Idhifa)単剤療法と現在の標準治療を直接比較し、その有効性を検証している。試験終了は2019年4月を予定しているので、本試験の結果にも期待したい。

記事:山田 創

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