5剤目の免疫チェックポイント阻害薬デュルバルマブ、ステージⅣ非小細胞肺がん患者に対する一次治療では無増悪生存期間(PFS)を延長しない
[公開日]2017.07.30 [最終更新日]2017.11.30

2017年7月27日、アストラゼネカ株式会社より5番目の免疫チェックポイント阻害剤として期待されていたデュルバルマブ(商品名Imfinzi)の第Ⅲ相試験であるMYSTIC試験(NCT02453282)の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の結果が公表されたが、その結果はステージⅣ非小細胞肺がん患者をはじめとした関係者の期待に反するものであった。
MYSTIC試験(NCT02453282)とは、ステージⅣ非小細胞肺がん患者の一次治療としてデュルバルマブ(商品名Imfinzi)単剤療法、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)と別の作用機序であるがん免疫療法の抗CTLA-4モノクロナール抗体トレメリムマブとの併用療法、又はプラチナ製剤を用いた標準化学療法の3群に分け、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を比較検証した第3相試験である。
本試験は2015年より日本を含む17カ国167の医療機関で実施され、合計675例ものステージⅣ非小細胞肺がん患者を対象に一次治療でのデュルバルマブ(商品名Imfinzi)の有効性、さらにもう1種のがん免疫療法薬であるトレメリムマブとの併用療法の有効性を検証することを目的とした臨床試験であることから、その結果は注目されていた。
しかし、その結果は期待に反して主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)はプラチナ製剤を用いた標準化学療法に対するデュルバルマブ(商品名Imfinzi)とトレメリムマブの併用療法の優越性を証明することができなかったのだ。
さらに、本試験の特徴的な患者背景としては、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)をはじめ免疫チェックポイント阻害薬の効果が期待できるがん細胞におけるPD-L1発現率25%以上の患者という条件が設定されていた。それだけに、この結果は非常に残念であると筆者は考える。
また併用療法と同様に、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)単剤療法でも無増悪生存期間(PFS)が標準化学療法に対して優越性を証明することはなかったのだ。参考までに、他の免疫チェックポイント阻害薬の臨床試験の結果を挙げると、ニボルマブ(商品名オプジーボ)のCheckMate-026試験(NCT02041533)、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)のKEYNOTE-024試験(NCT02142738)がステージⅣ非小細胞肺がんの一次治療としての免疫チェックポイント阻害薬単剤療法の標準化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)の優越性を検証している。
その結果は、ニボルマブ(商品名オプジーボ)がデュルバルマブ(商品名Imfinzi)と同様であったのに対して、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)のみがステージⅣ非小細胞肺がんの一次治療として単剤療法で標準化学療法に対する無増悪生存期間(PFS)の優越性を証明している。
もちろん、これら3つの臨床試験は患者背景をはじめとした条件が異なり、免疫チェックポイント阻害薬同士を直接比較した試験の結果ではないので断定はできないが、同じ免疫チェックポイント阻害薬であってもその有効性が異なる可能性はある。
2018年前半、アストラゼネカ株式会社はもう1つの主要評価項目である全生存期間(OS)の結果を、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)とトレメリムマブ併用療法、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)単剤療法それぞれで公表すると発表している。
ステージⅣ非小細胞肺がんの一次治療としてのデュルバルマブ(商品名Imfinzi)の可否は全生存期間(OS)の結果を待って判断したいが、他の免疫チェックポイント阻害薬が証明した有効性を、デュルバルマブ(商品名Imfinzi)が証明できなかったという事実は、非小細胞肺がんの治療として免疫チェックポイント阻害薬を選択する時に重要になるであろう。
記事:山田 創
この記事に利益相反はありません。
人気記事
- 【体験談】シングルマザーで乳がんステージ4~“今”を生きる~
- 少なくともPD-L1発現率1%以上の局所進行性又は転移性非小細胞肺がん患者に対する一次治療としてのキイトルーダ単剤療法、主要評価項目である全生存期間(OS)を統計学有意に延長する
- 治験特集『国立がん研究センター東病院の治験実施体制』 VOL.1
- 日本初、がん種をこえた承認申請、キイトルーダがマイクロサテライト性不安定性がんに対する承認申請
- 免疫チェックポイント阻害薬の全生存期間(OS)を予測する因子は、全奏効率(ORR)でなく6ヶ月無増悪生存率(PFS)
- 治験を探すがん患者・家族に朗報、治験情報へのアクセスが清流化
- 【5/26@押上】オンコロ The 3rd Anniversary Seminar “Make it TRUE !! がん体験者の主張 Vol.3” 開催決定!
- 【3月25日に重要な訂正しました】Oncotype DX乳がん検査、約10,000人が参加した臨床試験結果が近日公表予定
- 2018年3月30日にアップデートされた拡大治験情報 ~悪性胸膜中皮腫対象オプジーボの拡大治験が開始~
- ナッツ類の摂取量が多い大腸がん患者は摂取しない患者に比べて無病生存率(DFS)、全生存率(OS)は高い
がんの臨床試験(治験)をお探しの方へがん情報サイト「オンコロ」ではがんの臨床試験(治験)情報を掲載しています。 掲載中の臨床試験(治験)情報はこちら » 臨床試験(治験)とは » |
オンコロリサーチ患者さんやそのご家族のがんに関わるあらゆる声を調査(リサーチ)するための調査を実施しております。 実施中の調査一覧はこちら » |
無料メルマガ配信中メルマガ独自のコラム、臨床試験情報、最新情報を毎週配信しています。ぜひご登録ください。 メルマガ登録はこちら » |