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免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ)、ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)をはじめとした高額な薬剤の登場により、本当にその治療が必要なのかどうかを検証する臨床試験の必要性が高まっている。
なかでも、進行がんを患う高齢者に対する抗がん剤治療の有効性については、早急にその研究結果を出す必要がある。なぜなら、医療費の赤字が膨らむことで国が破綻するからである。
国が破綻しては、有効性に関係なく誰もが安価な医療を受けざるを得ない。そうならないためにも、免疫チェックポイント阻害薬をはじめとした高価な薬剤の恩恵を最も享受するであろう患者の特徴を早急に発見しなければならない。
この意味で、年齢によって薬の有効性が変わるのかどうか?についてを検証する臨床試験の意義は大きいと筆者は考える。もちろん、何をもって若者、高齢者と定義するのかは非常に難しい問題であるが、人間は年齢とともに腎機能、肝機能が低下するため薬剤の代謝、排泄機能が若者よりも悪くなる。
その結果として、薬による利益よりも不利益を被る可能性が高くなるため、世間一般の定義である65歳の年齢を目処に高齢者と定義し、高額な薬剤の年齢別の有効性を検証することは重要であるだろう。
以上の背景から、2017年6月28日から7月1日までスペインのバルセロナで開催されたESMO 19th World Congress on Gastrointestinal Cancer(WCGC2017)で報告された進行肝細胞がんに対するニボルマブ(商品名オプジーボ)の第1/2相試験(CheckMate040試験:NCT01658878 )の年齢別奏効率解析の結果は示唆に富んでいた。
下記は本臨床試験に登録された年齢別の患者割合である。ニボルマブ(商品名オプジーボ)を投与された進行肝細胞がん患者は全体で262人いて、年齢中央値は63歳。その内65歳未満が142人(54.2%)、65歳以上が120人(45.8%) を占めていた。また、65歳以上のさらなる年齢の内訳としては65歳以上75歳未満が89人 (34.0%) 、75歳以上が31人 (11.8%) であった。
以上のように、高齢者と定義される年齢の患者が約半数を占める対照群に対して、ニボルマブ(商品名オプジーボ)を投与した有効性の結果がこちらである。
上記は本臨床試験に登録された患者の年齢別奏効率の解析結果である。年齢は65歳未満、65歳以上75歳未満、75歳以上の3群に分け、奏効率は完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、進行(PD)の4段階に分けて解析されている。
例えば、病勢コントロール率(DCR=CR+PR+SD)は65歳未満で53%、65歳以上75歳未満で56%、75歳以上で62%と、ニボルマブ(商品名オプジーボ)は年齢に関係なく奏効を示している。
また、奏効率だけでなく全生存期間(OS)においても同様である。上記は年齢別全生存期間(OS)の解析結果であるが、例えば全生存率期間(OS)中央値は65歳未満で16.6ヶ月(95%信頼区間:13.8-20.2ヶ月)、65歳以上75歳未満で17.0ヶ月(95%信頼区間:14.2-20.7ヶ月)、75歳以上で19.9ヶ月(95%信頼区間:10.4-28.6ヶ月)と、ニボルマブ(商品名オプジーボ)は年齢に関係なく全生存期間を延長させている。
以上の第1/2相試験(CheckMate040試験:NCT01658878 )の結果から、進行肝細胞がん患者に対して若者であろうと高齢者であろうとニボルマブ(商品名オプジーボ)を投与する意義は非常に高いと言えるだろう。
特に、進行肝細胞がんにおける化学療法の標準治療はソラフェニブ(商品名ネクサバール)、レゴラフェニブ(商品名スチバーガ)の2剤のみである。そのため、これらに対して効果不十分であった場合、又は肝機能が悪いために適応がない場合、患者の治療選択肢が限られているのが現状である。
このように、他の癌種よりも治療選択肢が限られ肝細胞がんだけに、年齢に関係なく免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブ(商品名オプジーボ)が肝細胞がん3剤目の標準治療となる可能性を示唆した臨床的意義は非常に大きい。
もちろん、本臨床試験は安全性と忍容性を主要評価項目とする第1/2相試験における結果であるため、進行肝細胞がんに対するニボルマブ(商品名オプジーボ)の有効性が年齢に関係なく有効であるとの結論は、現在進行中である第3相臨床試験(CheckMate456:NCT02576509)の結果を待ちたい。
Efficacy and safety of nivolumab in patients with advanced hepatocellular carcinoma analyzed by patient age: A sub-analysis of the CheckMate 040 study(WCGC2017 Abstract No.O-008)
記事:山田 創
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