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HER2陽性早期乳がんの術後補助療法 HER2阻害薬のパージェタとハーセプチンで標的能強化する第3相試験 ASCO2017&NEJM

[公開日] 2017.06.10[最終更新日] 2017.06.10

目次

2017年6月2日から5日まで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2017)で、上皮成長因子受容体2(HER2)陽性の早期乳がん患者の標準的な術後科学療法にペルツズマブ(商品名パージェタ)、およびトラスツズマブ(商品名ハーセプチン)の2つの抗HER2モノクローナル抗体を併用投与する第3相試験(APHINITY、NCT01358877)の中間結果が発表された。 パージェタは、日本でHER2陽性の手術不能、または再発乳がんの効果・効能で2013年9月から販売されている。一方のハーセプチンは、日本でHER2過剰発現が確認された乳がんの効果・効能で2001年6月から販売されている。 APHINITYは、日本を含む全世界で実施されているプラセボ対照の無作為化二重盲検試験で、ドイツGerman Breast GroupのGunter von Minckwitz氏らが中間解析データをASCOのLate Breaking Absrtuct(LBA)枠で発表し、2017年6月5日のNew England Journal of Medicineにも掲載された。

パージェタを化学療法+ハーセプチンに追加することで浸潤性乳がんに進展するリスクが19%減

およそ4年間と経過観察期間が短いため断定的な結論は出せないが、パージェタの追加により中程度の上乗せ効果、すなわち非浸潤性の早期乳がんから浸潤性の乳がんに進展する可能性は追加しない場合より有意に低くなり(p=0.045)、追加したことにより新たな安全性の問題は発生しなかった。

4805名が参加した大規模臨床試験

乳房摘出術、または乳腺腫瘍摘出術を受けた早期乳がん患者4805名を化学療法+ハーセプチン+パージェタ群(以下パージェタ群)、または化学療法+ハーセプチン+プラセボ群(以下プラセボ群)に無作為に割り付け(各2400名、2405名)、18週間の化学療法、および1年間のハーセプチン(3週ごと静注)と併用してパージェタ、またはプラセボを3週ごとに1年間にわたり静注した。なお、腫瘍が1cm未満の患者は化学療法のみで治療可能なため除外している。 その結果、治療を完了した患者の割合は、パージェタ群84.5%、プラセボ群87.4%であった。ほぼ4年間の間に確認された浸潤性乳がん病変はパージェタ群(171例[7.1%])がプラセボ群(210例[8.7%])より有意に少なく、パージェタ群は進展リスクが19%低下した(ハザード比[HR]=0.81)。3年間にわたり浸潤性乳がん病変が確認されることなく生存する患者の割合は、パージェタ群94.1%、プラセボ群93.2%と算出された。 3年間にわたり浸潤性乳がん病変が確認されることなく生存する患者の割合をリンパ節病変の有無別に解析した結果、リンパ節病変ありの集団ではパージェタ群(92.0%)がプラセボ群(90.2%)より有意に高く(p=0.019)、パージェタ群は進展リスクが23%低下した(HR=0.77)。リンパ節病変なしの集団では群間差がなかった(各97.5%、98.4%)。 パージェタの安全性プロフィールは過去の臨床試験結果と同様で、本併用療法により特に問題となる事象は発生しなかった。注意を要する安全性評価項目である心事象についても、心不全または心臓関連死(各0.7%、0.3%)、無症候性または症候性の左室駆出率(LVEF)軽度低下(各2.7%、2.8%)で群間差はなく同程度であった。グレード3以上の下痢はパージェタ群(9.9%)がプラセボ群(3.7%)より多く発現した。

治療困難な浸潤性乳がんへの進展を抑制する術後補助療法の最適な時間を探る

浸潤性乳がんは乳管や乳腺への浸潤に始まり、周囲の組織に広がっていく。さらに、隣接するリンパ節やそれを超えて拡大していくと、治療は困難を極める。一方、非浸潤性のHER2陽性早期乳がん患者に対するハーセプチンを含む標準的な術後補助療法はすでに定着し、予後も比較的良好であることがわかっている。 本試験では、3年間という極めて短い期間において、非浸潤性乳がんの術後患者に対し、パージェタを化学療法+ハーセプチンに追加することで浸潤性乳がんに進展する確率が有意に低下した。追加しないプラセボ群との群間差はわずか1%であるが、統計学的解析に基づくと19%のリスク低下とされた。 第2のHER2標的薬を術後補助療法に組み入れることについてMinckwitz氏は、重篤な副作用のリスクを増大させることなく、ある程度の治療成績の向上は期待できるとしている。特に、リンパ節病変あり、あるいはホルモン受容体陰性といったハイリスク因子を有する患者に有益性をもたらす可能性を示唆した。そして、治療法として確立するには、術後補助療法の最適な時間を突き止める必要性を語った。「術後1年間という時間が必要かどうか、場合によっては6カ月でも十分かもしれない」 Minckwitz氏らは、パージェタ追加の可能性を長期追跡する計画で、本試験の患者から腫瘍サンプルを採取・収集し、有益性予測に寄与するバイオマーカーを探索している。 APHINITY trial (BIG 4-11): A randomized comparison of chemotherapy (C) plus trastuzumab (T) plus placebo (Pla) versus chemotherapy plus trastuzumab (T) plus pertuzumab (P) as adjuvant therapy in patients (pts) with HER2-positive early breast cancer (EBC).(Abstract LBA500) Adding a Second HER2 Blocker May Lower Chance of Invasive Breast Cancer for Some Women(ASCO News Releases) Adjuvant Pertuzumab and Trastuzumab in Early HER2-Positive Breast Cancer(New Englanc J Med, June 5, 2017DOI: 10.1056/NEJMoa1703643) 川又 総江 この記事に利益相反はありません。
ニュース 乳がん パージェタ(ペルツズマブ)

医療ライター 川又 総江

国内製薬企業研究所研究員、大学医学部研究室助手を経てフリーのメディカルライターに転身。医薬・バイオ関連出版社等の文献翻訳、医療記事作成を執筆すること20年。

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