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筋層非浸潤性膀胱がん(NMIBC) 多様性のある中リスク患者群の経過から治療戦略を考える Urologic Oncol

[公開日] 2017.05.04[最終更新日] 2017.05.04

未治療膀胱がんのおよそ70%を占める筋層非浸潤膀胱がん(NMIBC)。国際基準に基づくリスク分類では、低リスク、または高リスクは明確に定められているものの、中リスクはそれ以外のすべてを含むものと、あいまいな基準で定義されている。そのため、中リスクの患者群は様々な臨床背景を有し、複数のガイドラインでその治療方針は統一されていないのが現状である。慶應義塾大学の松本 一宏氏、菊地 栄次氏らのグループは、中リスク患者群をさらに3つに細分類し、その特徴、臨床経過から治療戦略を考察した。2017年のUrologic Oncology: Seminars and Original Investigations誌 35巻 208から214ページ に論文を発表した。 1982年から2010年に慶應義塾大学病院、および東京済生会中央病院で加療されたNMIBC患者で、中リスクと判定された326例を対象とし、臨床経過により3つに細分類した。 なお、中リスクの定義は、低リスク(初発、単発、深達度Ta [腫瘍が粘膜にとどまっているもの]、異型度G1 またはG2 [低グレード]、これらすべての条件を満たす腫瘍)に該当せず、なおかつ高リスク(異型度G3 [高グレード]、深達度T1 [粘膜下層の粘膜固有層に達しているもの]、上皮内がん(CIS)の併発有、これら少なくとも一つ以上の条件を満たす腫瘍)にも該当しない腫瘍とされた。 中リスク群の本研究における細分類は次のとおり。 中リスク-グループA(170例):初発・多発・低グレードTa 中リスク-グループB(97例):低リスク腫瘍から再発した低グレードTa 中リスク-グループC(59例):高リスク腫瘍から再発した低グレードTa

高リスク腫瘍から再発した低グレードTa腫瘍、グループCは再発の危険性が高い

調査対象の326例中、158例(48%)の再発が確認された。 2年、および5年無再発生存率(RFS)は、グループC(各42%、40%)がグループA(各69%、53%)、およびグループB(各70%、51%)と比べ有意に低かった。さらにBCG、または抗癌剤膀胱内注入療法などの前治療を受けていない患者群(各170人、75人、22人)に限って再検討を行っても同様の傾向が認められ、グループCはグループA、およびグループBと比べRFSが有意に低かった。 次に、中リスクグループ毎に膀胱内注入療法別の再発率を比較したところ、グループAにおいてBCG膀胱内注入群(101例)の5年RFSは膀胱内注入療法未治療群(54例)と比べ有意に高かった(61% vs 38%、p<0.01)。BCG膀胱内注入群と抗癌剤膀胱内注入群(15例)、または抗癌剤膀胱内注入群と膀胱内注入療法未治療群の間にはいずれも再発率に差を認めなかった。 グループBでも同様で、BCG膀胱内注入群(43例)と膀胱内注入療法未治療群(40例)との比較でのみ5年RFSに有意差が認められた(65% vs 31%、p<0.01)。 グループCでは、BCG膀胱内注入群(23例)は抗癌剤膀胱内注入群(10例)、および膀胱内注入療法未治療群(26例)と比べ5年RFSが有意に高く(順に65%、25%未満、23%)、抗癌剤膀胱内注入群と膀胱内注入療法未治療群の間に有意差はなかった。

グループCには病期進展の危険性の高いBCG refractory (BCG不応)例が含まれている

調査対象の326例中、40例(12%)の病期進展が確認された。 5年無増悪生存率(PFS)は、グループA(88%)、グループB(89%)、グループC(91%)で各群間に有意差は認められなかった。さらにBCG、または抗癌剤膀胱内注入療法などの前治療を受けていない患者群(各170人、75人、22人)に限って再検討を行っても同様の傾向が認められ、各群間に有意差は認められなかった。 グループCにおいて、59例中11例で前治療としてBCG膀胱内注入されるも6カ月以内に中リスクとして腫瘍が残存する、いわゆるBCG refractory (BCG不応)例が含まれており、そのうち5例(45%)でその後に病期進展が確認された。なおグループBでは、BCG refractory例は認められなかった。 以上、NMIBCの中リスク患者群をさらに3つのサブグループに分けることにより、治療経過観察中の特性が見えてきた。今回の研究結果からは、当初高リスク腫瘍と診断された後に再発したNMIBCが中リスクと判定されたグループCの場合、その後の再発の危険性は高く、再度BCG膀胱内注入療法に反応を示すことから、BCG膀胱内注入療法の継続の必要性が認識された。また中リスク群には高率に病期進展を生じるBCG refractory (BCG不応)例が含まれていることより、これらを除外して治療指針を構築する必要性があることが確認された。

筋層非浸潤性膀胱癌のリスク分類について

日本泌尿器科学会膀胱癌診療ガイドライン2015年版におけるNMIBCのリスク分類は次のとおり。 低リスク:単発・初発・3cm 未満・深達度Ta・低グレード・上皮内がん(CIS)併発なしのすべてを満たすもの 中リスク:深達度Ta-1・低グレード・CIS 併発なし、多発性あるいはサイズが 3cm 以上 高リスク:深達度T1・高グレード・CIS(併発 CIS も含む)・多発・再発のいずれかを含むもの Characterizing intermediate-risk non–muscle-invasive bladder cancer: Implications for the definition of intermediate risk and treatment strategy(Urol Oncol. 2017 May;35(5):208-214) 医学監修:菊地 栄次(慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 専任講師) 記事:可知 健太 この記事に利益相反はありません。
ニュース 膀胱がん BCG

3Hクリニカルトライアル株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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