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転移性腎細胞がんの初回治療 テセントリク×アバスチン併用療法の可能性 ASCO-GU2017

[公開日] 2017.03.09[最終更新日] 2017.03.09

転移腎細胞がん(mRCC)患者に対する初治療として、プログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1)標的抗体アテゾリズマブ(商品名Tecentriq;テセントリク)と血管内皮増殖因子(VEGF)標的抗体ベバシズマブ(商品名アバスチン)の併用療法を試みた。PD-L1発現陽性を確認した患者集団において、転移性腎細胞がんの適応で承認されているマルチキナーゼ阻害薬スニチニブ(商品名スーテント)の投与群よりも増悪リスク、あるいは死亡リスクが36%低下した。イギリスQueen Mary大学BartsがんセンターのThomas Powles氏らが2017年2月の米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム(ASCO-GU)で発表した。

「テセントリク×アバスチン併用」vs「テセントリク単剤」vs「スーテント単剤」

owles氏らが実施したのは、全身治療の経験がない転移腎細胞がん(mRCC)患者を対象とする第2相試験(IMmotion150、NCT01984242)。米国や欧州で2014年に開始された無作為化非盲検試験で、計305人をテセントリク×アバスチン併用群、テセントリク単剤群、またはスーテント単剤群に割り付け治療した。1サイクルを6週間とし、テセントリクは1200mgを3週ごと(1日目、22日目)、アバスチン15mg/kgを3週ごとに静注し、スーテントは50mgを1日1回28日間連日経口投与した。主要評価項目は、割り付けられたすべての患者集団(ITT解析対象)、およびPD-L1発現陽性(発現レベル1%以上)の患者サブグループにおける無増悪生存(PFS)期間であった。

PD-L1発現陽性集団においてテセントリク×アバスチンで無増悪生存期間は14.7か月

中間解析の結果、ITT解析対象305人におけるPFS期間中央値は、テセントリク×アバスチン併用群(11.7カ月)、テセントリク単剤群(6.1カ月)はスーテント単剤群(8.4カ月)との統計学的有意差に達しなかった。 PD-L1発現陽性患者集団におけるPFS中央値は、併用群が14.7カ月、スーテント単剤群が7.8カ月、テセントリク単剤群が5.5カ月で、併用群はスーテント単剤群との統計学的有意差には達しなかったが延長傾向を示し(P=0.095)、増悪または死亡リスクが36%低下した(ハザード比(HR)=0.64)。併用群はスーテント単剤群と比べ、PD-L1発現レベル別の比較でも増悪または死亡リスクの低下が示され、発現レベル1%以上5%未満の集団(76人)では13%の低下(HR=0.87)、5%以上10%未満の集団(22人)では50%の低下(HR=0.50)、10%以上の集団(12人)では77%の低下(HR=0.23)であった。 ITT解析対象における全奏効率は群間差がほとんどなく、併用群は32%、スーテント単剤群は29%、テセントリク単剤群は25%であった。PD-L1発現レベル1%以上の患者集団ではそれぞれ46%、27%、28%であった。 なお、治療継続期間は併用群が最も長く、併用群におけるテセントリクの投与期間中央値は11.8カ月、アバスチンの投与期間中央値は10.3カ月と2剤とも10カ月を超えた。一方、テセントリク単剤群の投与期間中央値は7.6カ月、スーテント単剤群では6.7カ月であった。

安全性

グレード3またはグレード4の治療関連有害事象の発現率は、スーテント単剤群(57%)が最も高く、次いでテセントリク×アバスチン併用群(40%)、テセントリク単剤群(17%)は最も低かった。治療中止の理由となった有害事象の発現率は、スーテント単剤群(9%)と併用群(9%)が同等で、テセントリク単剤群(3%)を上回った。用量変更や投与中断の理由となった有害事象の発現率はスーテント群(70%)が最も高く、次いで併用群(60%)、テセントリク単剤群(27%)は最も低かった。 主な有害事象は疲労で、併用群の全グレードの発現率は約60%、スーテント単剤群は70%であった。併用群ではその他、下痢や悪心、頭痛、関節痛、および蛋白病が30%から40%の発現率で認められた。スーテント単剤群でも下痢、悪心が認められ、その発現率(各60%、50%)は併用群より高かった。またスーテント単剤群では、手足症候群(40%)、粘膜炎(30%)、味覚異常(30%)、および食欲減退(30%)も認められた。

テセントリク×アバスチン併用療法の第3相試験の結果が待たれる

Powles氏は、「本試験(IMmotion150)では、テセントリク×アバスチン併用療法の忍容性が良好であることが示された。主要評価項目のPFS延長を統計学的に証明することはできなかったが、中間解析の結果としては説得力のある値が得られ、PD-L1発現陽性患者を対象としてPFS期間をエンドポイントとする無作為化第3相試験を開始した」と語った。一方で、「IMmotion150は承認申請の際の提出データを目的とした試験ではなく、仮説に基づきデザインした試験」と強調し、「あくまでも中間結果であり、現時点では結論を急ぐことはない」としながらも、「遠くない将来、腎がんの治療が変わる可能性もある」と期待感を隠さなかった。OncLive訳 Combination Makes First-Line Case for Metastatic PD-L1+ RCC(OncLive, Monday, Feb 20, 2017) A phase II study of atezolizumab (atezo) with or without bevacizumab (bev) versus sunitinib (sun) in untreated metastatic renal cell carcinoma (mRCC) patients (pts).(ASCO-GU2017,Abstract Number:431) 記事:川又 総江 & 可知 健太
ニュース 腎臓がん 免疫チェックポイント阻害薬

医療ライター 川又 総江

国内製薬企業研究所研究員、大学医学部研究室助手を経てフリーのメディカルライターに転身。医薬・バイオ関連出版社等の文献翻訳、医療記事作成を執筆すること20年。

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