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免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブ(商品名テセントリク)と血管新生阻害薬ベバシズマブ(商品名アバスチン)の併用療法を実施している第1相試験で、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-high)転移性大腸がん患者集団で90%の病勢コントロール率(DCR)が得られた。米国イェール大学医学大学院のHoward S. Hochster氏らが、2017年1月に開始された米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム(ASCO-GI)で中間解析結果を発表した。2017年2月7日のOncLiveの記事を紹介する。

テセントリクは、プログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1)を認識するモノクローナル抗体で、非小細胞肺がんの適応で米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。アバスチンは大腸がん、非小細胞肺がん、卵巣がん、子宮がん、乳がん、および悪性神経膠腫の適応で日本でも承認されている抗血管内皮増殖因子(VEGF)モノクローナル抗体である。

試験デザイン・患者背景

Hochster氏らが実施している第1相試験は、進行固形がん患者を対象にテセントリク×アバスチン併用療法を実施する非盲検試験(NCT01633970)で、その中で、これまでにマイクロサテライト不安定性の高い(MSI-high)の転移性大腸がん(mCRC)患者10人に投与された。主要評価項目は安全性と忍容性、副次評価項目は固形がん治療効果判定基準(RECIST)、または免疫関連効果判定基準(irRC)による抗腫瘍効果などである。

患者10人の年齢中央値は52.5歳で、7人はmCRCに対する治療歴が少なくとも2療法あった。9人はプラチナ製剤をベースとする化学療法歴があり、そのうち7人はアバスチンの治療歴があった。10人中8人の腫瘍が右側にあった。

有効性 ~10人中9人の病勢コントロール~

有効性についてHochster氏は、「経験した治療の数が多く強度も高いマイクロサテライト不安定性の高い(MSI-high)転移性大腸がん(mCRC)患者で有望な抗腫瘍効果が認められている」とし、その効果は持続性にすぐれ、持続期間の中央値は12カ月を超えており、フォローアップを継続している。追跡期間中央値を14.8カ月とする中間解析で、奏効持続期間、または無増悪生存(PFS)期間の中央値特定には至っていない。

RECIST判定では部分奏効(PR)が4人、病勢安定(SD)が5人に認められ、奏効率は40%、病勢コントロール率(DCR)は90%、奏効持続期間は1.6カ月から12.4カ月、無増悪生存(PFS)期間は1.5カ月から21.9カ月であった。

irRC判定ではPRが3人、SDが6人に認められ、奏効率は30%、DCRは90%、奏効持続期間は7.8カ月から12.4カ月、PFS期間は2.6カ月から23.7カ月であった。

安全性 ~発現する有害事象は管理可能~

安全性についてHochster氏は、「テセントリク×アバスチン併用療法の忍容性は全般に良好で、発現する有害事象は管理可能」としている。治療関連有害事象を理由とする治療中止は4人で、そのうちテセントリクに関連して中止したのは1人、アバスチンに関連して中止したのは3人であった。グレード3からグレード4の治療関連有害事象は、蛋白尿(1人)、貧血(1人)、高血圧(1人)、低カリウム血症(1人)、悪心(1人)、非心因性胸痛(1人)、および小腸閉塞(1人)であった。

大腸がんのマイクロサテライト不安定性とは

DNAの中で1個から数個の塩基配列が反復する部分をマイクロサテライトといい、その反復回数は悪性の腫瘍細胞と正常細胞では異なることから、マイクロサテライト不安定性と呼ばれる。細胞分裂で核内DNAが複製される際に生じるミスマッチ(塩基配列の間違い)を修復する機能が低下し、修復されずに遺伝子変異が蓄積されると腫瘍化すると考えられており、マイクロサテライトの反復回数を調べることでミスマッチ修復機能の程度を予測することができる。腫瘍組織では、抗原提示細胞が腫瘍細胞を抗原として提示するが、マイクロサテライト不安定性の高い(MSI-high)大腸がんは、不安定性のない大腸がんと比べ抗原提示能力が著しく高いことが報告されている。

マイクロサテライト不安定性とPD-L1との関わりが治療効果に反映する可能性

腫瘍細胞の抗原提示に伴い、腫瘍細胞を攻撃する細胞傷害性T細胞(CD8陽性細胞)が誘導され、抗腫瘍免疫機能が動き始めるが、腫瘍細胞膜に発現するPD-L1と細胞傷害性T細胞膜に発現する受容体PD-1が相互作用すると、いわゆる免疫チェックポイントが働き、T細胞による腫瘍細胞攻撃にブレーキがかかり、腫瘍細胞の増殖に勢いが増す。これらを踏まえると、抗原提示能力が高いマイクロサテライト不安定性の高い(MSI-high)大腸がんで、腫瘍細胞に発現するPD-L1を抗体が遮断することで細胞傷害性T細胞のPD-1との相互作用を阻害すれば、抗原提示により誘導される細胞傷害性T細胞の抗腫瘍免疫機能を発揮させることが可能と考えられる。

血管内皮増殖因子(VEGF)は抗腫瘍免疫の回避に寄与するとされ、血管新生因子であるVEGFを阻害することでがん免疫療法の有効性が増大することも報告されている。

Efficacy and safety of atezolizumab (atezo) and bevacizumab (bev) in a phase Ib study of microsatellite instability (MSI)-high metastatic colorectal cancer (mCRC).(ASCO-GI,Abstract Number: 673)

Atezolizumab/Bevacizumab Combo Attains 90% DCR in MSI-High mCRC.(OncLive, Tuesday, Feb 07, 2017)

記事:川又 総江

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