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23andMeなどの遺伝子検査を受けた方の意識・行動調査

昨今、個別遺伝子検査が活発化している。唾液等を送付するだけで個人の遺伝子検査を行い、個々人にがん罹患のリスクを提示する検査形態は、米国ではグーグル創業者セルゲイ・ブリン氏の妻アン・ウォイッキ氏が起業した遺伝子検査ベンチャー23andMe社などが有名である。日本では、DeNAライフサイエンス社が実施しているMYCODEなどが存在する。

しかしながら、直接販売型の個別遺伝子検査(DTC-PGT)を受けた一般消費者のほとんどは、がんリスクが高いと判定されても食事や運動、がん検診といった行動を伴う健康意識が変わることはなかった医学論文が2016年12月12日のJournal of Oncology誌に掲載された。

米国Hope国立医療センターのStacy W. Gray氏らは、直接販売型の個別遺伝子検査(DTC-PGT)の普及により、根拠に妥当性のない行動や生活習慣の変化、ならびにヘルスケア資源の過剰利用に関する懸念が広まっていることを踏まえ、米国23andMe社、およびPathwayGenomics社のDTC-PGTを受けた新規顧客1042人を対象とする調査「PGen Study(The Impact of Personal Genomics)」を実施した。

遺伝子検査技術に誰もがアクセスでき、がんのコントロールを可能にする直接販売型の個別遺伝子検査(DTC-PGT)の登場は革新的なものだ。しかし、1塩基遺伝子多型(SNP)をベースとした検査でがんリスクが中程度に高いという結果は、医学的に実用性のある情報とは言い難いというのが現在の認識である。不確かな遺伝的情報に惑わされ、むしろ、健康上の重要決定の際に適切な助言や指導を受けられず、DTC-PGTの結果に基づく高コストのフォローアップケアを追及するあまり、医療保険制度を歪めかねないとする批評家の意見もある。

PGen Study調査対象

2012年3月から7月、DTC-PGTの結果を受け取る前、結果を確認して2週間後、および6カ月後に3回のウェブ調査を実施した。解析対象は、乳がん(女性のみ)、前立腺がん(男性のみ)、および大腸がん(男女)の1塩基遺伝子多型(SNP)の遺伝子検査を受けた顧客1042人中、がんと診断されたことがなく、過去に遺伝子検査を受けたことがないなどの条件を満たす762人であった。年齢は19歳から81歳、50歳超は36%(275人)を占めた。非白人は15%(117人)、ヒスパニックは6%(47人)で、77%(590人)はがんの家族歴を有していた。59%(448人)は自身の健康状態を「良好」または「極めて良好」と回答していた。

DTC-PGT以前の生活習慣・行動

調査対象762人中、ビタミンなどサプリメントを摂取していたのは68%、米国疾病予防管理センター(CDC)が推奨する食事、運動を実行していたのはそれぞれ43%、35%であった。50歳以上の調査対象は過去にがん検診を受けている割合が高く、乳がんマンモグラフィーは97%、大腸内視鏡は75%、前立腺特異抗原(PSA)検査は80%であった。

DTC-PGTのがんリスク判定結果

1塩基遺伝子多型(SNP)がんのリスク上昇と非上昇は以下の通り。

乳がん:リスク上昇した方は44人、非上昇の方は375人
大腸がん;リスク上昇した方は166人、非上昇の方は524人
前立腺がん リスク上昇した方は64人、非上昇の方は207人

DTC-PGT 以後6カ月の生活習慣・がん検診受診行動

受け取ったDTC-PGTの結果に応じて食事、運動習慣を変えた人の割合はそれぞれ31%、26%、ケアプランを見直した割合は6%、ビタミン/生薬などサプリメントを変えた割合は21%であった。

DTC-PGTの結果を受けてがん検診を受けたがん種別割合は、乳がんマンモグラフィーが26%、大腸内視鏡が7%、PSA検査が19%であった。DTC-PGT以前の1年間にがん検診を受けた人はDTC-PGT以後6カ月にがん検診を受ける傾向があり、この傾向は前立腺がんを除き、50歳以上、または未満による年齢差は認めらなかった。DTC-PGT以前にがん検診を受けたことがない対象集団で、DTC-PGT以後6カ月に受けた割合は、乳がんマンモグラフィーが0.6%、大腸内視鏡が2.0%、PSA検査が2.5%で、50歳以上に限ると、大腸内視鏡(6.5%)、およびPSA検査(7.1%)がわずかに上昇した。

DTC-PGT以後6カ月におけるがん種別リスク判定と行動との関連

米国疾病予防管理センター推奨の食事を実行していなかった集団で、乳がんリスク上昇と判定された180人、非上昇と判定された27人のうち、食事を変えた割合はそれぞれ30.6%、33.3%で有意差はなく、同様に、米国疾病予防管理センター推奨の食事を実行していた集団で、乳がんリスク上昇と判定された195人、非上昇と判定された17人のうち食事を変えた割合はそれぞれ38.5%、23.5%で有意差はなかった。

同じように、米国疾病予防管理センター推奨の食事を実行していなかった、もしくは実行していた集団で、大腸がん、または前立腺がんのリスク判定別でも食事を変えた割合に有意差は認められなかった。

運動習慣についても同様で、米国疾病予防管理センター推奨の運動を実行していなかった、もしくは実行していた集団で、それぞれのがん種のリスク判定別に運動習慣を変えた割合に有意差は認められなかった。

ビタミン/生薬などサプリメント習慣の変化は、乳がんと大腸がんのリスク判定別では上記同様に有意差がなかったが、前立腺がんでは違った。すなわち、サプリメント習慣を変えた割合は、前立腺がんリスク上昇と判定された集団(64人)が25.0%、非上昇と判定された集団(207人)が11.6%で、リスク上昇集団の方が有意に高かった。補正後のオッズ比は、非上昇集団を1.00として上昇集団は3.43となった。

DTC-PGT以前からサプリメント習慣があった人に限ると、習慣を変えた割合は、前立腺がんリスク上昇集団(36人)で41.7%、非上昇集団(118人)で14.4%と大きく開いた。これに対し、DTC-PGT以前からサプリメント習慣がなかった人で習慣を変えた割合は、リスク上昇集団(28人)で3.6%、非上昇集団(89人)で7.9%にとどまり、リスクの上昇、非上昇による有意差は認められなかった。

個別遺伝子検査は、健康に関連する行動は変えることはない

Gray氏らは、得られた結果の中で仮説に合致したことは、DTC-PGTを受けた顧客のほとんどは、検査結果を受けて健康に関連する行動を変えないということ。1つの例外は、前立腺がんリスク上昇と判定された集団は、リスクが平均、または低いと判定された集団と比べサプリメントを変える割合が有意に高まったということ。仮説に反したことは、リスク上昇と判定された集団が、DTC-PGT以後6カ月でがん検診を受ける割合が高まることはないということであった。しかし、50歳以上の人はもともとがん検診を受ける人が多いため、特に50歳以上の集団でがん検診の受診状況の変化を検出するには限界があったとしている。

Personal Genomic Testing for Cancer Risk: Results From the Impact of Personal Genomics Study(J Clin Oncol. 2016 Dec 12:JCO2016671503.)

記事:可知 健太

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