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非小細胞肺がん ALK阻害薬ブリガチニブの第1/2相結果 Lancet Oncol

[公開日] 2017.01.15[最終更新日] 2017.01.15

目次

未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)阻害薬ブリガチニブ(AP26113)は、ALK融合遺伝子陽性非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、既存のALK阻害薬クリゾチニブ(商品名ザーコリ)治療歴の有無に関わらず、脳転移を有する患者も含めて臨床効果を発揮し、頭蓋内奏効も認められた。安全性プロフィールは許容可能であったことから、新たな治療選択肢の可能性が示唆された。 米国エール大学がんセンターのScott N Gettinger氏らが、ブリガチニブの第1/2相単群非盲検試験(NCT01449461)の結果を、2016年11月7日のLancet Oncol Onlineに発表した。

ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がんを対象としたブリガチニブの投与量を試験

米国、スペインの9施設で、ALK融合遺伝子陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者を含む進行がん患者を対象とし、第1相試験ではブリガチニブ1日30mgから300mgを3+3増量デザインにより連日経口投与し、第2相推奨用量を決定した。第2相拡大ステージでは1日90mg群、1日180mg群、または1日90mg 7日間の導入期間後1日180mg群に割り付け(1人は90mgを1日2回)連日経口投与した。第2相登録患者は、次の5つ集団に分けた。 集団1:ALK阻害薬治療歴のないALK融合遺伝子陽性NSCLC 集団2:ALK阻害薬クリゾチニブ治療歴のあるALK融合遺伝子陽性NSCLC 集団3:上皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)1種に耐性を獲得したEGFR T790M変異陽性NSCLC 集団4:ブリガチニブの標的となり得る遺伝子異常陽性のNSCLC以外のがん 集団5:中枢神経系(CNS)の頭蓋内転移を有するALK融合遺伝子陽性NSCLC(クリゾチニブ治療歴の有無は問わない) 第2相試験の主要評価項目は奏効率で、安全性、ならびにブリガチニブの有効性は、第1相、第2相試験ともに1回以上投与されたすべての患者を対象に評価した。 2011年9月20日から2014年7月8日までに、計137人が登録され(第1相試験66人、第2相試験71人、ALK融合遺伝子陽性のNSCLC患者は79人[58%])、全例に投与された。 第2相試験の集団別奏効率は、集団1が100%(4/4人)、集団2が74%(31/42人)、集団3が0%(0/1人)、集団4が17%(3/18人)、集団5が83%(5/6人)であった。

ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者集団における有効性

・ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者すべての確定奏効率は66%(52/79人)で、うち完全奏効(CR)は9%(7人)、部分奏効(PR)は57%(45人)であった。 ・ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者で、クリゾチニブ治療歴のある患者集団の確定奏効率は62%(44/71人)で、CRが6%(4人)、PRが56%(40人)であった。そして、無増悪生存(PFS)期間中央値(13.2カ月)は、直接比較ではないものの、同様にクリゾチニブ治療後に他のALK阻害薬で治療した患者集団における報告(6.9~8.9カ月)より長かった。 ・ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者で、クリゾチニブ治療歴のない患者集団の確定奏効率は100%(8/8人)で、CRが38%(3人)、PRが63%(5人)であった。 ・ALK融合遺伝子陽性NSCLC患者のうち、頭蓋内転移のある患者集団の頭蓋内奏効率は50%(3/6人)であった。

脳転移患者に対する有効性

ブリガチニブのCNS転移巣への効果は顕著であった。クリゾチニブ治療後に進行した患者では脳への転移が頻繁に認められていることから、本試験では対象患者数は少ないものの、ブリガチニブの頭蓋内腫瘍反応は特筆すべきと考えられる。 ALK融合遺伝子陽性のNSCLC患者計79人中、治療開始前に脳転移が確認されていたのは50人(63%)であった。そのうちのpost-hoc解析対象46人中19人に頭蓋内奏効が得られ(完全奏効[CR]12 人、部分奏効[PR]7人)、頭蓋内転移巣が増悪せずに生存した期間中央値は15.6カ月、頭蓋内奏効の持続期間中央値は18.9カ月であった。 また、解析対象46人のうち、脳放射線治療歴のない21人中12人に頭蓋内奏効が得られ(CR 8人、PR 4人)、頭蓋内転移巣が増悪せず生存した期間中央値は22.3カ月、頭蓋内奏効の持続期間中央値は6.6カ月であった。

安全性

第1相増量投与で認められた用量制限毒性(DLT)は、グレード3のアラニンアミノトランスフェラーゼ上昇(1日240mg群)、およびグレード4の呼吸困難(1日300mg群)であった。 全解析対象(137人)において、治療関連のグレード3からグレード4の有害事象はリパーゼ上昇(12人[9%])、呼吸困難(8人[6%])、および高血圧(7人[5%])、治療関連の重篤な有害事象(がんの進行を除く)は、主に呼吸困難(10人[7%])、肺炎(9人[7%])、および低酸素症(7人[5%])であった。ブリガチニブの投与期間中、または最終投与後31日以内の死亡は16人(12%)であった(がんの進行による死亡8人を含む)。 Activity and safety of brigatinib in ALK-rearranged non-small-cell lung cancer and other malignancies: a single-arm, open-label, phase 1/2 trial(Lancet Oncol. 2016 Dec;17(12):1683-1696. doi: 10.1016/S1470-2045(16)30392-8. Epub 2016 Nov 8.) 記事:可知 健太
ニュース 肺がん 非小細胞肺がん

3Hメディソリューション株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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