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米国食品医薬品局(FDA)は2016年10月、免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブ(商品名TECENTRIQ;テセントリク)を非小細胞肺がん(NSCLC)の適応で承認した。適応症は、プラチナ製剤を含む化学療法、上皮増殖因子受容体(EGFR)遺伝子変異陽性もしくは未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子陽性肺癌を対象にFDAが承認している分子標的薬の治療中、または治療後に病勢が進行した転移性NSCLCである。

テセントリクは、プログラム細胞死受容体リガンド1(PD-L1)を認識するモノクローナル抗体である。テセントリクの非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対する第3相試験(OAK、NCT02008227,JapicCTI-142530)の結果について、ドイツLungenfachklinik ImmenhausenのAchim Rittmeyer氏らが2016年12月12日のLancet Oncol Onlineで発表した。

ITT解析対象(無作為化割り付けされた全患者)におけるテセントリク投与群の全生存期間(OS)中央値は13.8カ月で、ドセタキセルによる化学療法(9.6カ月)と比べ4.2カ月有意に延長した(ハザード比(HR)0.73)。その生存ベネフィットは、PD-L1発現レベルや組織型(扁平上皮型、非扁平上皮型)によらず、一貫したOS延長が認められた。

免疫チェックポイント阻害薬アテゾリズマブ(テセントリク) vs タキソテール(ドセタキセル)

2014年3月11日から2015年4月29日、米国、欧州、ロシア、日本、韓国など31カ国、194施設で計1225人が登録され、主解析対象はテセントリク群425人、ドセタキセル群425人の計850人であった。登録の適格基準は、プラチナ製剤を含む化学療法1種から2種の治療歴があるステージIIIBまたはIVの非小細胞肺がん(NSCLC)で、免疫チェックポイント阻害薬やドセタキセルの治療歴を有する患者、および自己免疫疾患の既往歴を有する患者は除外した。1回投与量はテセントリク1200mg、ドセタキセル75mg/m2で、いずれも3週ごとに静注した。腫瘍細胞、または腫瘍に浸潤している免疫細胞に発現するPD-L1発現レベルを予め特定した。

PD-L1発現レベルが低い集団も死亡リスク低下

腫瘍細胞(TC)、および腫瘍に浸潤している免疫細胞(IC)のPD-L1発現レベル別のOS中央値は、レベルTC1/2/3またはIC1/2/3(PD-L1発現1%以上)ではテセントリク群(241人)で15.7カ月、ドセタキセル群(222人)で10.3カ月(ハザード比(HR)0.74、p=0.0102)、12カ月時点の全生存率はそれぞれ58%、43%、18カ月時点の全生存率はそれぞれ44%、29%であった。

レベルTC2/3またはIC2/3(PD-L1発現5%以上)のOS中央値はテセントリク群(129人)で16.3カ月、ドセタキセル群(136人)で10.8カ月(HR 0.67、p=0.0080)、12カ月時点の全生存率はそれぞれ61%、45%、18カ月時点の全生存率はそれぞれ46%、29%であった。

レベルTC3(PD-L1発現50%以上)またはIC3(PD-L1発現10%以上)のOS中央値はテセントリク群(72人)で20.5カ月、ドセタキセル群(65人)で8.9カ月(HR 0.41、p<0.0001)、12カ月時点の全生存率はそれぞれ69%、35%、18カ月時点の全生存率はそれぞれ58%、19%であった。

レベルTC0またはIC0(PD-L1発現1%未満)のOS中央値はテセントリク群(180人)で12.6カ月、ドセタキセル群(199人)で8.9カ月(HR 0.75、p=0.0215)、12カ月時点の全生存率はそれぞれ51%、40%、18カ月時点の全生存率はそれぞれ36%、25%であった。

以上、いずれのPD-L1発現レベルにおいても、テセントリク群のOS中央値はドセタキセル群と比べ有意に延長し、死亡リスクは26%から59%低下することが示された。発現レベルが最も高い集団(レベルTC3またはIC3)での死亡リスクが最も低下したが(59%)、最も低い集団(レベルTC0またはIC0)でも死亡リスクは改善した(25%)。

無増悪生存期間と全生存期間の間にある不一致

ITT解析対象における奏効率は、テセントリク群(14%)、ドセタキセル群(13%)で差はなかったが、奏効持続期間中央値(各16.3カ月、6.2カ月)はテセントリク群が有意に延長した(HR0.34、p<0.0001)。無増悪生存(PFS)期間中央値はテセントリク群2.8カ月、ドセタキセル群4.0カ月であった。

ITT解析対象における奏効率とPFS期間中央値は、テセントリク群がドセタキセル群を上回らなかった。本OAK試験で認められた全生存期間(OS)とPFS期間の不一致、すなわちOSは有意延長したが、PFSは差がないという結果は、PD-1またはPD-L1を標的とする抗体医薬の臨床試験では共通して認められている現象である。不一致の理由は、テセントリクの治療開始後、免疫浸潤が促進して最初は腫瘍体積が増加した結果と考えられた。腫瘍体積が増加すると無増悪ではないためPFS期間に算入されないが、抗腫瘍効果は遅れて認められ、病勢進行と判定された後も抗腫瘍免疫の亢進が持続する。そして、その抗腫瘍免疫は治療の継続により保持され、結果として全生存期間は延長したと解釈することが可能である。

少なくともPD-L1発現レベルが低い患者では、OSを指標とする生存ベネフィットはPFS期間の結果により過小評価されてしまう可能性である。したがって、臨床効果が消失するまでテセントリクの治療を継続した場合のベネフィットとリスクを追跡する必要がある。

PD-L1発現レベルが低い集団は奏効率が低く、高い集団は奏効率が高かった

PD-L1発現レベル別の奏効率で、レベルTC1/2/3またはIC1/2/3の集団(テセントリク群18%、ドセタキセル群16%)はITT解析対象と大差がなかったが、レベルTC3またはIC3の最も高い集団のテセントリク群(31%)は最も高く(同集団のドセタキセル群は11%)、レベルTC0またはIC0の最も低い集団のテセントリク群(8%)はドセタキセル群(11%)より低かった。

PD-L1発現レベルが最も低い集団(1%未満)で奏効率が低いという結果は、抗PD-1抗体の免疫チェックポイント阻害薬の試験、あるいはテセントリクの過去の試験の結果と一致している。PD-L1発現レベルが低いということは、もともとの抗腫瘍免疫能が低い、またはないことを意味する。いわゆるPD-L1陰性の集団でもテセントリクによる全生存期間(OS)の有意延長が認められたことは、治療反応メカニズムの新たな解釈が必要となる。例えば、テセントリクが別の抗腫瘍免疫反応に対する刺激の増強を介して抗腫瘍免疫能を強化しているといった生物学的仮説も考えられる。

Atezolizumab versus docetaxel in patients with previously treated non-small-cell lung cancer (OAK): a phase 3, open-label, multicentre randomised controlled trial(Lancet oncology, Published: 12 December 2016)

記事:可知 健太 & 川又 総江

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