脳腫瘍(膠芽腫)を対象とするキイトルーダの第1相試験結果 SNO2016
[公開日]2016.12.07 [最終更新日]2017.11.13 [タグの追加] 2017/11/13

米国で2016年11月17日から20日に開催された第21回神経腫瘍学会議(SNO)で、米国Dana-Farberがん研究所のDavid A. Reardon氏らは、免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)単剤の脳腫瘍の1種である膠芽腫(GBM)患者に対する有効性、および安全性について発表した。
切除不能または転移ありで、化学療法歴のある患者25人中13人に効果(病態コントロール)を示唆
第1相非盲検試験(KEYNOTE-028、NCT02054806、JapicCTI-142515)は、20のがん種の進行固形がん患者を対象として実施された。そのうち、膠芽腫患者の適格基準は、ベバシズマブの治療歴がなく、切除不能、転移ありの一方または両方を満たし、過去の標準治療が効かなかった患者で、腫瘍、または間質細胞のプログラム細胞死受容体1リガンド(PD-L1)発現レベルが1%以上とした。キイトルーダは10mg/kgを2週ごとに最長24カ月にわたり静注した。
その結果、2016年2月17日のデータカットオフ時点で、登録された神経膠芽腫患者はいずれも化学療法歴を有する26人で、追跡期間中央値は61.9週間、22人(84.6%)はキイトルーダの治療を中止していた。治療に関連するグレード3からグレード4の有害事象は4人(15.4%)に認められた(リンパ球減少症、2型糖尿病、関節炎、失神)。治療関連有害事象を理由とする死亡例、または治療中止例はなかった。
解析対象25人中、部分奏効(PR)が1人に認められ、奏効率は4.0%であった。さらに、病勢安定(SD)が12人(48.0%)に認められ、SDの持続期間中央値は39.4%であった。無増悪生存(PFS)期間中央値は2.8カ月、全生存期間(OS)中央値は14.4カ月であった。
以上、キイトルーダは、脳腫瘍の中でも治療が難しい膠芽腫(GBM)患者を対象として単剤で抗腫瘍効果の可能性を示唆し、安全性はPD-1を標的とする他の免疫療法と同様で、新たな問題は発生しなかった。
GBMは脳腫瘍の中でも悪性度が最も高く(グレード4)、発症からの症状進行が急速で、摘出術、放射線照射、あるいは標準化学療法(テモダール)で進行を阻止することは困難とされる。生存期間中央値は1年程度。新たな概念の治療戦略が待ち望まれている。
記事:川又 総江
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