多発性骨髄腫 初の抗体医薬エロツズマブ(エムプリシティ)発売


  • [公開日]2016.11.21
  • [最終更新日]2017.06.29

11月18日、ブリストル・マイヤーズ スクイブは、抗SLAMF7(エスラムエフセブンSignaling Lymphocyte Activation Molecule Family member 7)抗体であるエロツズマブエムプリシティ®)を発売したと発表した。

エムプリシティは、2015 年11 月に希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受け、2016年9月28日に、再発又は難治性多発性骨髄腫の適応で、レナリドミド及びデキサメタゾンとの併用において、厚生労働省より製造販売承認を取得していた。

既に、米国においては2015年11月に米国食品医薬品局(FDA)より、欧州においては2016年5月に欧州委員会(EMA)より承認されており、ドラッグラグが解消されたこととなる。

エムプリシティは、再発又は難治性の多発性骨髄腫患者を対象とした日本人症例60 例を含む国際共同ランダム化非盲検第Ⅲ相臨床試験であるELOQUENT-2(CA204-004)試験において、標準療法であるレナリドミド(レブラミド)+デキサメタゾン(Ld 群)に対し、レナリドミド+デキサメタゾンにエムプリシティを加えることにより(E-Ld 群)、無増悪生存期間PFS)の有意な延長および奏効率ORR)が改善した。また、E-Ld 群の安全性プロファイルはLd 群とほぼ同等だった。

再発多発性骨髄腫 分子標的薬エロツズマブ 死亡リスクを30%低下 ASCO2015(オンコロニュース20161121)

エムプリシティの作用機序

エムプリシティは、骨髄腫細胞やNK 細胞の細胞表面に発現しているSLAMF7 というタンパクと特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体(IgG1 クラス)。エムプリシティが骨髄腫細胞表面のSLAMF7 に結合すると、NK 細胞が認識するためのタグとなり、エムプリシティのFc領域とNK細胞上のFc受容体が結合し、NK 細胞による抗体依存性細胞傷害(ADCC)が誘導され骨髄腫細胞が死滅する。また、in vitro(試験実験内)においては、エムプリシティがNK 細胞表面のSLAMF7 に結合することでNK 細胞が直接活性化され、骨髄腫細胞を攻撃し骨髄腫細胞の細胞死を誘導される。このようにエムプリシティは、NK 細胞と骨髄腫細胞に対する二つの作用で抗骨髄腫効果を発揮すると考えられている。
*ブリストル・マイヤーズ スクイブ社プレスリリース参照

SLAMF7

◆製品情報◆
エムプリシティ点滴静注用300mg、同400mg(エロツズマブ(遺伝子組換え)、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬(注射薬)
効能・効果:「再発又は難治性の多発性骨髄腫」
薬価:300㎎1瓶 16万0696円、400㎎1瓶 20万9587円

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ブリストル・マイヤーズ スクイブプレスリリースはコチラ

記事:可知 健太

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