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非小細胞肺がん初回治療 キイトルーダと化学療法の併用で奏効率55% Lancet Oncol

[公開日] 2016.11.10[最終更新日] 2016.11.10

非扁平上皮型非小細胞肺がん 免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダの化学療法併用第2相試験

カルボプラチン+ペメトレキセドに追加する一次治療で奏効率が26%上昇 Lancet Oncol

プログラム細胞死受容体1(PD-1)標的抗体の免疫チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ)が、非扁平上皮型非小細胞肺がん(NSCLC)患者の一次治療として、化学療法2剤に追加することにより奏効率が向上したことが示された。米ペンシルバニア大学AbramsonがんセンターのCorey L Langer氏らが第2相試験(KEYNOTE-021、NCT02039674)の結果を2016年10月9日のLancet Oncol Onlineに発表した。 キイトルーダは、日本では2016年2月に、PD-1リガンド(PD-L1)発現陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)の二次治療以降の適応で承認申請され、現在審査中である。米国では、同様の適応症では2015年10月に承認されており、米Merck社は2016年10月25日、PD-L1高発現の転移性NSCLC(EGFR陽性、またはALK陽性を除く)の一次治療でも米国食品医薬品局(FDA)による承認を取得したと発表した。これは、類薬のニボルマブ(オプジーボ)を凌駕する勢いである。

「キイトルーダ+カルボプラチン+アリムタ」 vs 「カルボプラチン+アリムタ」

KEYNOTE-021は米国の23施設、台湾の3施設で実施された無作為化非盲検試験で、化学療法歴のないステージIIIBまたはIVの非扁平上皮型非小細胞肺がん(NSCLC)で上皮増殖因子受容体(EGFR)、または未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)遺伝子異常のない患者を対象とし、カルボプラチン(1分あたりAUC=5mg/mL)+ペメトレキセド(商品名アリムタ)(500mg/m2)とキイトルーダ(200mg)を併用投与する群(キイトルーダ併用群)、またはカルボプラチン+アリムタ群(化学療法2剤群)に割り付け、いずれも3週ごとに4サイクル静注した。以降は維持治療として、キイトルーダ併用群はキイトルーダの治療を24カ月とアリムタの維持用量で継続し、化学療法2剤群はそのまま最長4サイクル反復後、アリムタの維持用量を投与した。主要評価項目は奏効率であった。 2014年11月25日から2016年1月25日に登録された123人のうち、60人はキイトルーダ併用群に、63人は化学療法2剤群に割り付けられた。データカットオフ2016年8月8日までの追跡期間中央値は10.6カ月であった。

キイトルーダ併用群の治療6か月後の病勢進行はわずか2人、奏効持続は92%、しかし全生存期間に差がつかず

データカットオフ時点で、実際に治療を受けたキートルーダ併用群の47%(28/59人)、化学療法2剤群の31%(19/62人)が治療を継続していた。また、化学療法2剤併用群の32%(20/62人)は、試験プロトコールに基づきセカンドラインとしてキイトルーダ単剤治療に切り替えていた。このことをクロスオーバーという。 奏効率は、キイトルーダ併用群で55%(33/60人)、化学療法群が29%(18/63人)と、26%も高い奏効率となり、統計学的有意差に達した。キイトルーダ併用群、化学療法2剤群ともに完全寛解(CR)は認められず、すべて部分寛解(PR)であった。奏効に到達するまでの期間中央値はそれぞれ1.5カ月、2.7カ月で、奏効持続期間は中央値の特定に至っていないが、データカットオフ時点で病勢進行することなく生存していた患者割合はそれぞれ88%(29/33人)、78%(14/18人)であった。カプラン-マイヤー法により算出した治療後少なくとも6カ月の時点で奏効が持続していた患者割合は、キイトルーダ併用群92%、化学療法2剤併用群81%で、病勢進行と判定された患者割合は、キイトルーダ併用群(3%[2/60人])が化学療法2剤併用群(17%[11/63人])より大幅に低かった。 キイトルーダ併用群の奏効率は、腫瘍のPD-L1発現レベル1%未満、同1%以上の患者集団別奏効率(各57%[12/21人]、54%[21/39人])に差はなかった。50%以上の患者集団(80%[16/20人])は1%から49%の患者集団(26%[5/19人])より約3倍高かった。 また、無増悪生存期間(PFS)について、キイトルーダ併用群は13か月、化学療法2剤群は8.9か月であり、病態進行リスクを47%軽減した。(HR 0·53 [95% CI 0·31–0·91]; p=0·010) ただし、生存期間中央値(MST)という結果はまだ出ていないものの、全生存期間(OS)については2群間の差はほとんどなさそうである。この原因はクロスオーバーの影響が予想されるが、奏効率が高いだけでは非小細胞肺がんの初回治療に使用する決め手にならなそうである。

併用使用によるキイトルーダ特有な有害事象発現率は約2%

いずれかの治療群で3人以上に発現したグレード3以上の治療関連有害事象は、貧血(キイトルーダ併用群12%、化学療法2剤併用群15%)、好中球数減少(各5%、3%)、血小板減少症(各3%、3%)、リンパ球数減少(各3%、2%)、好中球減少症(各3%、2%)、および敗血症(各3%、2%)であった。 キイトルーダの作用機序から懸念される免疫関連の有害事象のうち、グレード3は間質性肺炎(1人[2%])、重度皮膚反応(1人[2%])、グレード4は静注反応(1人[2%])で、過去に実施された非小細胞肺がんを対象とするキイトルーダ単剤試験と同様、免疫関連有害事象のほとんどはグレード1またはグレード2で、治療を中止することなく管理・対処可能であった。 Carboplatin and pemetrexed with or without pembrolizumab for advanced, non-squamous non-small-cell lung cancer: a randomised, phase 2 cohort of the open-label KEYNOTE-021 study(Volume 17, No. 11, p1497–1508, November 2016, Lancet Oncology) キイトルーダ(ペムブロリズマブ)とは PD-1抗体とPD-L1抗体の違いについて 記事:可知 健太
ニュース 肺がん 免疫チェックポイント阻害薬

3Hクリニカルトライアル株式会社 執行役員 可知 健太

オンコロジー領域の臨床開発に携わった後、2015年にがん情報サイト「オンコロ」を立ち上げ、2018年に希少疾患情報サイト「レアズ」を立ち上げる。一方で、治験のプロジェクトマネジメント業務、臨床試験支援システム、医療機器プログラム開発、リアルワールドデータネットワーク網の構築等のコンサルテーションに従事。理学修士。

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