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若いがん患者の終末期医療で不要なケアが減っていない~エンドオブライフケアを考える~ASCO2016

[公開日] 2016.06.16[最終更新日] 2016.06.16

6月3日~6月7日にシカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO:アスコ)のAnnual Meeting(年次総会)において、65歳以下のがん患者28000人以上を対象にエンドオブライフケアを調査した初の大規模試験の結果が、米国ノースカロライナ大学のRonald C.Chen氏により発表された。がん終末期医療に関する「ASCO’s Choosing Wisely(賢い選択を)」が2012年に発行されてから32カ月が経過していたが、治癒の見込めないがん患者に対する化学療法、放射線療法など積極的治療が減っておらず、不要な治療の乱用であると結論した。

死亡直前30日間に積極的治療を受けている患者は7割にものぼる

米国の14の州のブルークロス・ブルーシールドに登録された約6000万人のデータベース(HealthCore Integrated Research Database)から、2007年1月から2014年12月に65歳以下で死亡した転移性の肺がん、大腸がん、乳がん、膵臓がん、もしくは前立腺がん患者28731人を対象に解析した。死亡日直前の30日間において、積極的治療を受けた患者の割合は71~76%で、そのうち30~35%の患者は病院で死亡していた。 積極的治療には、生検などの侵襲的処置、がんに直接作用する化学療法や放射線療法、入院/緊急治療室入室、集中治療室(ICU)入室、および病院内での死亡を含む。専門家のあいだでは、人生終焉の直前に用いられるこうした積極的治療は、患者にとって有害であっても有益になる可能性は少ないと広く認識されている。 調査でわかったことは、これら5つのがん種すべてに共通して最も多かった積極的治療は、死亡直前30日における入院、もしくは救急治療室入室で、全解析対象の62%~65%を占めたこと、一方で、ホスピスケアを利用したのは14%~18%にとどまったことである。積極的治療のうち、化学療法を受けたのは24%~33%、放射線療法を受けたのは6%~21%、侵襲的処置を受けたのは25%~31%、ICUに入室したのは16~21%であった。 エンドオブライフに関するASCOの推奨は患者向けのもので、歩行不可能で1日のほとんどをベッドや椅子で過ごすような全身状態が悪い患者、すでに受けたエビデンスに基づく治療介入によって有益性が得られなかった患者、臨床試験に参加するのが不適格の患者、そして、さらなるがん治療をすることの臨床的意義を支持するようなしっかりとしたエビデンスがない患者を対象としている。

エンドオブライフの積極的治療を減らすことが重要

Chen氏らによると、がん種にかかわらず6割以上の患者が死亡直前の30日間に病室や緊急部門にいたことは、エンドオブライフの終わりに極めて近い状態にあっても、患者は症状を和らげる医療ではなく、積極的な医療を求めて止まないことを意味している。症状緩和を目的とした医療であれば自宅で受けることもできるのに、である。 Chen氏は言う。「ASCOの推奨はエンドオブライフでの積極的治療を減らすための重要な第1段階。しかし、ガイドラインの推奨のみでは医療の現場に変化をもたらすには不十分である。特に、緩和ケアとホスピスについて医師と患者の双方の認識を深めるより良い方法が必要であり、患者がより近づきやすいエンドオブライフケアを作っていくのが我々の仕事である」 記事:川又 総江
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