術後補助化学療法として、ジェムザールにゼローダを上乗した方が生存期間を延長
6月3日~6月7日にシカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO:あすこ)のAnnual Meeting(年次会議)にて、「膵臓がんの根治的手術後の術後補助化学療法について、ゲムシタビン(ジェムザール)にカペシタビン(ゼローダ)を追加する第3相臨床試験結果」が、英リバプール大学John P. Neoptolemos氏によって発表された。本演題は、Late-Breaking Abstracts(最新演題の抄録;LBA)となり、「従来の治療への新規アプローチに関する演題」として6月3日に記者会見が開かれた。
5年生存率は16.3%から28.8%に改善
本試験は、手術後12週間以内の初期膵臓がん患者732症例対象に実施された。
*全てR0切除又はR1切除(肉眼的に腫瘍を取り除けた患者)
参加した患者は、術後補助化学療法として「ゲムシタビン単剤群」または「ゲムシタビンとカペシタビンの併用群」に1:1にて割り付けられ、24週間治療を行った。
有効性と安全性に関する結果
【生存期間の中央値】
ジェムザール/カペシタビン併用療法:28.0か月 (95% CI, 23.5 – 31.5)
ジェムザール単剤:25.5か月(95% CI, 22.7 – 27.9)
*死亡リスクを18%軽減(HR=0.82 [95% CI, 0.68 – 0.98];P=0.032)
【治療開始5年後の生存割合】
ジェムザール/カペシタビン併用療法:28.8%
ジェムザール単剤:16.3%
【グレード3以上の有害事象】
ジェムザール/カペシタビン併用療法:359人中226人に発現
ジェムザール単剤: 366人中196人に発現
*上記に統計学的な差は認められなかった。
【その他】
重傷な下痢(14人 vs 5人)および重症が倦怠感(16人 vs 14人)はやや多く認められた。
クオリティーオブライフは差が認められなかった。
Neoptolemos氏は、「生存期間の中央値の差は控えめに見えるかもしれないが、長期生存が実質的に伸びてきている。手術単独では8%であった5年生存率が30%近くとなった」と述ている。
ESPAC-4: A multicenter, international, open-label randomized controlled phase III trial of adjuvant combination chemotherapy of gemcitabine (GEM) and capecitabine (CAP) versus monotherapy gemcitabine in patients with resected pancreatic ductal adenocarcinoma. (ASCO2016 Abstract No:LBA4006)
日本では術後補助化学療法としてTS-1単剤が有効。5年生存率は24.4%から44.1%
上記は欧州の研究グループが実施した試験である。
日本では、術後補助化学療法として「ゲムシタビン単剤」と「S-1(ティーエスワン)単剤」とを比較した臨床試験(JASPAC 01)が実施されており、最新のアップデート情報が6月2日のLancetの電子版に掲載されている。主著者は、静岡県立静岡がんセンター上坂克彦氏。
この試験には手術を施行したステージ1~3すい臓がん患者385人が参加しており、生存期間の中央値は「ゲムシタビン22.5か月、S-1 46.5か月(P<0.0001)」、5年生存率は「ゲムシタビン24.4%、S-1 44.1%」となっている。
*2つの臨床試験を単純に比べることはできないことに注意
日本では、上記試験の結果により、すい臓がんの術後補助化学療法としてはS-1が推奨されている。
Adjuvant chemotherapy of S-1 versus gemcitabine for resected pancreatic cancer: a phase 3, open-label, randomised, non-inferiority trial (JASPAC 01)(The Lancet Published Online: 02 June 2016)
記事:可知 健太