3月4日、世界5大医学誌the Lancet(ランセット)にて、進行膀胱がん(尿路上皮がん)に対する免疫チェックポイント阻害剤PD-L1アテゾリズマブ(米国商品名TECENTRIQ)を使用したときの第2相臨床試験(IMvigor 210)結果が掲載された。

アテゾリズマブは、抗PD-L1抗体製剤である。PD-L1抗体製剤は、腫瘍細胞上のPD-L1に結合することにより、主にキラーT細胞による免疫応答へのブレーキをを解除することにより、免疫応答による抗腫瘍効果が期待される免疫製剤の1つである。この仕組みの薬剤を免疫チェックポイント阻害剤と呼ぶ。また、PD-L1タンパクは腫瘍細胞に発現しているほか、免疫細胞(主に樹状細胞やマクロファージなどの抗原提示細胞)に発現していることが明らかになっている。

今回の試験では、プラチナ製剤による治療歴を有する進行・転移尿路上皮がん患者を対象にした試験である。

転移を有する尿路上皮がんの治療は主にプラチナ系薬剤を主に使用するが、病勢が進行した後は、数少ない限られた治療法しか残っていない。そこで、アテゾリズマブが、新たな治療の選択肢となりうるかどうかを検証するために実施された。

腫瘍組織への免疫細胞の浸潤が多い場合、1年目生存率は約50%

試験概要

この試験では進行・転移尿路上皮がんにおいて、プラチナ製剤による化学療法を実施後にがんが悪化した方、または術前化学療法および術後補助化学療法を含むプラチナ製剤使用後12カ月以内にがんが悪化した方の合計310名を対象にした試験である。

図3

この試験は、腫瘍組織上のPD-L1タンパク発現を確認は勿論のこと、腫瘍組織に浸潤してきた免疫細胞上のPD-L1タンパク発現量を確認している。ICスコア(Immune Cell score;免疫細胞スコア)が大きいほど免疫細胞上のPD-L1発現量が多い。

図4

尿路上皮がんの内訳は皮下の通り。

図5

効果に関する結果

腫瘍組織に浸潤している免疫細胞が多い方が高い奏効が得られた。

図6

生存期間についても同様の結果であった。

図7

図8

【補足】
この記事を書いているときに、慶応義塾大学先端医科学研究所(日本がん免疫学会理事長)の河上裕教授に会う機会があったため、本文献の「IC(免疫細胞)」の意味を聞いたところ、主に抗原提示細胞の一種であるマクロファージが染色されているとのこと。ただし、腫瘍組織に浸潤しているマクロファージの量は腫瘍組織に浸潤している(または浸潤していた)キラーT細胞とある程度相関性があるとのこと。
現在、PD-1/PD-L1経路の免疫チェックポイントを抑制しても、そもそもキラーT細胞が腫瘍組織に浸潤してきていない場合は効果がないと考えられている。現在、免疫チェックポイント阻害剤は効果がある方には強く持続的な奏効が認められる一方、効果がない方は全く効果がないため、バイオマーカーの特定と検査手法の開発が急務であると言われている。腫瘍組織上のPD-L1は勿論のこと、腫瘍組織浸潤免疫細胞におけるPD-L1もその候補の1つである。

安全性に関する結果

有害事象については全体的に少ない傾向が示唆された。

図9

まとめ

◆ プラチナ系薬剤で治療したにもかかわらず病勢進行を認めた切除不能局所進行・切除不能の尿路上皮がんにおいて、腫瘍浸潤免疫細胞にPD-L1が高く発現している患者で、奏効率、全生存期間や12 ヶ月時点の生存率のメリットが得られた。

◆ 副作用発現では、全体的に少ない傾向が示唆されましたが、発現内容については、グレードに応じた正しい対応が必要となる。

Atezolizumab in patients with locally advanced and metastatic urothelial carcinoma who have progressed following treatment with platinum-based chemotherapy: a single-arm, multicentre, phase 2 trial.(Jonathan E Rosenberg et al, Lancet, 2016; 387: 1909–20)

なお、本結果をもとにFDAは5月18日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、膀胱がんのうち尿路上皮がんに対して、免疫チェックポイント阻害剤PD-L1抗体アテゾリズマブを承認したと発表している。なお、膀胱がんに対しての免疫チェックポイント阻害剤の承認は今回が初めてである。

膀胱がん FDA(米国) 免疫チェックポイント阻害薬PD-L1抗体アテゾリズマブ 承認(オンコロニュース2016/05/19)

記事:前原 克俊、可知 健太


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