■この記事のポイント ・腫瘍溶解性ウイルス「G47Δ」が悪性神経膠腫(脳腫瘍)適応にて、先駆け審査指定制度対象品目に指定 ・これにより審査期間の短縮等様々な恩恵が受けられる ・がんウイルス療法としては日本初の第2相試験実施中。早期終了→良好結果が待たれる
2月10日、厚生労働省は、昨年12月までに指定申請があった医療機器6品目、再生医療等製品13品目、体外診断用医薬品2品目について評価を行い、5品目を「先駆け審査指定制度」の対象品目として指定しました。 がん分野においては、「悪性脳腫瘍(神経膠腫)」への適応を目的とした、腫瘍溶解性ウイルス「G47Δ」が指定されています。 「G47Δ」は、制限増殖型遺伝子組換え単純ヘルペスウイルス1型となります。東京大学・医科学研究所・先端がん治療分野・藤堂 具紀教授のシーズを元に、藤堂教授と共同で第一三共(株)が開発を行う予定です。 指定理由は以下の通り。 (1)ウイルスを用いたがん治療法(ウイルス療法)であり、新規作用機序を有する。 (2)悪性神経膠腫は、生命に重大な影響がある重篤な疾患である。 (3)臨床研究により、極めて高い有効性を示唆する結果(1年生存率の向上)が得られている。 (4)藤堂教授中心に医師主導で国内臨床試験を実施中であり、世界に先駆けて日本で承認申請予定。 「先駆け審査指定制度」に基づき、医療機器及び再生医療等製品を指定(厚労省) 第一三共プレスリリース 【腫瘍溶解性ウイルス(ウイルス療法)とは】 腫瘍溶解性ウイルスとは、がん細胞に感染してこれを細胞死させるウイルスの総称となります。 がん細胞は正常細胞に比べウイルス感染に弱く、がん細胞にウイルスが感染するとウイルスがよく増えることは昔からよく知られており、臨床応用への可能性の研究が模索されていましたが、ウイルスの作用を制御することができませんでした(毒性の問題)。一方、患者に害は無くとも免疫反応が活性化される事でウイルスが破壊されてしまう問題もありました(有効性の問題)。 しかしながら、遺伝子組換え技術が発達してからは、がんだけで増殖するウイルスを人工的に造ることが可能になり、ウイルス療法の臨床開発が行われるようになりました。 がん細胞だけで増えるように工夫された遺伝子組換えウイルスは、がん細胞に感染するとすぐに増殖を開始し、その過程で感染したがん細胞を死滅させます。増殖したウイルスはさらに周囲に散らばって再びがん細胞に感染し、ウイルス増殖→細胞死→感染を繰り返してがん細胞を次々に破壊していきます。一方、正常細胞に感染した遺伝子組換えウイルスは増殖できないような仕組みを作ってあるため、正常組織は傷つきません。また、免疫反応にも、ある程度耐えうるウイルスの開発が進んでいます。 なお、遺伝子組み換えウイルスを用いることから、ウイルスベクターを用いたがん遺伝子療法と混同されがちですが、がん細胞の遺伝子を組み換えわけではないため、異なる治療法となります。
