■この記事のポイント
・進行尿路上皮がん患者に対して免疫チェックポイント阻害薬PD-L1抗体アテゾリズマブが有効な可能性である発表
・PD-L1が高発現なほど効果が認められる一方、発現していなくとも効果がある方も存在する
・PD-L1が高発現の場合の完全奏効率は8%、生存期間も5か月ほど長い。


1月7日から9日まで米国サンフランシスコで開催された米国臨床腫瘍学会泌尿器がんシンポジウム(ASCO GU2016)で、米国Kimmel Cancer CenterのJean Hoffman-Censitis氏によって、「進行尿路上皮がんにおけるアテゾリズマブの効果を確認する第2相試験(IMvigor 210試験)」が発表されました。

アテゾリブマブ(MPDL3280A)はPD-L1抗体です。オプジーボやペムブロリズマブの標的であるPD-1と対になるPD-L1というタンパク質に結合する免疫チェックポイント阻害薬です。

本試験は北米及び欧州諸国で実施され、「プラチナ製剤ベースの化学療法を施行中または施行後に増悪した患者(治療数は問わない)」、または「治療歴はないが、初回治療としてのプラチナ製剤ベースの治療が適用とならない患者」となり、合計310名の方が参加しました。

参加した患者は、アテゾリズマブ1,200mgを3週間に1度 点滴静注で投与され、この治療薬のメリットがなくなるまで投与されました。

PD-L1タンパク発現が高い方がより効果があり、完全奏効も8%

ポイントは以下の通りです。
【PD-L1タンパク発現】
◆IC 0(<1%)の患者は103人、IC 1(1%≦~<5%)の患者は107人、IC 2/3(5%≦)が100人
*数字が大きくなるほどPD-L!タンパク量が多い。

【試験の結果】
◆奏効率(腫瘍が一定以上縮小した患者の割合)
・PD-L1発現がIC 2/3と高い患者(100名)では、奏効率は27%
・PD-L1発現がIC 1~3と判断された患者(207名)では、奏効率は18%
・患者さん総数である310名の患者の奏効率は15%

◆完全奏効率(腫瘍消失)
・完全奏効と確認されたのは、IC 2/3患者で11%、IC 1/2/3患者で6%、IC 1患者で17%、IC 0患者で2%、全体で5%でした。

◆無増悪生存期間(がんの進行を抑える期間)の中央値
・PD-L1のタンパク発現量を問わず2.1か月であり、同様の結果だった。
・投与開始から6ヶ月時点でのがんが進行しなかった指標では、IC 2/3の患者で30%、IC 0/1の患者で17%でした。

◆全生存期間
・IC 2/3の患者で11.4か月、IC 0/1の患者では6.7か月
・1年生存率の指標では、IC 2/3の患者が48%、IC 0/1の患者は30%でした。

【安全性(副作用発現)】
・倦怠感 30%、グレード3以上(中等度~重度以上)の重篤なものは16%
・吐き気 14%、グレード3以上の重篤なものは2%
・食欲不振 12% グレード3以上はなし
・掻痒症 10% グレード3以上はなし
・肺炎 2% グレード3以上の重篤なものは1%

【結論】
局所進行または転移を有する尿路上皮がんでプラチナ製剤ベースの化学療法による治療歴がある患者に対し、アテゾリズマブが有効である可能性が改めて明らかとなりました。

IMvigor 210, a phase II trial of atezolizumab (MPDL3280A) in platinum-treated locally advanced or metastatic urothelial carcinoma (mUC). (ASCO-GU2016 Abstract355)

A Study of Atezolizumab in Patients With Locally Advanced or Metastatic Urothelial Bladder Cancer [IMvigor210](NCT02108652)

参考
【進行・転移性膀胱がんと治療成績について】
尿路(腎盂、尿管、膀胱、尿道)に発生する癌です。最も発生頻度の高いのは膀胱癌で、泌尿器科系悪性腫瘍の中では、前立腺癌に次いで多い癌です。組織型は移行上皮癌が約95%で、上部尿路(腎盂、尿管)に癌がある場合、その約30%で膀胱癌が発見され、逆に膀胱癌の5%以下で上部尿路の癌が発見されることがあります。

現在の標準的治療は主に殺細胞性抗がん剤によるものが主であり、全生存期間は10か月未満であり、罹患してしまうと生存期間が非常に短い疾患です。

【アテゾリズマブについて】
がん細胞は、私たちひとに必ず備わっている免疫から逃避して、生きようとするシステムが備わっており、生存し続けることが医学的に証明されています。その免疫から逃げるためにがん細胞が利用しているひとつに、PD(プログラムドデス)というタンパクがあります。
通常、免疫は、ウイルスなどひとにとって不都合な物質をやっつけるために、生まれた時から体の中に備わっているものですが、ずっと免疫が働き続けると何もウイルスや細菌がない時でも働いてしまうため、自己免疫疾患と呼ばれる多くの不都合な病気を引き起こしてしまいます。
そこで、免疫の中で、不都合を起こさないようにブレーキをかける役割を持つ機能があり、それを調節しているタンパクの一つがPD(プログラムデス)と呼ばれるものがあります。
現在、日本で実際に悪性黒色腫(メラノーマなど)や肺がんに適応を持つ治療薬は、PD-1受容体(プログラムデス・1受容体)に作用して、がん細胞が免疫作用から逃避している状態を解除させ、免疫細胞の一つであるT細胞を活性化して、がん細胞をやっつけるオプジーボ注射がありますが、アテゾリズマブはPD-1受容体に結合するタンパクであるPD-L1(プログラムデス–リガンド1)に結合して、PD-1受容体の作用を
抑制する治療薬です。
結果として、がん細胞が自分勝手にかけたブレーキを外し、通常の免疫機構を担う一つであるT細胞を活性化させます。

関連試験情報
プラチナ製剤併用化学療法歴を有する局所進行又は転移性尿路上皮膀胱癌患者を対象に、MPDL3280A(抗PD-L1抗体)の有効性及び安全性を化学療法と比較する、第III相非盲検多施設共同ランダム化試験

記事:前原 克章(構成・加筆修正:可知 健太)


この記事に利益相反はありません。

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