静岡がんセンター 国内初「AYA世代病棟」を設置~思春期や若年成人層への専門的ケアを~


  • [公開日]2016.01.23
  • [最終更新日]2017.06.30

■この記事のポイント
・静岡がんセンターが「AYA世代病棟」を設置したと発表。AYA世代とは思春期や若年成人層のこと。
・この世代は、「がんの特徴が多様である」、「社会的支援が乏しい」、そして何よりも「精神的な負担が大きい」。
・こういった専門病棟を開設し、集約的治療が臨める環境が全国に浸透するのを期待する。


1月21日、静岡県立静岡がんセンターは、思春期から若年成人層となるAYA世代を同じ病棟に集めた「AYA世代病棟」を設置したと発表しました。

この病棟の中心となる小児科は、さまざまな固型がんに対して年令を考慮した幅広い治療を行っており、整形外科・頭頸部外科・脳神経外科・放射線治療科・陽子線治療科等の診療科による連携治療や、リハビリテーション科、歯科口腔外科、形成外科、腫瘍精神科などの支持療法を担当する診療科、これらを支援する多職種の専門スタッフで対応しているとのことです。

AYA(アヤ)世代とは、「Adolescent and Young Adult(思春期や若年成人)の略」となります。定義は各種ありますが、15-29歳程度の年齢層を含めることが多いです。

AYA世代がん特徴としては以下の通りです。

・発生部位が多臓器にまたがっている
・小児に多くある小児型のがんと大人に多い大人型のがんが混在している
・小児型のがんがAYA世代になって発生する場合や大人型のがんがAYA世代のときに発生するなど、その多様性がみられる
5年生存率の改善の割合をみると、AYA世代は他の世代に比べて極端に低い状況にある
・社会支援が乏しい(小児慢性特定疾患などの公的な補助制度は最長20歳まで、一方、40歳以上が給付対象となる介護保険からも外れる)
・AYA世代のがん患者の絶対数が少く(年間5000名程度発症)、最適で効果の高い優れた治療方針は十分に確立していると言える状況ではない
・多くの医療機関では小児科は15歳程度までの年齢制限があり、それ以降は成人の診療科で診ていることが多く、AYA世代では、シームレスな診療を受けることが難しい

上記に加え、思春期から若年成人は精神的にも不安定な時期であり、配慮したケアが必要と考えます。

静岡がんセンター小児科部長 石田裕二医師はプレスリリース内で以下のように述べています(全文抜粋)。

「全てのこども、若者は夢を持っています。これらの夢は、社会の大切な財産です。この貴重な財産は大切にされるべきです。小児期やAYA世代にがんに罹患することは、その人、その周りの人達にとって、予想もしない大きな出来事で、この大切な夢をむしばんでしまいます。この世代の人達には、この世代にあった特別な医療の姿があると思います。この世代の人達を中心に、医療者が集まり、力を合わせる仕組みをつくります。若者の持つさまざまな力を引き出し、医療者がそこから学び、この世代に関わる多くの診療科と新しい連携の枠組みを作り、適切なAYA世代診療の提案をしたいです。こどもや若い人達を、再び笑顔で、社会におくりだす医療を目指します。 」

静岡がんセンターのプレスリリースはコチラ

今回の静岡がんセンターの試みが全国的に広がることを期待します。

記事:可知 健太

AYA世代とは?

AYAとは、Adolescent and young Adult(アドレッセント アンド ヤング アダルト)の略であり、「思春期と若年成人」という意味です。AYA世代とは、一般的に15歳~29歳(欧米では39歳)を指します。AYA世代のがん患者は、治療中やその後の生活の中で、就学、就職、就労、恋愛、結婚、出産など人生のターニングポイントとなる様々な出来事と向き合う機会が想定され、大人・高齢のがん患者とは異なるAYA世代特有の問題があるとされています。

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