非小細胞肺がん 免疫チェックポイント阻害薬PD-1抗体ペムブロリスマブ(キイトルーダ) 生存期間を延長 Lancet


  • [公開日]2016.01.11
  • [最終更新日]2017.11.13[タグの追加] 2017/11/13

■この記事のポイント
免疫チェックポイント阻害薬PD-1抗体ペムブロリブマブの治療歴がある非小細胞肺がん対象の臨床試験結果が世界5大医学誌の1つであるランセットに掲載。
・既存治療薬より、生存期間、がんを抑制する期間、腫瘍の縮小に対して効果を示した。
・腫瘍細胞上にPD-L1というタンパク質が多く存在する方が効果が高い。
オプジーボと同じ作用機序。米国ではオプジーボと同じく2015年10月に承認済み。日本でも早期申請・承認が待たれる。


12月19日、免疫チェックポイント阻害薬PD-1抗体ぺムブロリズマブ(米国商品名キイトルーダ/キートルーダ)の「治療歴のあるPD-L1陽性進行性非小細胞肺がん(NSCLC)患者対象とした第2/3相臨床試験(Keynote-010)」の結果が世界5大医学誌の1つThe Lancet(ランセット)に掲載されました。この結果は、12月に開催された2015年欧州腫瘍臨床学会アジア大会(ESMO Asia)でも発表されました。

本試験はで日本を含めた世界各国にて行われた第2/3相臨床試験であり、進行非小細胞肺がんのうち、がん細胞上にPD-L1タンパクが発現している化学療法の治療歴のある患者さん1034人に対して、「ぺムブロリズマブ(米国商品名キートルーダ)」または「ドセタキセル(タキソテール)」を以下の用法用量にて使用したときの効果を比較する臨床試験となります。

1.ペムブロリズマブ 2mg/kg(体重1㎏あたりに2mg)を3週毎;344人
2.ペムブロリズマブ 10mg/kg(体重1㎏あたりに10mg)を3週毎;346人
3.ドセタキセル 75mg/m2(体表面積1m2あたりに75mg)を3週毎;343人

全体的にペムブロリズマブが有効、PD-L1タンパクが高い発現を示すとより高い効果が示された

ポイントは以下の通りです。
【生存期間の中央値
◆参加された全ての患者
ペムブロリズマブ2mg/kg群:10.4か月
ペムブロリズマブ10mg/kg群:12.7か月
ドセタキセル群:8.5か月
*ドセタキセルに比べ、ペムブロリズマブ2mg/kgはリスクを29%軽減。統計学的にも証明(P=0.0008)
*ドセタキセルに比べ。ペムブロリズマブ10mg/kgはリスクを39%軽減。統計学的にも証明(P<0.0001)

◆PD-L1タンパクが多く存在する患者
ペムブロリズマブ2mg/kg群;139名:14.9か月
ペムブロリズマブ10mg/kg群;151名:17.3か月
ドセタキセル群;152名:8.2か月
*ドセタキセルに比べ、ペムブロリズマブ2mg/kgはリスクを46%軽減。統計学的にも証明(P=0.0002)
*ドセタキセルに比べ。ペムブロリズマブ10mg/kgはリスクを50%軽減。統計学的にも証明(P<0.0001)

【がんの進行を抑えた期間の中央値】
◆参加された全ての患者
ペムブロリズマブ2mg/kg群:3.9か月
ペムブロリズマブ10mg/kg群:4.0か月
ドセタキセル群:4.0か月
*ドセタキセルに比べ、ペムブロリズマブ2mg/kgはリスクを12%軽減。(95% CI HR:0.74-1.05, P=0.07)
*ドセタキセルに比べ。ペムブロリズマブ10mg/kgはリスクを21%軽減。統計学的にも証明(95% CI HR:0.66-0.94, P=0.004)

◆PD-L1タンパクが多く存在する患者
ペムブロリズマブ2mg/kg群;139名:5.4か月
ペムブロリズマブ10mg/kg群;151名:5.2か月
ドセタキセル群;152名:4.1か月
*ドセタキセルに比べ、ペムブロリズマブ2mg/kgはリスクを41%軽減。統計学的にも証明(P<0.0001)
*ドセタキセルに比べ。ペムブロリズマブ10mg/kgはリスクを4①%軽減。統計学的にも証明(P<0.0001)

【腫瘍を一定上縮小した方の割合】
◆参加された全ての患者
ペムブロリズマブ2mg/kg群:18%(344人中、62人)
ペムブロリズマブ10mg/kg群:18%(346人中、64人)
ドセタキセル群:9%(343人中、32人)
*ドセタキセルに比べ、ペムブロリズマブ2mg/kg、10mgともに高いことを統計学的にも証明(P=0.0002、P=0.0005)

◆PD-L1タンパクが多く存在する患者の「腫瘍を一定上縮小した方」の割合
ペムブロリズマブ2mg/kg群:30%(139人中、42人)
ペムブロリズマブ10mg/kg群:29%(151人中、44人)
ドセタキセル群:8%(152人中、12人)
*ドセタキセルに比べ、ペムブロリズマブ2mg/kg、10mgともに高いことを統計学的にも証明(共にP<0.0001)

安全性
グレード3~5(中等度~重度)の治療に関連する有害事象
ペムブロリズマブ2mg/kg群:13%(339人中、43人に発症)
ペムブロリズマブ10mg/kg群:16%(343人中、55人に発症)
ドセタキセル群:35%(309人中、109人に発症)

◆ペムブロリズマブに特徴的に見られた治療に関連する有害事象
甲状腺機能低下症、甲状腺機能亢進症、肺炎、大腸炎、重度の皮膚毒性、膵炎、副腎不全、筋炎、甲状腺炎、自己免疫性肝炎、下垂体炎、1型糖尿病
*免疫チェックポイント阻害薬は自己免疫系の副作用が特徴とされています。

参考
The Lancet(Published Online: 19 December 2015):Pembrolizumab versus docetaxel for previously treated, PD-L1-positive, advanced non-small-cell lung cancer (KEYNOTE-010): a randomised controlled trial
Clinical trials.gov(NCT01905657):Study of Two Doses of MK-3475 (Pembrolizumab) Versus Docetaxel in Previously-Treated Participants With Non-Small Cell Lung Cancer (MK-3475-010/KEYNOTE-010)

ペムブロリズマブは、米国食品医薬品局(FDA)による進行性悪性黒色腫、および非小細胞肺がんに対する『画期的治療薬』(Breakthrough Therapy)指定を受けて迅速承認され、マイクロサテライト不安定性を高頻度に認める(MSI-H)転移性大腸がんに対する『画期的治療薬』(Breakthrough Therapy)にも指定されています。欧州でも進行性悪性黒色腫に対して承認を取得しています。現在、30種類を超えるがん種に対する開発と160以上の臨床試験が世界各国で進行中です。
*非小細胞肺がんは2mg/kg3週毎の用法用量で承認されています(オンコロニュース2015/10/4)

国内では12月22日に切除不能又は転移性の悪性黒色腫に対する効能・効果について製造販売承認申請を提出されています。膀胱がん、乳がん、胃がん、頭頸部がん、非小細胞肺がん、大腸がん、ホジキンリンパ腫適応症に対して臨床試験が進行中です。また、治癒切除不能な進行・再発の胃がんに対する効能・効果については、厚生労働省から『先駆け審査指定制度』施行後初めての対象品目の1つに指定されています。

MSD株式会社プレスリリースはコチラ

【ペンブロリズマブの日本で実施されている肺がん試験(被験者募集中のみを抜粋)】
 ・PD-L1発現陽性の進行性又は転移性非小細胞肺癌の未治療患者を対象としたMK-3475とプラチナ製剤併用化学療法の全生存期間を比較する無作為化非盲検第III相試験(Keynote 042)(オンコロ内)

記事:可知 健太
キーワード ペムブロリズマブ ペンブロリズマブ pembrolizumab キートルーダ KEYTORUDA

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