■この記事のポイント
・手術にてがんが完全に取り除けなかった乳がん患者に対するゼローダを追加する試験結果を発表。
・ゼローダを追加すると再発リスクを30%減少、5年後までの死亡リスクも40%軽減。
・先日開催したサンアントニオ乳がんシンポジウム2015にて発表された日本と韓国の共同試験結果。


12月8日~12日に開催されたサンアントニオ乳がんシンポジウム2015(SABCS2015)にて、「標準的な術前化学療法と手術後にカペシタビン(商品名ゼローダ)を術後補助療法に追加するという第3相臨床試験(CREATE-X試験)結果」が京都大学の戸井雅和氏によって発表されました。本試験は日本と韓国の2か国にて実施された試験となり、研究実施団体は一般社団法人JBCRG(Japan Breast Cancer Research Group)となります。

手術にて’がん’が完全に取り除けなかった方が対象

本試験の参加条件は以下となります。
・ステージ1~3bのHER2陰性(ハーセプチン無効)の乳がんの方
・リンパ節転移が確認された方
・アントラサイクリン(アドリアシン等)および/またはタキサン(タキソール、タキソテール等)を含んでいる標準術前化学療法を実施した方
・手術にて肉眼的な腫瘍は取り除けたものの、顕微鏡下にて確認したところ腫瘍が完全に取り除けなかった方

要するに、「術前にリンパ節転移が認められたため、術前にハーセプチン以外の抗がん剤にて腫瘍を小さくしてから手術を行ったものの、肉眼では見ることができない’がん’が取りきれなかった方」が対象となりました。

韓国から304名と日本から606名の計910人の患者が参加され、標準療法にゼローダを追加する「ゼローダ群」に440人、ゼローダを追加しない「標準療法群」に445人が割り付けられました。

標準療法としては、ホルモン受容体陽性の場合、放射線療法とホルモン療法が含まれていました。ゼローダ錠は、1日1250mg/㎡を2回服用、2週間連続投与して1週間休薬を8回繰り返しました。

再発リスク30%減少、5年後までの死亡リスクも40%%減少

ポイントは以下の通り。

1. 5年後に乳がんが再発していなかった方の割合は、ゼローダ群74.1%に対し、標準療法群67.6%。リスクは30%減少し、統計学的にも証明(P = .00524)

2. 5年後に生存されていた方の割合は、ゼローダ群89.2%に対して、標準療法群83.9%。リスクは40%減少し、統計学的にも証明P <.01)。

3. ゼローダ錠と関連したグレード3(中等度から重度)の副作用は、手足症候群(10.9%)。手足症候群の全体の72.3%で発生。その他、ゼローダ群では標準療法群よりも副作用が高い傾向にあったのは、好中球減少と(6.6%vs 1.6%)、下痢でした。(3%vs 0.4%)。

この臨床試験は5年の間患者さんを観察するよう計画されました。しかし、ゼローダ錠による補助療法におけるメリットがあると臨床試験を監視した独立委員会から5年間を待たずして、臨床試験中止を推奨することが告げられました。このことは、有効性が高く評価された結果ということが反映されています。

ホルモン療法の結果の特性をを調査している詳細な分析は、全生存期間がどうであるかについて現在実施されおり、費用対効果についても同様に追跡していると戸井氏はコメントしています。

 

<以下、専門家向け補足情報>
・主要評価項目は無増悪生存期間、副次評価項目は全生存期間と安全性。

・ゼローダ群は6サイクルで治療するようにデザインされていたが、中間の安全性の解析をもとに、8サイクルに延長した。

・患者さんの年齢平均は48歳。

・患者のうちの約2/3は、ホルモン受容体が陽性(63.5%)。

・ゼローダ群ではステージ1~2Bは58.9%、3A~3bは40.5%。標準療法群では、ステージ1~2Bは62%、ステージ3A~3Bは37.5%。

・補助療法で内分泌物療法:ゼローダ群では、閉経前患者で42.5%、閉経後患者で24.5%。標準療法群では、閉経前患者で40%、閉経後患者で28.5%。ホルモン療法は初回にゼローダ錠とによって同時に投与された。

・放射線療法においては、ゼローダ群で72.3%、標準療法群で73.5%とそれぞれ治療された。

・3年無病悪生存期間では、標準療法群74.0%に比べて、ゼローダ群では82.8%、3年全生存期間はゼローダ群94%、標準治療群89.2%。早期の見解では全生存期間はまだ臨床統計的に有意ではありませんでしたが、5年時点での分析ではゼローダ群で有意であったと、戸井氏はコメント。

・病期ステージのすべての患者で、ゼローダ群は無病悪生存期間が標準療法より優れていた。リンパ節陽性が1個で術前補助療法と手術後の患者さん339人ではゼローダ群で再発リスクを46%減少。リンパ節陽性のない患者さん345名、リンパ節陽性が2個あるいは3個を持つ患者さん199名では、臨床的ベネフィットはそれぞれ12%と18%であり、ゼローダ群の投与によるメリットは少ない傾向にありました。

・ホルモン受容体の発現がない患者(296名)は、ゼローダ群で再発リスクを48%減少させた(HR、0.58)。一方、ホルモン受容体陽性の患者(561名)では、ゼローダ群の再発リスク減少は16%となった(HR、0.84)。ホルモン受容体や上皮成長因子受容体(HER2)の発現のないトリプルネガティブ乳癌患者さんのゼローダ錠の特性を明らかにするため現在、詳細な分析を行っていると戸井氏はコメント。

・臨床試験に登録された全ての患者で、ゼローダ錠の6サイクルの治療を完遂したのは159名、58%。さらに、38人の患者21.6%の患者でゼローダ錠の減量が必要であり、38名の患者さん18.2%は治療が続けられなかった。8サイクル治療において、280人の患者37.9%は治療を完遂。全体の37.1%の患者がゼローダ錠の減量が必要であり、25%の患者では、治療を続けることがでなかった。

San Antonio Brest Cancer Symposium 2015 HP

JBCRGのニュースリリース:カペシタビンがHER2 陰性・術前化学療法後の腫瘍残存乳がん患者の予後を改善- HER2 陰性乳がんにおける術後カペシタビンの有効性の臨床試験結果を発表 -

本記事は、ESMO会員向けのニュースレター及び一般社団法人Japan Breast Cancer Research Groupを元に作成しています。
記事:前原 克章(構成・修正:可知 健太)


この記事に利益相反はありません。

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