神経内分泌腫瘍 エベロリムス 好成績 ECC2015(9/18日本承認申請済)


  • [公開日]2015.09.29
  • [最終更新日]2015.10.21

 9月25日から29日までオーストラリアのウィーンで開催されている欧州臨床腫瘍学会学術集会(ECC2015)にて、肺原発または消化管原発の神経内分泌腫瘍に対するエベロリムス(商品名アフィニトール)の有効性安全性を確認する第3相試験(RADIANT-4試験)結果がMDアンダーソンがんセンターのJames Yao氏によって発表されました。

 神経内分泌腫瘍は身体機能を調整するさまざまなホルモン生成・分泌する細胞から生じる希少がんで、特に消化管、肺、膵臓に多く発生します。膵臓神経内分泌腫瘍はスティーブジョブズが罹患したことでも有名です。このうち、アフィニトールは進行膵臓神経内分泌腫瘍への有効性が確立されており、日本でも承認されています。しかし、肺および消化管で進行した神経内分泌腫瘍は、満足のできる治療法は確立されていませんでした。

 今回試験は、高分化型(←組織の特徴)の進行肺および消化管神経内分泌腫瘍患者302名がアフィニトル(205名)とプラセボベストサポーティブケア)(97名)に2:1に割り付けられました。最多い原発巣(腫瘍のできた場所)は腫瘍部位は、肺が30%、24%が回腸でした。どちらの群も、この臨床試験を受けるまでに、適切な治療を受けていました。

 ポイントは以下の通りです。

【がんの進行を抑えた期間の中央値
 アフィニトール群で中央値11.0ヶ月、プラセボ群は3.9ヶ月。アフィニトールで治療することにより、病勢進行リスクを52%減少。統計学的にも証明(P<0.00001)。

奏効率(腫瘍が一定以上縮小した割合)】
 アフィニトール群で4名(2%)、プラセボ群で1名(1%)

【腫瘍が進行せず安定していた割合】
 病勢制御率はアフィニトール錠群で有意に高く82%、プラセボ群では65%でした。

【生存期間の中間解析】
リスクを36%減少。現時点では統計学的な有意差は証明されていないため、最終結果に期待。

【安全性】
 最も一般に報告された有害事象グレード1~2(軽度から中程度)は、口内炎、下痢、末梢浮腫、疲労と発疹。
 重篤な副作用であるグレード3~4(中等度から重度)は、アフィニトール群で下痢9%、貧血5%、腹痛5%、口内炎が7%。

 James Yao氏は、「プラセボ群に対し、アフィニトール錠群で臨床的ベネフィットを示す最初の第3相大規模臨床試験であり、臨床において有効性と安全性が示されたことにより、今後の治療選択肢になりうることを裏付けたものである」と結論づけています。

ESMO @ ECC 2015: Progression-Free Survival Prolonged with Everolimus in Patients with Advanced Lung/Gastrointestinal Neuroendocrine Tumours
ESMO:ECC 2015 Press Release: Results of International Trial Show Promise in Rare, Difficult to Treat Cancer: results from the RADIANT-4 trial

 なお、この発表に先駆け、9月18日にノバルティスファーマ株式会社は「アフィニトール®錠2.5mg、5mg」(一般名:エベロリムス、以下「アフィニトール®」)について、消化管または肺を原発部位とする神経内分泌腫瘍の効能追加の承認申請を行いました。

プレスリリースはコチラ

【神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumors: NET)とは】
 身体機能を調節するさまざまなホルモンを生成・分泌する細胞から生じる希少がんで、特に消化管、肺、膵臓に多く発生します。進行した消化管および肺NET患者さんの治療選択肢が限られている中、消化管NET患者さんの最大44%、肺NET患者さんの28%が、既に進行している状態、つまり、がんが転移して治療が困難となった状態で診断されます。2010年に実施された全国実態調査の結果によると、国内の消化管および膵NETの有病者数は、それぞれ8,088人(有病率6.42人/10万人)、3,379人(有病率2.69人/10万人)、新規発症率はそれぞれ3.51人/10万人、1.27人/10万人と推定されおり、近年、発症率は増加傾向にあります4。また,肺NETの患者数は、原発性肺腫瘍の1%~2%と考えられています。

【アフィニトールとは】
 がんの増殖、成長及び血管新生を調整するmTOR(えむとーる)というタンパク質を阻害する薬剤です。mTORが阻害されると、腫瘍細胞の増殖抑制と血管新生阻害(兵糧攻め)という2つのメカニズムで抗腫瘍効果を発揮します。現在、日本では腎細胞がん、膵臓神経内分泌腫瘍、結節性硬化症に伴う腎血管筋脂肪腫または上衣下巨細胞性星細胞腫、進行乳がんにて承認を取得しています。

記事:前原 克章(加筆 可知 健太)

×

会員登録 ログイン