7月27日、日本肺癌学会の運営する第8回肺がん医療向上委員会が開催されました。肺がん医療向上委員会は、肺がん患者さんとそのご家族に安心して最良の医療を提供できるような環境にし、肺がんの予防推進と診断・治療成績向上を目指すことを目的として2013年に設立され、今回は、製薬企業、マスメディアおよび患者会代表者など80名程度が参加しました。オンコロスタッフも参加しています。

注目を集めるがんに対する新しい免疫療法

今回は肺がん医療向上委員長(九州大学・教授)中西医師より

「注目を集めるがんに対する新しい免疫療法」というテーマで講演が行われました。

現在大きな話題を呼んでいる免疫チェックポイント阻害薬について、「免疫とは何か」という基礎的なお話から、免疫療法のメカニズム、そして最新の論文データの注目ポイントまでを非常にわかりやすくお話されていました。

注目ポイントは以下の通りです。

・免疫チェックポイント阻害薬は患者の免疫応答を誘導する治療法である。
・抗PD-1抗体ニボルマブ(オプジーボ)は、がん細胞上のPD-L1タンパクの量が多いほど効果があると予想されていたが、扁平上皮非小細胞肺がんはタンパク量に関係なく効果があるという臨床試験結果となった。ただし、非扁平上皮非小細胞肺がんはタンパク量が多い方が効果がある臨床試験結果であるため、不明点が多い。
・非扁平上皮非小細胞肺がん対象のニボルマブの試験では、非喫煙者には効果がなく喫煙者には効果がある結果であった。
・抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(キイトルーダ/キートルーダ)は、遺伝子変異(異常)が多い方が効果がある論文が発表されている。
・副作用はドセタキセル(タキソテール)よりも少ないものの、特徴的な間質性肺炎を認められることもあり、使用には注意が必要である。

怪しい免疫療法との違いを啓発することが大切

~~講演に対する質疑応答~~
Q:患者さんは、免疫療法が効果があるというニュースなどを見て、怪しげな免疫療法に流れてしまう可能性がある。患者さんからにはどのように説明する必要があるか(患者団体)
A:きちんと科学的なプロセスにて検証されている薬剤か否かが大切である(中西医師)

Q:薬価が高額である。効果があるときはずっと使用するのか。(医療系メディア)
A:現在、どのような方に使用すべきかすら不明な点が多いが、効果のないであろう人に使用するのは間違っているため更なる検証が必要である。医療費については国が決めることであるが、我々医師は、ひとまずお金のことを考えず、目の前の患者に最良な医療を提供するべきである。免疫チェクポイント阻害薬はイレッサやザーコリのように一部のがん患者に効果があるというものではなく、全てのがん患者に効果がある可能性があるため、今までにない議論が必要である。(中西医師)
A:新しい薬剤は高額であるという話題はあるが、今の医療制度は無駄が多いためそれを削減して新しい治療に財源に使用していくという議論も必要である。(中川医師;近畿大学 教授)

Q:(免疫チェックポイント阻害薬は)がんが悪い方が効きやすいという噂があるが本当であるか?また、ファーストラインとして効果があるか?(患者団体)
A:おそらく、悪い方が効果があるであろうと推測はできるけれども実証ができていない。その他の免疫療法は推測の段階で治療として患者さんに使用しているのが問題である。ファーストラインとしても実証はされていないが現在臨床試験実施中である。(中西医師)

オンコロスタッフコメント

中川医師はとても印象的な事をおっしゃっていました。「学会は研究者(医師)がマニアックな研究を発表するだけの場であり、医者とごく一部の製薬メーカーのみが集まっていました。しかしながら、日本肺癌学会では、そこにメディカルスタッフを加え、更に患者さんと向き合っていかなければならないと考えており、そのために肺がん医療向上委員会が設立され、今年の肺癌学会学術集会では患者用のセッションも開催する」とのことです。また、中川医師だけでなく第8回肺がん学会向上員会に参加された医師は皆さん「全ては患者さんのため」と話していました。海外では学会と患者が共に歩むのが当たり前であり、日本はかなり遅れています。日本肺癌学会はその殻を破るべく様々な施策を打っており、オンコロが目指している、がんとがんに関わる全ての人をつなぐという想いと共通のものを感じました。
また、今までオンコロでも免疫チェックポイント阻害薬と今までの怪しげな免疫療法とで何が異なるかという説明がなかったと思いました。現在行っているオンコロリサーチでも免疫療法への興味がとても高いという結果が出ています。免疫療法を全てひとくくりにせず、見てくださる方の理解が深まるような正しい情報をオンコロでも届けていきたいと思います。

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記事:可知 健太


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