悪性黒色腫 イピリムマブ/オプジーボ複合免疫療法 有効性を示唆 ASCO2015


  • [公開日]2015.06.02
  • [最終更新日]2018.02.08[タグの追加] 2017/11/13

5月29日~6月2日にシカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO:あすこ)のAnnual Meeting(年次会議)にて、毎年、応募される5000演題の中で4つしか選出されないプレナリーセッション(学問的に優れた演題)の発表がありました。今年のプレナリーセッションのテーマは「患者のケアに対して最高の科学的利点と最大の影響をもつと考えられる演題」とのことです。

うち1つの演題として、米Memorial Sloan-Kettering Cancer Center(メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター)のJedd D. Wolchok氏が「進行悪性黒色腫(メラノーマ)患者対象の1次薬剤治療として免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブとニボルマブオプジーボ)の複合免疫療法の第3相臨床試験(CheckMate 067試験)結果」を発表しました。

本試験は、進行悪性黒色腫に対して、抗CTLA-4抗体イピリムマブと抗PD-1抗体ニボルマブの複合免疫療法を評価した初の第3相臨床試験となり、「手術不可能または転移を有するステージ3~4の悪性黒色腫で、薬剤療法を実施してない患者」945人が以下のように登録され、主に「無憎悪生存期間(がんの進行を抑えた期間)」と「生存期間」を確認する試験となります。

①「ニボルマブ+イピリムマブ」を4回投与後、ニボルマブ単独で継続(併用群;314人)
②ニボルマブ+プラセボ(偽薬)(ニボルマブ群;316人)
③イピリムマブ+プラセボ(偽薬)(イピリムマブ群;315人)

上記の結果、以下の通りであることが発表されました。
【がんの進行を抑えた期間(PFS)の中央値(一番真ん中の人の値。例えば、7人の身長を測定した場合、4番目に背が高い人の値)】
併用群:11.5か月 vs ニボルマブ群:6.9カ月 vs イピリムマブ群:2.9か月
併用群もニボルマブ群もイピリムマブ群よりも効果があることが統計学的にも効果があると示された(P<0.00001)。
【生存期間の中央値】
半分を超える方が生存しており、解析不可能
【腫瘍縮小効果;奏効率
併用群:57.6% vs ニボルマブ群:43.7% vs イピリムマブ群:19.0%
併用群もニボルマブ群もイピリムマブ群よりも効果があることが統計学的にも効果があると示された(P<0.001)。
完全奏効率(完全にがんが消失)】
併用群:11.5% vs ニボルマブ群:8.9% vs イピリムマブ群:2.2%
【治療による腫瘍量の変化の平均値】
併用群:51.9%減少 vs ニボルマブ群:34.9%減少 vs イピリムマブ群:5.9%増加
【がん細胞上のPD-L1タンパク質の発現レベルによるがん進行を抑えた期間の中央値(高ければニボルマブが効きやすい可能性がある)】
高レベル:併用群14か月 vs ニボルマブ群14か月 vs イピリムマブ3.9か月
低レベル:併用群11.2か月 vs ニボルマブ群5.3か月 vs イピリムマブ2.8か月
有害事象(薬剤との因果関係を問わないCTCAEグレード3-4(中等度から重度)の事象)】
併用群:55.0% vs ニボルマブ群:16.3% vs イピリムマブ群:27.3%
*下痢、リパーゼ値上昇、肝機能値上昇及び大腸炎が多く認められたが、確立されているガイドラインで管理可能だったとのこと。

Wolchok氏は「この試験で最も重要なのは、ニボルマブ単剤でもニボルマブとイピリムマブ併用でも効果が認められたことである。患者個々の毒性レベルにより、患者とDrとが話し合い治療回数を決めることができる」と述べ、また「最終的に重要になるのは生存期間結果である」とも述べたとのことです。なお、第1相試験及び2相試験の結果では、奏効率は53~59%、2年全生存率は79~88%と報告されています。

以下、ASCO2015HPの公開Abstractより拝借しました。わかる方ご参考ください。
2015y06m03d_010715769

本試験には日本は未参加となります。手術不可能な悪性黒色腫対象ではありませんが、ニボルマブとイピリムマブの併用の臨床試験が動いている可能性があります。(カチ)
CheckMate 238試験(clinical trial.gov(英語))

参照
The ASCO POST(英語)
ASCO2015 Abstract(英語)
この試験の情報:Clinical trials.gov(英語)
*わかりやすくするために投与量などについては言及していません。

【免疫チェックポイント阻害薬とは?】
免疫システムが暴走を防ぐために抑制するタンパク質が免疫系の細胞に発現して制御します。これを免疫チェックポイントといいます。がん細胞にもこのタンパク質が発現するためにがん細胞に対する免疫システムが機能しなくなります。免疫チェックポイント阻害薬はこの制御機能を抑制するため、がんに対する免疫システムを作動させることが期待できます。(イピリムマブについては説明準備中)

免疫チェックポイント阻害薬

【ASCO(あすこ)とは?】
American Society of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会)の略称で、世界最大のがん学会となります。年に1回開かれるこの会議では、世界中から約25,000人ものオンコロ ジストが参加され、5000以上にのぼる研究結果が発表されます。

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