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子宮頸がんと向き合う中で見つけた、支えとなる情報とつながり 患者経験者と相談支援の専門家が語る、不安を一人で抱え込まないために

[公開日] 2026.07.03[最終更新日] 2026.07.03

提供:ジェンマブ株式会社
子宮頸がんは、誰にでも起こる可能性のある病気です。日本では比較的若い世代での罹患が課題とされており、仕事や家庭、妊娠・出産など、人生の節目と重なりやすい”がん”でもあります。加えて、子宮頸がんは病気そのものだけでなく、パートナーとの関係や将来のライフプランなど、個人的で繊細な悩みにつながりやすいことから、周囲に相談しづらさを感じる方も少なくありません。 ジェンマブ株式会社が子宮頸がん患者さん300名を対象に行った「治療に関する不安や悩みについての意識調査」1)では、診断告知時の不安として最も多かったのは「治療費用」(39.9%)で、次いで「生活への影響」(39.4%)、「再発の不安」(33.6%)でした。続いて「家族や周囲への影響」(31.9%)、「死への恐怖」(28.8%)も上位に挙がっており、治療そのものだけでなく、日常生活や将来に不安が広がっていることがうかがえます。 今回の対談では、24歳で子宮頸がんと診断された植木さんとがん相談支援センターで相談支援に携わる坂本さんに、診断から治療、必要な情報や支援につながる大切さを実体験を交えてお話しいただきました。
植木朋子さんNPO法人 オレンジティ 理事
24歳で子宮頸がんと診断され手術と放射線療法を経験。27歳の時に再発がわかり、再び放射線療法と薬物療法を行い現在は経過観察中。女性特有の疾患に悩み、葛藤を抱きながら闘病をしてきた経験を経て、女性のがんの体験者を支援するNPO法人の理事を務める。
坂本はと恵さん国立がん研究センター東病院 サポーティブケアセンター/がん相談支援センター 医療ソーシャルワーカー
精神科クリニック、国立がん研究センター中央病院を経て、2004年に国立がん研究センター東病院へ異動、相談支援部門の立ち上げに携わる。現在も医療ソーシャルワーカーとして、がん患者さんやご家族の悩みに寄り添い、がん治療のことから就労・生活支援まで多岐にわたる相談・支援を行っている。

診断とともに押し寄せた、病気と生活への不安

植木さん:私が子宮頸がんの告知を受けたのは、24歳になったばかりの頃でした。体調の異変を感じて婦人科を受診し、詳しい検査を受けて診断に至りました。 告知を受けたとき、もちろん驚きはありました。でも、それ以上に大きかったのは、「これからどう生活していけばいいんだろう」という不安です。ようやく医療事務の資格を取って働き始めて、これからというタイミングでした。病気そのものよりも、生活費や仕事をどうするかのほうが切実な問題として押し寄せてきました。 坂本さん:若い世代のがんでは、そこが本当に大きいですよね。治療だけではなく、仕事や生活、将来をどう描いていくかということまで一度に考えなければならなくなる。子宮頸がんの場合は妊娠や出産、パートナーとの関係といったさらに繊細なテーマも重なりやすいので、不安が何重にもなりやすいと感じています。 植木さん:初発のときは、治療には終わりがあると思っていました。乗り越えたら元の生活に戻れる、またやり直せると考えていたので、家族にも「頑張るね」と言えたんです。 でも、再発したときはまったく違いました。先が見えない不安がいつもあり、表では「元気になるために治療する」と言いながら、心の中ではまったく逆のことを考えていました。「家族を安心させたい」。その思いから、自分の本当の気持ちは言えませんでした。

身近な人にも言えなかった、子宮頸がん特有の話しづらさ

植木さん:再発後の治療がひと段落したとき、家族も友人もすごく喜んでくれました。「これからまた日常を取り戻そう」「仕事もできるよ」と声をかけてくれて、ありがたくも、うれしくもありました。 でも、そのとき本当は「自分は社会に戻れないかもしれない」と考えていたのです。再発したのは20代後半で、治療が落ち着いた頃には30歳。そのころ周りの友人たちは仕事で経験を積んで責任ある立場についていたり、結婚してママになっていたりする人もいました。自分だけが取り残されたように感じていました。 「自分も未来に向かって進まなければ」と思っているのに動けない。周りの人から励まされれば励まされるほど、まるでシャッターが下りるように心を閉ざしてしまった時期がありました。
植木さん
坂本さん:もちろん周囲の方は心配して、よかれと思って声をかけてくださるんですよね。でも、「こうしたほうがいい」「こうなってほしい」という思いが、ご本人を置き去りにしたままちょっとだけ先に行ってしまうことがあって。患者さんは周りの人の思いに応えられないことに対して、感じなくていい申し訳なさまで抱えてしまう。 それに加えて、子宮頸がんは妊娠や出産、パートナーとの関係、からだや性に関することなど、その人の人生や関係性に深く関わる、とても個人的な事柄と重なりやすい病気でもあります。そうした悩みは誰にでもすぐ話せるものではありませんし、誰に相談すればよいのか分からない患者さんも少なくありません。一方で医療者側も、そうした個人的な事柄をどこまでお聞きしてよいのか迷うことがあり、その間に相談のきっかけが生まれにくくなることがあります。 植木さん:当時は私も、自分から相談しようとは思えませんでした。問題を抱えていても、自分自身が「病気について話したい」と思わない限り、なかなか行動にはつながらないんですよね。今振り返ると、自分の本当の気持ちを見ないふりをしていたのかもしれません。本当は誰かに助けて欲しいのに。 坂本さん:自分の病気について受け止め、治療に向かって気持ちを整えながら、その他の問題にまで向き合うのは本当に難しいことだと思います。だからこそ、無理にその場で話してもらうのではなく「必要なときに思い出せる形で情報を届けておく」ことが大切だと感じています。

治療と暮らしを支える、がん相談支援センターの役割

植木さん:再発したときは、経済的な不安もすごく大きかったです。治療を続けたい気持ちはあっても、生活のことを考えるとどうしたらいいのか分からなかった。かなり追い詰められていて、「お金がないから治療できない」と口にしたこともありました。 そんなときに周囲から「まず相談してみたら」と言われたんです。病院の相談窓口につながったことで、公的な制度や選択肢について知ることができました。振り返ると、完全に気力がなくなる前に「助けてほしい」と言えたことは大きな一歩になったと思います。本当に弱ってしまうと、その一言すら出なくなってしまうので。 坂本さんがん相談支援センターは、患者さん本人だけでなくご家族や身近な方も利用できる場所です。役割は幅広くて、治療のことに限らず仕事や生活、制度、人間関係、気持ちの整理まで、がんの療養に関係するさまざまなことを相談できます。 ”相談”と聞くと、自分が何に困っているのか整理してから行かなければならないもの、と思われがちなのですが、まだ考えがまとまっていなくても、何を聞いたらいいのかわからなくても大丈夫です。お話を伺いながら、今の状況で何が気がかりなのか、どのような情報を確認しておくとよいのかを、一緒に整理していく場所でもあります。
坂本さん
植木さん:診断直後は病気のことで頭がいっぱいなんですよね。治療の説明を受けるだけでも精いっぱいで、生活やお金のことまで考えられない。だから、「何を相談したらいいか分からなくても行っていい場所」があることはすごく大事だと思います。 坂本さん:私は、相談支援センターはもちろん悩みを相談していただく場所でもありますが、「必要な情報を取りこぼしていないか確認する場所」として使っていただきたいと考えています。診断直後は、誰でも混乱します。だからこそ、仕組みとしてある支援を遠慮なく使ってほしいです。

情報に振り回されないために、信頼できる支援や情報につながる

植木さん:病気のことを知った当時、インターネットで自分の病気のことについてあれこれ調べました。でも予後に関する情報に引っ張られてしまい「もう終わりなんだ」と思い込み、自分の人生を閉じる方向に気持ちが傾いてしまったのです。 一方で、同じ病気を経験した方が日々を暮らしている発信に励まされ、支えられました。情報は不安を大きくすることもあれば、希望になることもあると感じています。 坂本さん:本当にそうですね。インターネットは便利ですが、まず大切なのはその構造を知って使うことです。検索結果の上位に出てくるものが、必ずしも正しさや信頼性の高さで並んでいるわけではありません。一度調べた言葉に近い情報ばかりが続けて出てくることもあります。そうすると、どうしても視野が狭くなりやすいんです。 まずは、がん情報サービスや患者さん向けガイドラインのような公的な情報源を確認することが大切です。治療法だけでなく生活の工夫に関する情報でも、宣伝目的ではないか、専門家の目が入っているかを見ることはとても大事です。不安になった情報や判断に迷う情報があれば、主治医や看護師、相談支援センターなど、信頼できる人と一緒に整理していくことが大切だと思います。 植木さん:私にとって大きかったのは、患者団体とのつながりでした。自分一人で情報を判断するのは難しいので、「これはどうなんだろう」と聞ける場所があることが、すごく支えになりました。 最初から深く関わる必要はなく、まずは参加してみる。そのときの自分に合った距離感でいい。大切なのは、一人で抱え込まないための選択肢を持っておくことなんじゃないかなと思います。 坂本さん:情報は、人とのやりとりの中で整理されることがあります。自分が見ている情報を誰かと一緒に確認したり、別の観点をもらったりすることで、偏りから抜け出せることもあります。相談支援センターも情報の整理を助ける場所であり、必要に応じて患者団体などにつなぐ役割も兼ね備えています。 植木さん:「相談」は、“こんなことに今困っている”と言語化できていないといけないと思ってしまいがちですが、そうじゃなくていいんですよね。自分でもうまく言葉にできないことを、一緒に整理してもらえるだけでも、かなり違うと思います。

一人で抱え込まないために、社会や周囲ができること

植木さん:今、健康に自信がある方にも伝えたいのは、「明日のことは誰にも分からない」ということです。過度に不安になる必要はないけれど、「自分には関係ない」と思わずに、信頼できる情報を少しでも自分ごととして持っておくことは大切だと思います。元気なうちから少しでも知っておくことが、何かあったときの不安をやわらげることにつながるのではないでしょうか。 坂本さん:病気を特別なものとして遠ざけすぎないことが大事だと思っています。病気に限らず、介護や子育て、家庭の事情などで、これまで通りに働けなくなることは誰にでも起こり得ます。そういうときに、「事情を話してもいい」「どう補い合うかを一緒に考えられる」社会であってほしいですね。 植木さん:私自身、母が一緒に悩み込みすぎず、日常を続けてくれたことにすごく救われました。もちろん心配してくれていたと思うのですが、それでも毎日の生活を守ってくれていたから、自分がもといた場所に戻りたいと思ったときに自然と戻っていけたんです。 友人も、過度に特別扱いするのではなく、「少し出かけられる?」「会える?」と自然に声をかけてくれました。そういうやさしさの上にある普段通りの関わり方が、私には心地よかったです。 坂本さん:「普段通り」は難しいですが、相手を”病気”の一面だけで見ないことは大切ですよね。何もなかったことにするのではなく、その人の状況を想像しながら、でも過度に特別視しすぎない。そういう関わり方が少しずつ広がっていくと、一人で抱え込まない社会に近づいていくのだと思います。 植木さん:もし今、不安の中にいる方がいたら、「自分だけで何とかしなきゃ」と思い詰めないでほしいです。相談支援センターでも、患者団体でも、身近な人でもいい。少しでも言葉にできる場所があるだけで、気持ちの持ち方が変わるきっかけになることもあると思います。 出典:ジェンマブ「子宮頸がん患者さん300名を対象に『治療に関する不安や悩みについての意識調査』を実施」
お近くのがん相談支援センターをお知りになりたい方はこちら:がん相談支援センターの探し方/国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ
植木朋子さんのストーリーを読む『がんとともに生きる中で見つけた、自分なりの歩み方 子宮頸がんと向き合った植木さんの道のり』はこちら
薬局事務として働く中、24歳で子宮頸がんの診断を受けた植木朋子さん。突然の告知に揺れながらも、治療、再発、周囲との関係の中で葛藤を重ね、少しずつ自分なりの歩み方を見つけてきました。
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がん相談支援センターで、長年がん相談支援の現場に立ち続けてきた坂本はと恵さん。患者さんやご家族の不安や迷いに向き合いながら、医療とくらしをつなぐ役割を担ってきました。
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