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 AYA(Adolescent&Young Adult)世代のがん治療、対策の遅れが問題になっています。来年度から5カ年計画で始まる第3期のがん対策推進基本計画では、これまで対応が遅れていたAYA世代のがん対策についても検討が進んでいます。AYA世代の人ががんになったとき、どのような問題に直面するのでしょうか。まずは治療を受ける病院選びについて取り上げます。

血液がん、希少がんが多い世代

 AYA世代とは、思春期と若年世代のことで、日本では概ね15~29歳を指します。国立がん研究センターの最新がん統計によると2012年に、この世代でがんと診断された人は5066人。14歳未満の小児がん患者は1875人なので、その倍以上になります。欧米では39歳までをAYA世代という場合もあります。

 「AYA世代のがんの特徴は、発生部位が多臓器にまたがり、肉腫などの希少がんも多いことです。小児に多い小児型のがんと大人に多い成人型のがんが混在していたり、神経芽細胞腫など小児型のがんがAYA世代になって発生したり、胃がんや大腸がんなど40代以降に多いがんを発症する人もいるなど、多種多様です」。静岡県立静岡がんセンター(静岡県長泉町)小児科部長の石田裕二さんは、そう話します。

 大阪府立成人病センターがん予防情報センター企画調査課の医師たちが、大阪府で2004~08年にがんと診断されたAYA世代1141人の部位別罹患割合をまとめた結果(図)を見ても、40歳以上の中高年のがんとは分布が異なり、やはりがんが発生する部位は多岐に渡っていることが分かります。

AYA世代(15-29歳)のがんの部位別罹患割合

20歳以上でも小児型の治療が必要な場合も

 「AYA世代の人の中には、小児がん患者と同じような強い治療が必要にもかかわらず適切な治療がなされず、その結果、本来なら助かったはずの命が失われている恐れがあります。AYA世代の患者にどういう治療が適しているのか研究が遅れているのも問題です」。全国がん患者団体連合会理事長で、一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパン理事長の天野慎介さんは、そう指摘します。天野さん自身、27歳だった2000年に悪性リンパ腫と診断され治療を受けたサバイバーです。

 例えば、白血病・悪性リンパ腫の治療では、14歳未満の小児患者には成人向けの治療よりも強力な化学療法が実施されることが多く、AYA世代にも小児患者と同じような強力な化学療法を行うことが推奨されています。「大阪府におけるAYA世代の白血病・リンパ腫診療に実態調査」では、急性リンパ性白血病(ALL)治療について、成人型の治療を受けた人が多かったために、AYA世代のなかでも20~29歳の5年生存率が15~19歳と比べて有意に低かったことが報告されています。大阪府のがん診療連携拠点病院(国指定)とがん診療拠点病院(府指定)60施設で2001~05年に治療を受けた15~29歳の患者211人について分析した結果で、20代の患者は、15~19歳の2.79倍も死亡リスクが高くなっていました。

 この実態調査では、AYA世代の患者のうち、小児型プロトコールが実施されていた人は39%でした。残りの患者は大人の治療を行う血液内科で成人型の化学療法が実施された結果、生存率が下がった可能性があるわけです。小児型の白血病や悪性リンパ腫の治療をある程度たくさん実施している小児科では、20歳以上の患者をみないことも多く、AYA世代の患者がどこで治療を受けたらよいのか迷うケースがあるとみられます。

 大阪府では、こういった事態を解消し、AYA世代の患者に適切な治療を提供するために、府のがん診療連携協議会に小児・AYA部会を設置し、部会長の大阪府立母子保健総合医療センター血液・腫瘍科主任部長の井上雅美さんを中心に、医療連携のあり方について検討を進めています。

AYA世代病棟が誕生した病院も

 一方、静岡がんセンターでは、今年1月に、全国初の「AYA世代病棟」(38床)を設置しました。AYA世代専用ではないので、一部、小児や大人の患者もいるものの、15~29歳の白血病・悪性リンパ腫、肉腫などの患者が主に入院治療を受ける病棟で、無菌室も整備されています。

 AYA世代の治療にも力を入れる小児科部長の石田さんは、「当院では、開院当初から、肉腫の患者さんの治療は小児科と成人向けの整形外科や放射線治療科・陽子線治療科、白血病・悪性リンパ腫に対しては小児科と血液内科が連携するなど、小児科と成人向けの科が連携してAYA世代の患者さんの治療にあたってきました。AYA世代病棟を設置したことで、さらに、さまざまな科の医師と看護師、薬剤師、リハビリ職種など多職種が連携し、AYA世代の患者さんに最適な治療とケアの提供を目指しています」と語ります。

 実際には、AYA世代といっても個々の患者によって病気の性質や病状は異なることから、一般的には小児型の化学療法が推奨される白血病であっても、成人型の比較的副作用の少ない治療で治癒可能なタイプであれば、本人とも相談し、成人型の治療を選択する場合もあるそうです。また、「肉腫の一種である横紋筋肉腫など、世界的にもAYA世代だけ突出して生存率が低いようながんについては、国際的な臨床試験を行ってよりよい治療を開発する必要性を痛感しています」と石田さんは話します。

 では、AYA世代の人ががんになったとき、どうやって病院や診療科を選んだらよいのでしょうか。国のがん対策推進協議会では、「AYA診療拠点」の整備が提案されていますが、まだ時間がかかりそうです。

 「子宮頸がん、乳がん、精巣がん、胃がん、大腸がん、肝がんなど、大人に多い固形がんの場合には、がん診療連携拠点病院で、それぞれのがんを専門にする診療科を受診するとよいのではないでしょうか。白血病・悪性リンパ腫は、小児がんの治療を行っている小児科と血液内科が両方ある病院のほうが、適切な治療をしてもらえる可能性が高いでしょう。肉腫、脳腫瘍などの希少がんは、ある程度、症例数の多い病院を選ぶことをお勧めします。自分が受ける予定の治療が適切なものなのか知りたいときには、その病気の症例数が多い病院でセカンドオピニオンを受けてみるとよいと思います」(石田さん)

 特に、肉腫などの希少がんについては診断が難しい場合もあるため、「がんの疑い」と分かった段階から経験豊富な病院へ行くことが重要です。がん診療連携拠点病院がどこにあるかは、国立がん研究センターの「がん情報サービス・病院を探す」(http://hospdb.ganjoho.jp/kyoten/)で、検索できます。AYA世代の治療を行っているかは分からないものの、同サイトでは、がんの種類別に、診察を行っている病院を知ることもできます。がん専門病院で、小児科と成人向けの診療科があるところは、国立がん研究センター中央病院、同東病院、新潟県立がんセンター新潟病院、静岡がんセンター、九州がんセンターの5病院に限られます。

 頭頸部(鼻、口、喉、顎、耳など)がん、脳腫瘍などで、従来の放射線治療よりも二次がんなど晩期障害が少ない陽子線治療を希望する場合には、陽子線治療施設を選ぶ方法もあります。20歳以上では約300万円かかる治療ですが、20歳未満の人の陽子線治療については、今年4月から、保険が使えるようになりました。

 さらに、希少がんの治療について、どこで治療を受けたらいいか分からない場合には、国立がん研究センター希少がんセンターの電話相談「希少がんホットライン」(http://www.ncc.go.jp/jp/rcc/04_hotline/index.html)を利用する手もあります。

 石田さんは、「AYA世代は、受験、就職、学業や就労の継続、恋愛、結婚、出産など、さまざまなライフイベントに直面し悩みが多い世代であるだけに、適切なサポートを確立することが重要です」と強調します。次回は、そういったAYA世代特有の問題への対処法をまとめる予定です。
(取材・文/医療ライター・福島安紀)

【後編】AYA世代のがん治療(下) ~仕事・学業との両立、恋愛、生殖機能の温存・・・AYA世代ががんになったとき直面する問題への対処法~

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