最新がん治療を グリシャムがCES2018で語る腫瘍治療に集束超音波デバイスも会場展示


  • [公開日]2018.02.06
  • [最終更新日]2018.02.07

世界から約20万人を集め、ラスベガスで1月9日から12日に開催されたCES 2018。日本でもAI、 自動運転車、ロボット、グーグルとアマゾンのスマート・スピーカを巡る攻防などの報道が大々的になされた。ガジェットの新製品が続々と紹介されるCESで、がん治療に関する新製品や講演も行われた。

ザ・ファーム 法律事務所で知られるアメリカの小説家、ジョン・グリシャムが、友人のFocused Ultrasound Foundation(集束超音波財団)の創設者兼会長で元脳外科医、ニール・カッセル博士とラスベガス・コンベンション・センターで講演。集束超音波(Focused Ultrasound)でがんを治す研究開発などを話し、司会役はCESを運営するCTA(全米民生技術協会)のゲリー・シャピロ社長兼CEO(最高経営責任者)が務めた。

超音波は1つでは弱いが、数百を束ね1点に集中させると多大なエネルギーになる。60度以上の熱が発生し、がん細胞を死滅させる。 強度・周波数・持続時間、パルス形状を変え、磁気共鳴画像法(MRI)で発見したがんに集点を当て、 がんを損傷する。 切らないため感染症もなく、 麻酔も不要で周りの細胞組織に損傷が無いから、日帰りできるという。

既にアメリカでは2004 年、日本でも2009 年に子宮筋腫対象の治療装置として集束超音波装置が承認されている。ちなみに集束超音波は日本で開発された技術だ。

「最初前立腺がん、骨転移がんなど3種のがんだけだったが、今では約100種が研究対象になった。だが年に1千万ドルの研究費がかかる。」財団の運営は寄附金で補っている。母親と兄弟ががんにかかっているグリシャムが、8年前から同財団の役員に就任し「自分の名を使って、役立つものを書く」というアイディアを出した。

彼はカッセル博士の協力の元「The Tumor」という 本を1年で書き上げ、世に財団と集束超音波治療法を知らしめている。現在ジェフ・ベゾス氏が協力しアマゾンから無料配布中で、既に100万回ダウンロードされた。https://www.amazon.com/Tumor-Non-Legal-Thriller-John-Grisham-ebook/dp/B01AUYDNI6

「10年前はわずか5社だけが(集束超音波治療装置)開発に参加していたが、現在は52社が製造」の研究開発を行っているとのこと。カッセル博士は「(がん)部分へ不適切なターゲティングがあると、治癒の代わりに身体に損傷が生じる可能性があるが、そのような例は非常にまれ」と述べた。

集束超音波はがんだけでなく、アルツハイマー、パーキンソン病、腎臓結石の破壊など色々な病気に使える。 同財団では既に5つのFDAの承認を得ており、研究の結果は無料で公開している。

CES会場ではフランスのテラクリオン(Theraclion)社が乳棒繊維腺腫や甲状腺結節などの腫瘍を集束超音波で治療するデバイス、エコパルス(Echopulse)を展示。35名から成る同社は財団のパートナーになって開発した。

同社は免疫治療とエコー療法を組み合わせたがん治療でFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を得ている。医療に技術が結着し、画期的な治療法が次々と生まれていく予感を、今年のCESで感じさせられた。

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