乳がん


  • [公開日]2015.03.27
  • [最終更新日]2017.10.12

【疫学】

乳がんは日本人女性で最も多くみられるがんです。2014年に新たに乳がんと診断された患者は86,700人程度と予想されています。30代から増え始め、50歳前後から60歳代前半に多いのが特徴です。20~30歳で発症する「若年性乳がん」の人(全体の6~7%)もいます。乳がん全体の0.5%と非常に少ないものの、男性も乳がんになるケースがあります。

【検査】

乳がんと疑われる症状(しこり、ひきつれなど)が認められた場合、視診・触診・問診などを行い、マンモグラフィ検査や超音波検査を行います。こういった検査でがんが疑われた場合、針生検(がんがあると思われる部位に外部から針を刺して組織を採取する)を行い、採取した組織を顕微鏡で詳しく観察して、診断を確定します。診断が確定したら、CT検査MRI検査などで転移の有無があるかを確認します。

【病期(ステージ)分類】

病期ステージ)とはがんの進み具合を分類したものです。乳がんの場合、『腫瘍の大きさや広がり』、『リンパ節へ転移の広がり』及び『他の臓器に転移しているか』を組み合わせて決定します。

【治療方針】

病期、がんの性質および患者さんの状態(閉経の状況や他の臓器の状態)に応じて治療方針も決定しますが、乳がんの場合は患者さん本人の希望が尊重されます。

【手術】

手術には、「乳房を温存する乳房温存手術」と「乳房を全て取り除く乳房切除術」があります。乳房温存術の対象になるかは腫瘍と乳房の大きさのバランスによって決まります。日本では、腫瘍の大きさ3㎝以下が基準となっています。現在、乳房再建術が保険診療にて受診できるようになりました。手術と同時に実施する1次再建や術後に実施する2次再建があります。

【術前補助化学療法と術後補助化学療法】

腫瘍が3㎝以上と大きいけれども、できれば乳房を温存したいという場合には、手術前に薬物療法を行います。期間は3~6か月です。Her2陽性の方はトラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)という分子標的薬を使用します。これを術前補助化学療法といいます。術前補助化学療法で腫瘍が小さくなる確率は70~90%です。
乳がんの場合、術後薬物治療は再発リスクに基づいて実施するかが決定され、「Her2陽性の方」や「Her2陰性且つホルモン感受性がない方」などが手術後に薬物療法を実施します。これを術後補助化学療法といい、手術では取り除けなかったおそれのあるがん細胞を死滅させ、再発リスクを下げることができます。

【放射線治療】

放射線のDNAを破壊する力を利用する治療方法です。乳房温存手術を受ける方は術後に放射線治療を受ける必要があります。過去の臨床試験より、再発リスクを約3分の1に減らせることがわかっています。センチネルリンパ節(わきの下のリンパ節)に4個以上転移があった場合や腫瘍の大きさが5㎝以上だった場合には薬物治療の他に放射線治療を行うことが妥当とされています。放射線療法は約5週間かけて25回行うことになります。

【再発・転移がんの薬物治療】

乳癌の場合、再発しても他の臓器に転移がなく切除が可能な場合、手術で再発腫瘍を取り除きます。場合によって、放射線療法を行うこともあります。手術や放射線療法では根治不可能と判断された場合は薬物治療が中心となります。薬物治療はホルモン感受性の有無やHer2が陰性か陽性かといった細胞の性質や、患者さんお体の状態、本人の希望によって選択されます。

【参考】

上記記載にあたり、キャンサーネットジャパン「もっと知ってほしい乳がんのこと」を参考にしています。より詳細でわかりやすい記載であるため、より多くの情報をご覧になりたい方は以下にアクセスしてください。

NPO法人キャンサーネットジャパン
> 出版物のご紹介:http://www.cancernet.jp/publish

以下を参考にします。
日本乳癌学会 患者さんのための診療ガイドライン(http://jbcsfpguideline.jp/)

×

会員登録 ログイン