診断されるまでに、どのようなことが行われる?


  • [公開日]2019.08.28
  • [最終更新日]2019.10.11

監修:日本医科大学 勝俣範之 先生

さまざまな検査に加えて、確定診断には病理検査が必要

がんが疑われる場合、診断の手がかりを得るために、問診と診察のほか、血液検査、病理検査、内視鏡検査、超音波・X線・CT・MRI・PETといった画像検査など、さまざまな検査が行われます。がん種や臓器によって実施される検査は異なりますが、複数の検査を組み合わせるのが一般的です。また、その際には、検査に伴う身体的・経済的負担、合併症なども考慮されます。

診断前に行われる検査の目的は、がんの存在を確認することです。複数の検査で、がんが疑われる病変を確認できたら、そこから細胞や組織を採集し、顕微鏡で観察してがんかどうかを確定します。確定できた場合は、さらにがんのタイプ(性質)なども調べます。ただし、開腹しなければ細胞や組織を採取できない臓器もあるため、手術後でないと確定診断がつかないことがあります。

確定診断後に行われる検査の目的は、がんの広がりや深達度を確認することです。がんが発生した場所だけでなく、その周囲のリンパ節や他の臓器への広がり(転移)なども確認し、病期ステージ)を判定します。また、これらの情報をもとに病期に合った治療方針が立てられます。同時に、心臓、肺、肝臓、腎臓など生命を維持するための機能を備えた臓器をはじめ、全身の状態を調べ、手術や薬物療法、放射線治療などに耐えられる状態かどうかを評価するための検査が行われます。

がんと診断されるまで、そして診断された後も、初めて体験するような検査が次々と続きます。検査に対する不安を和らげるためにも自分が受ける検査の目的と方法を知っておくことが大切です。

がんの診断に使われる主な検査

病理検査(細胞診検査、組織学的検査)

がんが疑われる場所から細胞や組織を採取し、その性質を顕微鏡で調べる検査です。がんの確定診断に使われます。病理検査には、ブラシで粘膜をこすったり、皮膚から針を刺して吸引したり、液体中の浮遊物を採取したりして得た細胞を調べる「細胞診検査」と、内視鏡や手術で採取した組織を調べる「組織学的検査」の2種類があります。また、切除した組織を手術中に調べる「術中迅速病理診断」という特殊な方法もあります。

内視鏡検査

先端にレンズとライトが付いた細い管を、食道や気道、消化管、膀胱などに入れて体内の状態を直接、観察して調べる検査です。また、「生検」といって病変の一部をつまみとり、組織を採取してくることもあります。がんの存在を確認するときに主に活用される検査です。

超音波(エコー)検査

皮膚の上、あるいは臓器(子宮、腸など)の内側から超音波を目的の部位に当て、音波のはね返る様子を画像にして体内の状態を観察する検査です。がんの存在を確認するときに主に活用されます。

X線(レントゲン)検査

X線を目的の部位に照射し、通過したものを画像にして体内の状態を観察する検査です。より鮮明な画像にするためにバリウムや造影剤が使われることがあります。がんの存在を確認するときに主に活用されます。

CT(コンピューター断層撮影)検査

体の周りからX線を照射し、体の断面を画像にして体内の状態を観察する検査です。より鮮明な画像にするために造影剤が使われることがあります。確定診断後、がんの広がりなどを調べるときにも活用されます。

MRI(磁気共鳴撮影)検査

体に強い磁力を当て、体の断面像を観察する検査です。さまざまな角度から断面を見られるため、CTでは撮影しにくい部位も確認できます。より鮮明な画像にするために造影剤が使われることがあります。確定診断後、がんの広がりなどを調べるときにも活用されます。

PET(陽電子放出断層撮影、ポジトロンCT)検査

弱い放射性物質を付着した薬剤を投与し、体内における薬剤の分布を撮影することで、薬剤を取り込んだがんの様子を観察する検査です。この検査では、がん細胞の活動状態も確認することができます。薬剤を取り込みにくいがん種があるほか、がん以外の細胞に薬剤が取り込まれることもあるため、CTなど他の検査と組み合わせて行われます。

血液検査(腫瘍マーカー)

がんが発生すると体内のたんぱく質やホルモン、酵素などの物質が増加することがあります。これらの数値を測定するのが「腫瘍マーカー」と呼ばれる血液検査です。50種類以上あり、がん種によって使用されるものが違います。一般的に腫瘍マーカーの数値が高いほど、がんが存在する可能性は高くなりますが、他の病気や生活習慣、加齢などでも数値が高くなったり、がんがあるのに数値が低かったりすることもあります。そのため、病理検査や画像検査など他の検査と組み合わせて実施します。

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